子どもの時分、時々「マイマイカブリ」を見ました。
オサムシ科の、ヒョウタンのような形をした、黒い昆虫です。
これがなんとも「ツマラない虫」。
僕も「な~んだ」と気にも留めませんでした。
大人になり、ふと思い出してググってみたら、なんと今は人気があるのだそう。
小学校の地味なクラスメイトが、知らないうちにテレビのスターになっていたみたいな気分。
初めて知ったこともあり、いろいろ勉強になりました。
なぜ今さらマイマイカブリなのか。
生態、見つけ方、飼育法など、自分の経験を交えてまとめてみました。
日本の固有種マイマイカブリの生態
マイマイカブリは海外にファンが多いそうです。
なぜなら「日本にしかいないから」。
まず、この事実に驚きました。
「アイツ、そんなレアな虫だったの!?」
英語でも「Japanese ground beetle」。
日本から持ち込まれたものが台湾にもいるのですが、れっきとした日本の固有種。
そんじょそこらにいる虫だと思っていたのに。
大きさと多彩な色が魅力!
マイマイカブリはオサムシの仲間。
オサムシは「飛ばずに、地面を張っている肉食の甲虫」。
「ゴミムシ」と蔑称されたりする。
オサムシ好きだった手塚治虫氏が、ペンネームにしたことは有名です。
世界に2万5千種もいる一大ファミリーですが、妙な進化を遂げ、日本だけにしかいないオサムシが、マイマイカブリグループなわけです。
特徴は細く長い胸部。
腹部は尖り気味の楕円形で大きく、全体のフォルムは「瓶」のような形。
顎が大きく、僕は「カミキリムシの近種」と思っていました。
大きさは3~7cm。
オサムシ類(多くは3cm以下)では大きなほう。
これも海外の人には珍しいようです。
しかし、なんといっても人気の秘密は多様性。
飛ぶことができないため、各生息地が混ざらずに鎖国状態。
場所ごとで独自に進化せざるを得なかった。
その結果、種類は10種類ほどなのに、それぞれ特徴が違います。
さらに同種でも形状や色合いが微妙に変わっている。
僕は北海道の人間なので、見るのはエゾマイマイカブリ(北海道だけ)だと思うんだけど、黒を基調に、緑がかったのもいたし、紫っぽいのや藍色っぽいのもいて、同種差異がずいぶんあったと記憶しています。
個々の違いが、コレクション欲をくすぐるのでしょう。
カタツムリの天敵
マイマイカブリは生態もわかりやすい。
マイマイ(カタツムリ)を食う。
僕は「マイマイにかぶりつく」からマイマイカブリと思っていたのですが、殻に首を突っ込んで食べる姿が「頭にマイマイをかぶっている」ように見えるためらしい。
細い頭と胸は、殻に突っ込みやすい仕様。
夜行性ですが、日中に徘徊しているのもよく見ます。
そして、カタツムリを襲うのです。
逃げ場のない殻に首を突っ込んでくるなんて、映画『シャイニング』でドアの隙間から顔を出すジャック・ニコルソンみたいで、カタツムリは恐怖でしょう。
マイマイ食は幼虫も同様。
マイマイカブリの卵は1cmもある縦長卵で、クマバチの卵と並び、昆虫界最大。
初夏~夏に産卵します。
そこから幼虫が生まれ、カタツムリを食べることで、2齢まで成長し、成虫になるのです。
こいつです。
僕は幼虫もよく見ました。
でも、マイマイカブリとは思っていなかった。
「こいつがマイマイカブリの幼虫だったのか!」と新発見。
ハサミムシの一種だとばかり……
成虫は果実や、樹液も食べますが、基本は肉食。
もちろん、好物はカタツムリです。
これらの生態を踏まえて、鑑賞や飼育のために、捕獲してみましょう。
マイマイカブリの採取と飼育
考えてみると、僕はマイマイカブリを特に探したことがありません。
クワガタやセミやカマキリのように、わざわざ採取に行く虫ではないからです。
採ってもあまり自慢にはならないし。
春から秋にかけて、たまに見るわりに、虫かごの一員にしようと思ったことがない。
でも、食性から
「カタツムリのいる場所」「草木のある場所」
が確立良さそう。
採取に行くなら山でしょう。
マイマイカブリはどこにいる?
カタツムリが好む、湿気のある場所は狙い目です。
よく探すべきは「地面」。
這っていることが多いですから。
いれば、大きいのですぐ目につくはずです。
あとは樹液の出ている木。
マイマイカブリが吸いに来ているかもしれません。
蜜などを塗って、引き寄せるのも手ですね。
これは僕の頼りない記憶なのですが、ゴミ捨て場の近くでよく見た憶えがある。
食料になるものが多いからと思います。
屋外のゴミ捨て場など、覗いてみてはどうでしょう?
捕獲には注意も
マイマイカブリは大きく、飛ばず、動きもそれほど速くないので、捕まえるのは簡単です。
ただ、危険を感じると、お尻から液体を噴出します。
これも僕は知りませんでした。
浴びせられた記憶がないのです。
まあ、ヘッピリムシ(ミイデラゴミムシ)などオサムシの仲間に多く見られる生態ですから、マイマイカブリにそんな武器があっても不思議はありません。
この「屁」は前にも後ろにも噴射可能。
付着すると皮膚炎を起こし、目などに入ると危険。
手袋をするなど、対策しておくと安心です。
採取できたら、次は飼育を考えてみましょう。
マイマイカブリを飼育する
飛べないマイマイカブリは、鑑賞・観察がしやすい昆虫です。
自由研究などにはうってつけなのですが、問題は餌。
カタツムリの入手をどうするか。
成虫は昆虫ゼリーやワームでも食べます。
しかし、カタツムリを食べないと長生きしませんし、繁殖もできない。
幼虫は成虫になれません。
マイマイカブリはカタツムリなしの人生は送れないのです。
夏場はいいでしょう。
幼虫なら2cmくらいのカタツムリを、週に2~3匹。
成虫もそのくらいで良く、3cmもあるものなら週イチでも十分です。
大きいカタツムリには返り討ちにされることもあるので、サイズに合った餌をあげてください。
似ていても、ナメクジは食べないそうです
でも、冬はカタツムリを見つけるのも大変。
動物園では「ラムズホーン」で代用しているらしい。
水槽のコケ取りに使われる巻貝です。
ラムズホーンなら増やすのも簡単。
というより、水槽に入れておくだけで、勝手に増えて困るくらい。
できればカタツムリ、困ったらラムズホーンを試すという感じでしょうか。
飼育ケースでクワガタ飼うような環境でいいです。
底土と、隠れ場所になる朽木、落葉、石が適度にあればOK。
乾燥しないよう、たまに霧吹きしてあげる。
飼育が面倒なら、数日観察して、元の自然に戻してあげればいいと思います。
マイマイカブリは個体差の大きい昆虫。
たくさん見つけて、色の違いを楽しむのも面白い。
運が良ければ、すごいレア物が見つかるかも。
まとめ
地味なゴミムシと思っていたマイマイカブリが、実は魅力たっぷりでした。
子供の頃は見逃していたんですね。
飼育はやはりカタツムリを準備したい。
それがクリアできれば、難しくないでしょう。
街中で見つけるのは、苦労するかもしれません。
僕もマイマイカブリにはしばらく遭っていない。
宅地化が進み、「そんじょそこら」にいた虫は、みんな駆逐されてしまった。
マイマイカブリは、僕にとって「昔を思い出させるトリガー」みたいな昆虫なのです。
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