コモドドラゴンは凶暴な大トカゲです。
その風貌は伝説のドラゴンのコモド、いや子供といっても通じます。
現在にあって、もっとも恐竜の雰囲気がプンプンする生物でしょう。
堂々とした巨躯で、人間にも躊躇なく襲い掛かる性格はまさに恐竜のイメージ。
保護されているエリアはリアル・ジュラシックパークの様相です。
とはいえ、恐竜とはかなり違っていたりする。
さらに、陸生動物では最強といわれるコモドドラゴンは、他の猛獣よりも本当に強いのでしょうか?
コモドドラゴンの強さや生態、そして驚きの単為生殖についても解説します。
コモドドラゴンの強さと生態
コモドドラゴンはコモドオオトカゲとも呼ばれます。
オオトカゲのほうが日本では馴染みかもしれませんが、ドラゴンのがカッコいいのでここではコモドドラゴンで書きます。
攻守にそつがない凶暴な捕食者
コモドドラゴンは頭から尾の先まで2.5~3m。
まあ、半分は長い尻尾が占めるんですが、体重も70kgから100kg近くになり、ドラゴンの名に恥じません。
その戦闘力は陸生動物でも屈指でしょう。
全身は鱗に覆われた分厚い皮膚。
60本もあるのこぎり状の牙。
獲物の腹を簡単に引き裂く鋭い爪。
武器にもなるムチのような尾。
どこまでも獲物を追い続ける執念深さ。
「現代の恐竜」というキャッチコピーは伊達じゃありません。
恐竜とは違うが他の猛獣にも勝てる?
ただ、恐竜は胴体と垂直になった肢がある爬虫類のことで、肢が横に張り出している現在の爬虫類を恐竜の子孫ということはできません。
鳥のほうが恐竜に近い
あくまで「恐竜のイメージ」ってことですね。
凶暴性というなら、コモドドラゴンは恐竜にも劣りません。
サメ、ワニといった殿堂入りのプレデターには及ばずとも、トラやライオンなどの大型ネコ科猛獣より強いと思います。
機動性に勝る哺乳類ですが、鱗の装甲と、牙・爪・尾の多彩な攻撃を破るのは難しいでしょう。
群れで狩りをするハイエナ、オオカミには分が悪いかもしれませんが、タイマン勝負なら負けそうにない。
もちろん生息地が違うので脳内マッチなんですけど、生態を知れば「勝ちそう」な気がする。
奇襲!毒液!コモドドラゴンの狩りとは?
コモドドラゴンはとにかく食い意地が張っています。
大物狙いの肉食獣で、獲物はウシ、シカ、イノシシなど。
腐肉も好物で、死骸、死にそうな動物が放つ「死の臭い」を10km先からでも嗅ぎつけます。
他に、鳥、カメ、サル、時には自分より小さい仲間も共食いし、チャンスがあれば人間も襲う。
わかっている限り20人以上が襲われ、数人はなくなっています。
周囲に人が少なく、事故は多いほうではありません
コモドドラゴンは茂みに伏せて待ち伏せるスタイル。
突然飛び出して喉に食いつき即死させるか、足を咬んで動きを止めます。
そこから逃れても、唾液には無数のバクテリアが含まれ、痛みはずっと続く。
時速20kmでずっと追いかけてくるし、潜水や木登りも少しできる。
爬虫類らしい陰湿なストーカーですね。
ところが最近、コモドドラゴンの唾液から強力な抗菌ペプチドが発見されました。
それを素に新薬の研究が進んでいるらしいです。
毒も使いようで薬になるってことですか。
とにかくコモドドラゴンは獰猛な捕食者で、他の猛獣に引けは取らない。
それには進化上の理由もあるようです。
未開の島のドラゴン?進化と発見
「コモド」は生息地の地名で、ドラゴンはインドネシアの有名観光地バリ島から西に行ったコモド島、リンチゃ島、フローレス島などで見られます。
コモドドラゴンを見に行くツアーもありますよ
この辺には昔、とんでもない大トカゲがいて、コモドドラゴンはその系譜を引き継いでいるんですね。
7mの巨大トカゲの近種だ!
