ペンギンはなぜ飛べなくなった?空を捨て海に賭けた理由とは?

ペンギンの画像 陸生動物

ペンギンはおかしな動物です。

鳥なのに飛べない。

その代わり、泳ぎは得意。

潜水できる鳥は多いですが、ペンギンほど水中で動けるものはいません。

ペンギンって鳥より魚っぽいんですよ。

でも、これは変ですよね。

鳥に水属性はあまり必要ありません。

海鳥のように少し潜って、魚が獲れればじゅうぶん。

後は自由に空を飛び、いい餌場を探せばいいのに。

それなのにペンギンは水中に特化しました。

鳥であることを捨て、海に潜るという本末転倒な進化をした。

あえて進化を逆行したのです。

それは退化じゃないのか。

ペンギンにとって、魚のようになることは、どれほど魅力だったんでしょう?

鳥を捨てるほどの価値があったの?

おかしな鳥ペンギンの「どうしてこうなった?」を解説します。

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大胆な進化!泳ぐ鳥ペンギン

ペンギンは南極圏にいます。

北極圏にはおらず、南半球が生息地です。

最北のペンギンはガラパゴス諸島のガラパゴスペンギン。

赤道直下で、けっこう暑い。

このことからも、ペンギンは温暖にもある程度適応できることがわかります。

日本の動物園にいるペンギンも割と元気ですもんね。

しかし、ペンギンは北へは行きませんでした。

飛べないからです。

飛ばないことを選んだ理由

飛べない鳥は他にもいます。

ダチョウやキウイなど。

ダチョウは巨体と走力があるから飛ばなくてもいい。

キウイは天敵もなく、飛ばなくなった。

ペンギンは海仕様になったからです。

ペンギンのご先祖が現れたのは恐竜時代。

魚を捕食する海鳥で、当時は飛ぶこともできました。

そのうち恐竜が滅んだ。

海の捕食者が消え、サメなどしかいなくなったのです。

ライバルが減った海。

「サメは怖いが、今なら海を独占できそうだ」

まだ、アザラシやイルカが登場する前の頃。

そんなふうに考えた海鳥が、現在のニュージーランド辺りにいたようです。

それがペンギンの祖先。

なかなか慧眼だと思います。

しかし、鳥は基本的に空仕様。

海鳥だから多少は水中向きだったペンギンの祖先も、大幅なモデルチェンジが必要になる。

もう、空への未練は残せなかったのです。

泳ぐために何でもします!

それは「骨」からの改造でした。

飛ぶために鳥の骨は空洞が多く、軽量化されています。

でもペンギンは沈みたい。

骨密度を増やすしかありません。

さらに皮下脂肪も溜める。

そうしてペンギンは体重が増加。

骨の強化によって、翼も硬くなりました。

しなやかに羽ばたくことはできない代わりに、ヒレ状になった。

泳ぐペンギンにはこっちのほうが便利です。

ペンギンの翼は「フリッパー」と呼ばれます

そして邪魔な足を収納しました。

ペンギンは常にしゃがんでいるのです。

しゃがみ歩きだからヨチヨチ歩きになる。

これは知っている人も多いかもしれませんね。

寒冷地では突出部分を減らすほうが体温が逃げません。

また、長い足は泳ぐのに邪魔。

それで引っ込めた。

大型のペンギンが足を伸ばせば、人の背丈と変わらなくなります。

足の長い、目線が同じ高さのペンギンって……すごい怖いんですが。

他にも、
「水中での心拍数を抑える」
「酸素を蓄えやすい血液」
「水圧に耐える体の構造」

など、体質改善も行っています。

500m以上潜った記録もあるそうで、ダイバーを極めていますね。

普段は2分くらい20mほどの
深さの水中行動。
5分も潜ってると息切れするらしい

あのペンギンの独特のフォルムは、鳥を捨てた結果なのです。

あそこまで改造すると、もう飛行は不可能。

泳ぎか徒歩で移動するしかなく、海流の関係で北へ行けなくなった。

でも、昔はペンギンも飛んでいました。

ペンギンの成り立ちには、まだまだ変則が多いのです。

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ペンギンまでの道のり

初期のペンギンは「鵜」や「カイツブリ」のような鳥だったと考えられています。

まだ首は長かったのでしょう。

そして、大きかったようです。

恐竜がいましたからね。

デカさで負けられない。

恐竜絶滅後も巨大生物は残っていたので、大きいほうが安全です。

そのうち、大きいだけでは海でやっていけなくなります。

絶滅種ジャイアントペンギン

4000万年前のペンギンは170㎝ほどもあったようです。

「アンスロポルニス」という大ペンギンで、首はやや長め、飛ぶことはできませんでした。

ジャイアントペンギンはしばらく繫栄します。

種類も増え、後期には首の短い、現ペンギンに近くなります。

150㎝超のペンギンがたくさんいたのです。

現存の最大種は130㎝のコウテイペンギン

しかし、この頃にはライバルも増えます。

今のイルカやアザラシとなる哺乳類が海に進出してきた。

鳥で唯一の海中特攻だったペンギンも、主導権を失っていくことに。

そうなると、飛ぶことを捨てたペンギンは、空に逃げることもできず、ライバルに食われる存在になる。

ここに来て、大きな代償を払うことになったんです。

今さら後戻りはできない。

ペンギンはもう海で生きるしかないのです。

動きの鈍いジャイアントペンギンが淘汰され、小回りが利くサイズのが残った。

それが現存のペンギンなのでしょう。

「ペンギン」の名を横取り?

ペンギンはネーミングも変則です。

元々「ペンギン」と呼ばれていたのは「オオウミガラス」という鳥。

北大西洋から北極圏にいて、色は黒く、額の一部と腹部が白い。

体長は80㎝ほどで、太い体型。

飛ぶことはできず、潜水して餌を採る。

動きは遅く、ヨチヨチ歩き。

Great auk (Pinguinus impennis)

このオオウミガラスを「ペンギン」と呼んでいた。

ヨーロッパではよく知られていたんです。

語源は「頭が白い」意味のケルト語とか、
「太っちょ」を意味するラテン語とか、
諸説あります

やがて人類は南極圏の探索に出ます。

そこにはオオウミガラスとそっくりな鳥がいました。

上に挙げた特徴そのまんまな鳥。

もちろん、今のペンギンです。

「南極にもオオウミガラス(ペンギン)がいるのか」

「じゃあ南極ペンギンだな」となった。

ところが、南極ペンギンはオオウミガラスとまったく違う鳥だったんです。

本家のオオウミガラスはその後絶滅。

南極の白黒太っちょの鳥が「ペンギン」となったわけ。

「ペンギン」という耳に馴染む可愛らしい愛称を、まんまと横取りしたこの鳥は、水中仕様のためにユニークになった体型も相まって、動物園の人気者に大出世。

いや、歌舞伎役者の襲名みたいなものなのかな。

初代より二代目が売れた……みたいな。

けっこうアホな進化をしたわりに、なんだかんだで上手くいっちゃってる。

結果オーライの動物と言えるでしょう。

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まとめ

鳥を捨てたペンギン。

それだけ母なる海は魅力的だったようです。

世界最大の餌場ですからね。

しかし、そのためには大改革も必要でした。

数千万年かけての空仕様から海仕様への変化。

重くなり、翼もヒレにした。

ここまでは良かったのに、海棲哺乳類が現れて、ヒエラルキーが下になった。

やっちゃった感は否めません。

まあ、飛ばないおかげで鳥特有の筋張った感じがなく、キュートになって人間を味方につけたと思えば、空を捨てた元は取れそうなんですが。

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