巨大昆虫メガネウラは70cm!古代昆虫の大型化と絶滅の理由とは?

メガネウラの画像 節足動物

子供の頃、大きなトンボを捕ることは僕にとって勲章のようなものでした。

赤トンボを捕るよりも、オニヤンマを捕るほうが偉いみたいな気がしていたんですね。

で、夏休みは補虫網を持って走り回っていたわけですが、70cmもあったという古代トンボのメガネウラにはさすがに手は出せなかったでしょう。

そこまでデカいともう怪獣ですよ。

モンハンやってるんじゃないんですから。

昔、昆虫はとても大きかったのです。

しかし、幸か不幸か絶滅してしまいました。

メガネウラは現在のトンボの先祖になるのですが、相違点も多くあります。

どんな理由で巨大昆虫が現れ、絶滅してしまったのか?

メガネウラを取り上げ、古代昆虫の栄枯盛衰を勉強してみましょう。

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巨大昆虫時代の王者メガネウラ

今から約3億年前。

5億年ほど前に始まったカンブリア紀に、三葉虫やアノマロカリスといった節足動物のプロトタイプが現れ、長い時間をかけて進化し、ついに最高傑作が生まれるのです。

それは昆虫。

人間とは別ベクトルで進化の頂点に君臨する生物です。

メガネウラは史上最大の昆虫だった!

メガネウラは今のトンボとほぼ同じ姿。

初めて化石が見つかったのは1880年のフランス。

その後、ヨーロッパ各地、アメリカなどでも見つかり、巨大昆虫の代表とされています。

翅を広げると70cmくらい。

大物は1mにも達したらしいとされています。

といっても、最小のメガネウラは翼長12cmだそうで、オニヤンマと変わりません。

おそらく1mは最大種の個体で、普通は70~80cmだったんでしょう。

トンビ(鳶)よりちょっとデカい

メガネウラは幼虫のヤゴでも30cmあったといいますから、ドデカい虫であったのは否定できない。

それが肉食で、鳥などいない時代に我が物顔で空を飛び回り、小型の両生類、爬虫類なども襲っていたといいますから、なかなかスリリングな時代ですね。

ただし、現在のトンボは空中でホバリングしたり、翅を閉じて止まることができますが、メガネウラはできませんでした。

実際メガネウラはトンボよりカワゲラに近く、厳密にはトンボ種と分けられています。

驚異的な生物ですが、当時大きな昆虫は主流でもありました。

石灰紀~ペルム紀は大昆虫時代

メガネウラが繁栄したのは石灰紀(約3億5000万~2億9000万年前)の後期からペルム紀(約2億5000万年前まで)。

でも、メガネウラだけが特別大きかったわけではありません。

当時は3mもあるウミサソリや、巨大ヤスデ(アースロプレウラ)がのし歩いていた時代。

こんな感じです↓

Ancient Earth: What Killed the Giant Insects?

ゴキブリも50cmくらいあったとか話まである。

実際はもっと小さかったそうですよ

虫嫌いの人は阿鼻叫喚の時代です。

……いや、虫好きでもこんなナウシカみたいな世界は無理でしょう。

初期の昆虫はみんな大きかったのです。

それはこの時代の酸素濃度と関係があるようですが……。

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酸素濃度が昆虫を大きくした理由?

呼吸の画像

現代の大気には酸素が21%含まれています。

3億年前はこれが30%以上もありました。

小さな違いのようですが、このパーセンテージが1増減するだけでも人間は生きてゆけなくなるといいますから、10%も違えば異世界です。

この違いが、昆虫を巨大化させたというのが定説です。

それには昆虫の特殊な呼吸も関係しています。

昆虫のストレートな呼吸法

昆虫は肺がありません。

代わりに体の表面に「気門」があり、体内の「気管」と繋がっています。

体のあちこちに呼吸するための穴が開いていると思えばいい。

よく見ると肉眼でも見えますよ

酸素は気門から気管に入り、細胞に直接送り込まれます。

つまり、酸素を肺から心臓に送り、血液と一緒に各細胞に届けるという回りくどい方法じゃないんです。

これは体が小さいからできることで、酸素補給が直送で瞬発力、運動能力が効率よく発揮できる反面、外気の変化が直接ダメージになる。

殺虫剤がすぐに効くのも、それが理由。

アリゾナ州立大学の実験で、酸素濃度30%の環境で育てたトンボが通常の15%大きくなりました。

微妙な実験結果ですが、酸素濃度が昆虫を大きくするのは確からしいです。

酸素の濃い大気が巨大化を促したというわけですね。

ただし、別な見方をする意見もあります。

有毒の酸素に抵抗するため?

