夏、歩いたり、自転車に乗っているとき。
「蚊柱」に突っ込んだことありませんか?
突然、視界に小さな羽虫がウヨウヨとちらつき、「うわぁぁー」となる。
そこから逃げても、なぜか虫が追ってくる。
「刺されてしまうー」と逃げ回った経験。
注意力散漫な僕は、よく蚊柱やクモの巣に顔を突っ込んだものです。
この蚊柱は、蚊ではなくユスリカの群れ。
「ユスリカっていう蚊でしょ」と思うところ。
いいえ。ユスリカは蚊のようで、蚊ではありません。
ユスリカとはなんなのか?
なぜ蚊柱はまとわりつくのか?
今回はそんなお話をします。
ユスリカと蚊の違い
ユスリカは蚊に似た昆虫。
世界に1万5000種、日本にも2000種いるという、昆虫界でも屈指の巨大ファミリーです。
大きさは0.5~1cm。
見た目は蚊にそっくり。
だから、蚊だと思っている人も多い。
名前も「揺蚊」ですしね。
でも、蚊ほど害はないんです。
蚊柱はメスへのアピール
ユスリカと蚊の違いは、まずユスリカは血を吸わないことです。
それどころか、ユスリカは口すらありません。
ただ交尾、出産をして、数日で寿命を終えます。
そこでできるのが、例の蚊柱。
オスが集団を作り、メスにわかりやすくしているのです。
寿命が短いから、焦って目立ちたがる。
婚期を逃して、アピールが過ぎる人間みたいで悲しい……。
蚊柱を見つけたメスが蚊柱に飛び込んで、逆ハーレムに。
カップルができたら、二人(二匹)だけで群れから離れてランデブー。
そして、水辺に産卵して一生を終えるのです。
出産するために人様の血を吸う蚊に比べ、なんという奥ゆかしさでしょう。
蚊柱を積極的に作る蚊は知られていません。
たまたま集まることはあるかもしれませんが、
蚊柱はほぼユスリカで間違いないと思います。
目障りな蚊柱も、ユスリカの人生を懸けた婚活だったんですね。
蚊との微妙な違い
違いは他にもある。
- ユスリカは羽に鱗粉がないので、蚊のように潰しても粉のようなものが手につかない。
- ユスリカは年中発生する。(蚊は4~11月頃)
- ユスリカは光に引き寄せられやすく、蚊はそうでもない。
- ユスリカは長い前足を前方に伸ばしてとまる。
- ユスリカの口元にひげのようなものがある。
など。
潰されてからわかっても、意味ない気がする……。
どれも微妙な違いで、誤解はしかたないでしょう。
蚊なんて極悪な血吸い野郎と似たばかりに、ずいぶん潰されたんだろうなぁ。
蚊との違いは、幼虫でもわかります。
魚の好物アカムシがユスリカの幼虫
ユスリカの幼虫は「アカムシ」
釣りや熱帯魚が趣味の人は、よくお世話になっているでしょう。
アカムシは魚の餌でお馴染。
ペットショップに行けば、普通に売っています。
1cmほどの赤い虫で、ちょっと美味しそうに見える。
さすがに食べたことはないんですが、魚の食いつきは抜群です。
自然界にも普通にいて、川や池、用水路などの底泥から、赤い半身を出してユラユラやってます。
アカムシはなぜ赤い?
蚊の幼虫といえばボウフラ。
「それならユスリカの幼虫アカムシもボウフラなのだろう」
僕もなんとなくそう思っていました。
でも、「変わったボウフラだな~」という疑問もあった。
ユスリカが蚊ではないと知ったのは、ずいぶん後のことです。
アカムシはアカボウフラとも呼ばれるんですが
赤が自慢のアカムシですが、実は赤くありません。
赤いアカムシは、酸素を体内に溜めているから。
泥水にも暮らせるアカムシは、汚染された場所に住むと、ヘモグロビンのような色素が酸素を溜めて、血のような赤色になるのです。
きれいな水場のアカムシは、赤くありません。
茶色とか、あまり美味しそうじゃない。
この性質は、水質の指標として利用されています。
赤いアカムシが多いほど、水が汚れているのです。
ただ、汚染水は栄養豊富でもあり、ユスリカも好んで出産する。
だから、都市部でも大量にユスリカが発生するんですね。
ユスリカが増えれば、蚊柱も増える。
顔を突っ込むのもいい気分じゃないですよね。
なんとかしたいものです。
まとわりつかれたらどうする?
ユスリカには「頭虫(あたまむし)」という別名があります。
人間の頭に蚊柱を作り、逃げてもついてくる。
蚊柱に突っ込んで、そのまま頭に移動してくることもしばしば。
ユスリカは害がないとはいえ、頭に虫がたかってきたら腹は立ちます。
「俺の頭は臭いのか!」と思っちゃう。
人の頭に集まるのには理由があります。
人の頭はちょうどいい目印だった!
ユスリカは「高いものを目印にして集まる」。
たしかに、なにもない所に蚊柱があるのは見たことがない。
電柱や標識、樹木など、近くに拠り所のある場所に蚊柱はできるのです。
ユスリカには、人の頭もちょうどいい目標物。
高さも適度に目立ってくれる。
「おっ、ここイイんじゃね」と頭にたかってくる。
蚊柱に突っ込んでも同じ。
目標物が頭に代わって、人にストーカーしてくることになります。
これは誰でも変わらないようです。
高身長がたかられやすいとか、ハゲがたかられやすいとか、関係ありません。
まあ、こんな研究は誰もしてないでしょうが、適当に目標となればなんでもいいようですね。
蚊柱からの脱出
蚊柱から逃れるには、別な目標物に押しつけることです。
木でも標識でもいいので、その近くまで行き、体を低くする。
すると、目標物が移って逃げられます。
なんか不幸の手紙みたいだ。
ただし、どれを目標物にするかはユスリカの気分。
うまく押しつけられるかは、不確実なのもお忘れなく。
なにもしなくても、自然にいなくなっているものですしね。
ユスリカは害のない昆虫です。
しかし、たかられれば気分は悪い。
目や口に入ることもあるし、アレルギーを引き起こすこともあります。
蚊柱からの脱出法を知っていても損はないでしょう。
蚊柱には殺虫剤、蚊取り線香も一応効きます。
一応というのは屋外なので、殺虫成分が拡散して一時しのぎということです。
それでも、蚊柱自体ずいぶん減ったように思います。
下水道などが清潔になり、ユスリカも蚊も大発生しにくいのでしょう。
でも、川や湖の近くではまだまだ多い。
よく注意して、突っ込まないようにしましょう。
まとめ
ユスリカは蚊でもないのに、蚊柱の犯人。
幼虫のアカムシは魚の餌だし、意外と身近な虫です。
蚊柱は迷惑ですが、昔から夏の風物詩のひとつ。
メスにアピールするオスの共演が、儚く健気だからでしょうか。
どうでもいい話だけれど、僕は昔から「ユスリカ」という語感がとても好きなのです。
「エウレカ」とか「アユタヤ」とかの感じが堪らないんですよ。
説明はうまくできないんですが……。
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