クマムシ最強説の理由‐宇宙でも死なない防衛機能【乾眠】とは?

節足動物

1mmもない微生物なのに、知名度は高いクマムシ

歌一曲で見なくなった同名のお笑いコンビとは違い、
しぶとい生命力で「最強生物」ともいわれます。

どんな環境下でも生きてゆける!

生息地は極限地帯から、あなたの家の近くにもいる。

いや、宇宙でも死なない。

タフじゃなけりゃ生きてゆけません。

その強さ、防御の硬さには理由があります。

クマムシは他者の能力を自分のものにしているかも。

「どうやって殺すんだ」という最強のラスボスみたいでしょ。

クマムシの凄さに驚いてください。

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クマムシはどこにでもいる!

クマムシはよく知られた微生物です。

イモムシみたいな胴体に、4対8本の足があります。

その姿はかなりエグい。

でも、目にすることはほとんどありません。

クマムシは1,000種類ほどいるのですが、大きくても2mm以下

小さいのは100分の5mm程度です。

目に見える大きさだったら、こんなに人気はなかったでしょう。

どアップするとこんなですから。

Facts: The Water Bear (Tardigrades)

クマムシは『緩歩動物』に分類されています。

といっても、緩歩動物はクマムシだけなので、
緩歩動物=クマムシでOK。

のそのそ歩くのがクマに似てるからクマムシ。

ここでは節足動物にカテゴライズしていますが、
緩歩動物は厳密には節足動物っぽい別物の扱いです。

汎節足動物といいます

現在の昆虫などと、カンブリア紀の変な生物の
中間にいるようなものと思えばいいでしょう。

そんな古典生物が、意外と身近にいます。

クマムシの生息地

タフなクマムシはどこにでも住める。

陸、海は当たり前。

北極南極、深海、温泉でも生きられます。

町にいないはずがありません。

近所で見つけたいなら、コケを探すのがいいようです。

見るには顕微鏡が要りますが

クマムシは湿っぽい場所が大好き。

コケは理想的な住処なのです。

でも、コケだっていつも湿っぽいわけじゃない。

乾くと、クマムシは必殺技『乾眠』を発動します。

「渇きのシエスタ」とでも命名しときましょう。

『乾眠』すれば120年生きる?

乾眠は『クリプトビシオス』ともいいます。

要するに、水分がなくなると
体を樽のように縮め、仮死状態になるのです。

ミイラ化というほうが近いかもしれません。

そうなるとクマムシは石のようになる。

そのまま水が与えられるまで待ち続けるんです。

これはエビの卵などでも見られるものですね。

水をかければ復活する。

一部のクマムシが持つ能力なんです。

その乾眠最長記録は120年!

1世紀以上にもなるとシエスタじゃないですね。

この話が有名で、「クマムシは最強」と一説にはいわれる。

ただし、これは伝説の武勇伝みたいなもので、
普通は10年くらいがいいところなようです。

寿命も長いと思われがちですが、1ヶ月ほど。

長くても1年は生きません。

もちろん無敵でもないので、指で潰せば殺せます。

最強というのは言い過ぎ。

でも、忍耐力はスゴイ!

さらにクマムシ武勇伝を知れば、その驚異の生命力がわかるでしょう。

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クマムシ列伝!高気圧から宇宙まで

クマムシは「生きる」ことより
「死なない」ことを重視しているような生物。

どんな過酷な環境にも耐える。

それを可能にしているのが乾眠です。

この状態になれば、クマムシは無敵の防御になる。

そうなると気になるのは「どこまで耐えられる」じゃないでしょうか?

クマムシは「ドS」な実験対象にされてきました。

高温、低温に強い

暑さ、寒さは大事な問題。

人間だって気温に振り回されてばかりですもんね。

40℃の酷暑にもなれば動くのも嫌になる。

乾眠のクマムシは151℃まで耐えるのだそうです。

温泉にも生息できるわけです。

低温にいたっては-273℃まで大丈夫。

これは絶対零度で、これ以上低い温度はないという限界ですよ。

北極、南極なんて屁でもありません。

乾燥に強い

乾眠は体内の水分を減らす仕組みです。

通常クマムシの体内の水分は85%

人間も70%が水分

それを3%まで落とし、乾燥に負けません。

10年近くはそうやって生きていられるそうです。

高気圧、真空でも生きる

深海にもいるクマムシ。

多少の気圧や水圧もへっちゃらです。

75,000気圧まで耐えられる。

数字が凄すぎて想像もできない極限環境です。

逆に真空の場所も問題ない。

クマムシは宇宙に送られる常連の生き物でもあるんです。

宇宙空間でも死なない!

紫外線、エックス線、ガンマ線は人には有害。

クマムシは放射能耐性もある。

「それなら宇宙に連れて行こう」

ドSな人間の考えそうなことです。

宇宙空間にたっぷり10日間も晒される実験がされました。

結果は……もちろん大丈夫。

イスラエルの民間企業は、
乾眠状態のクマムシを月に送り込みました。

数十年後、月面に行ったら水かけて復活させようというのです。

探査機は着陸の失敗で破損したのですが、
クマムシは生きているだろうといわれます。

地球の生物を月に落としたことは、
汚染になると叩かれてもいるんですが。

どうです?クマムシ凄いでしょ。

しかし、どうやってこれほどの耐久力を持ったのか。

その理由はずっと不明でした。

最近になり、クマムシが他の生物の能力を
取り入れた可能性が示唆されています。

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他の生物の耐性遺伝子を集めた?

遺伝子の画像

他者の能力を奪う。

誰もが憧れるスキルではないでしょうか?

頭がいい、運動神経がいい、顔がいい、性格がいい……。

そんな誰かの利点を、自分のものにできたら。

いいとこ取りの究極の存在になれるでしょう。

遺伝子を受け渡す水平伝播

外来遺伝子を取り込むことを『水平伝播』といいます。

普通、遺伝子は先祖から子孫へ縦に受け継がれるもの。

ところが、遺伝子は他種の生物の能力を、
横から受け継ぐことができるのです。

奪うというのは語弊があるかもしれません。

菌などが感染し、その菌の遺伝子の一部を
取り込んでしまうようなことです。

そうやって新たな能力を獲得する。

実際、人間のDNAにも外来由来のものが混じっています。

珍しいことではありません。

でも、水平伝播は全遺伝子の2%以下がほとんど。

それがクマムシは17.5%もあるのです。

多種の耐性遺伝子を横取りし、
驚異的な防御力を身につけたのではないか。

これは仮説です。

実験の仕方に問題があり、
論文も結果ありきだと、疑問も投げかけられている。

クマムシは小さく、研究はあまり進んでいないのです。

クマムシが何を食べているのかさえ、
未だによくわかっていないほどです。

それでもクマムシの超耐性は事実。

研究が進めば、
人間のコールドスリープや、寿命を延ばす方法など、
SFを実現させられるかもしれません。

クマムシが人類の未来に貢献する日が、
そのうち来るに違いありません。

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まとめ

クマムシは名前だけは有名。

最強生物というのもよく聞く話です。

でも本当はちっぽけで、弱い生物。

環境変化に負けるほどの弱者だったから、
「耐えがたきに耐える」進化を
せざるを得なかったと思うんです。

それもまた「生物的な強さ」といえます。

小さな巨人ってやつです。

クマムシから見れば、「人間は貧弱だよな」なんでしょうね。

それにしても絶対零度とか、真空とか、
ほとんどあり得ない状態まで耐えるって、心配性すぎじゃない?

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