1万年ほど前まで、オーストラリア周辺には「メガラニア」という体長5~7m、体重1tの大トカゲがいました。
コモドドラゴンを拡大したような姿だったと考えられています。
メガラニアなどの大トカゲ類がインドネシアまで広がり、その後絶滅した中で、小島にいたコモドドラゴンだけが生き残ったわけです。
島にはかつて小型のゾウが生息していて、コモドドラゴンはゾウを捕食するために強靭な体と武器を手に入れたと推測されます。
なんにしても、メガラニアのような怪獣の血を受け継ぐ動物がまだ生き残っているのは奇跡でしょう。
いかつい風貌に似合わず、人に飼われているとけっこう馴れるんだそうで、一緒に散歩できたりもします。
怪獣と散歩するなんて、戦車で街を走るような無敵感ですかね。
名作映画のヒント?天皇陛下にも献上された!
コモドドラゴンの存在は、19世紀の頃から噂レベルで知られていました。
「ドラゴンの棲む島がある。ドラゴンは火を吐き、水牛を倒し、人を食う」みたいな。
なんてファンタジーな噂なんでしょう!
1910年にコモド島に飛行機で不時着したパイロットの証言でドラゴンの実在が確認。
わりと最近まで未知動物だったんですね。
1926年、コモドドラゴンの存在に刺激されコモド探検隊が向かいます。
この探検隊をモチーフに作られたのが映画「キングコング」だそうです。
調査が進み、個体数が少ないということで、当時インドネシアを統治していたオランダが保護。
後に日本の統治時代に2匹のコモドドラゴンが昭和天皇に献上されたといいます。
飼育は動物園に任されたそうです
あのドラゴンや龍を彷彿とさせる姿は、陛下に献上されるほど別格の動物という感じだったんでしょうか。
別格といえば、コモドドラゴンにはもうひとつ変わった特性があります。
なんとメスだけで卵が産めるんです!
メスだけでも繁殖する単為生殖とは?
メスだけで繁殖することを「単為生殖」といいます。
雌雄同体と違い、本来♂と♀で繁殖する動物が、♀だけの環境になった場合のみ発動させる切り札です。
単為生殖をする爬虫類、鳥類はいくつか知られていましたが、コモドドラゴンのような大型の脊椎動物では珍しいことです。
2005年にロンドンの動物園にいて、2年以上もオスドラゴンと接触していなかったメスドラゴンが卵を産んで初めてわかりました。
単為生殖の仕組み
その仕組みはそんなに難しくありません。
トカゲの染色体はオスが「ZZ」、メスが「ZW」。
メスが2つの染色体を持っているので、それぞれを倍増させ、メスだけで染色体「ZZ」と「WW」のトカゲが作れます。
しかし、「WW」はオスでもメスでもない。
というわけで死んでしまいます。
「ZZ」つまりオスだけ産むことができる。
あとはそのメスと、成長したオスの母子で普通に繁殖するわけです。
人間のメス染色体は「XX」で、親子での交配も認められていませんから無理。
できたとしてもX染色体しかない女性は、「XX」のメス――同性しか産めませんから、子孫は残せないことになる。
「トカゲなんて下等な生物だからできることでしょ」と言っちゃえばそれまでですが、種の存続という点に於いてはコモドドラゴンのほうが人間よりずっと強者かもしれません。
コモドドラゴンはいろいろとスゴイ生物なんですよ。
まとめ
一度見たら、人を虜にしてしまうコモドドラゴン。
太古の恐竜、伝説のドラゴンが現代に現れたような動物で、見物のツアーが人気なのも納得です。
日本ではコモドドラゴンが見られる施設がないので、是非現地で見てもらいたいですね。
悠然と這いまわる姿は、最強のオーラを感じられるでしょう。
彼らはパワフルな肉体と、単為生殖などによって、したたかに生き延びてきた生物です。
そのワイルドな生き様で、今後も生き残ってほしいですね。
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