高濃度の酸素を長時間吸うと中毒を起こします。

酸素は毒でもある。

外気の影響を大きく受ける昆虫には死活問題ですよ。

有毒な酸素の濃度が高い時代、昆虫はその影響を抑えるために大きくならざるを得なかったという説が最近提唱されました。

小さいほど酸素が体に回りやすくなるのですから、デカくなって耐えようとしたというのです。

現在の小さな昆虫にも酸素はきついらしく、一部には無呼吸で数時間あるいは数日過ごすものもいます

実際、メガネウラなどは酸素濃度が下がった時代にも生息していたらしいので、酸素を吸引して大きくなったよりも、防ぐためにというほうが筋は通るかな~と思う。

どちらが真相かはわかっていませんが、酸素30%以上の古代の大気が巨大昆虫を生み出したことは間違いないようですね。

研究が進めば、ジュラシックパークならぬ大昆虫パークができるかもしれない!

見たいような見たくないような……

では、酸素の割合が減ったので昆虫は小さくなったのでしょうか?

どうやらそれだけが理由ではないみたいなんです。

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巨大昆虫はどうして絶滅したの?

火山の画像

陸にも空にも大昆虫が溢れていた石灰紀~ペルム紀ですが、次の三畳紀への変わり目に大破局が起こります。

「P-T境界の大絶滅」と呼ばれ、全生物種の9割が滅んだという地球史上最大のカタストロフィです。

火山が起こしたP-T境界の大絶滅

2億5000年前、世界中で大規模な火山活動が起こります。

火山性ガスがまき散らされ、温暖化が加速。

さらに増加したメタンが酸素と化学反応を起こし、酸素濃度もガクッと低下します。

大気の影響を受けやすい節足動物には致命的な変化です。

ペルム紀まではどうにか生き残っていたメガネウラ、ウミサソリ、アースロプレウラなども、この大絶滅は乗り切れませんでした。

ここで大昆虫時代もほぼ終わります。

“ほぼ”というのは、大きめの昆虫類はその後もいた形跡があるからです。

だって、あのしぶとい昆虫ですよ!

現在まで昆虫が生き残っているのだから、そのご先祖様が死に絶えたわけがない。

恐竜時代に大型昆虫が消えた?

昆虫は大きいまま数億年はやっていました。

しかし、酸素濃度は低下しているので、そこまで大きくなる必要もなくなっていたでしょう。

やがて恐竜が誕生し、そこから鳥類も派生します。

巨体で陸と空を支配していたような節足動物も、この頃には捕食される立場になっていた。

大きいほど目立って、淘汰されてゆき、小型昆虫が生き残ったのです。

ただ、現在も大型昆虫の名残りは見られます。

20~30cmの昆虫、節足動物は現存しています。

日本の深海に暮らす、脚を広げると3m以上になるタカアシガニは最大の節足動物。

翅を広げると30cm近い蝶や蛾

手の平サイズのバッタや甲虫

長さが50cm以上のナナフシなど、立派な巨大昆虫ですよ。

彼らの存在から僕らは古代の巨大昆虫時代をちょっとだけ感じることができるでしょう。

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まとめ

巨大生物はロマンの塊です。

特大の昆虫、爬虫類など怪獣然とした生物が地球にもいたと思うと、数億年の縦軸に自分も組み込まれ、空間も共有しているみたいで、アドベンチャーな気分になれるんですよね~。

メガネウラは絶滅し、酸素濃度の変化で昆虫は小さくコソコソ生きる生き物になった。

しかし考えてみれば、昆虫がもっと大きいままだったら、人間は暮らしにくかったとも思う。

昆虫採集がけっこうなバトルになっちゃいますよ。

まあ、ロマンで空想しているほうが平和かもしれないですね。

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