【フォッサ】マダガスカルで特殊に進化した肉食獣の不思議

陸生動物

映画『マダガスカル』に、フォッサという動物が登場します。

みんなをいじめる、マダガスカルの小悪党といった役柄。

映画を見た人は、セコセコした猛獣と思っているでしょう。

このフォッサは、なかなか興味深い動物。

マダガスカルが特殊な島国だったからこそ誕生した、
他のどこにも見られないタイプの肉食獣なんです。

小悪党なんてとんでもない!

マダガスカルに適応し、独特な進化を遂げたニュータイプ。

どんな動物なんでしょう?

フォッサについてまとめました。

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マダガスカル最強捕食者フォッサとは?

フォッサはマダガスカルの食物連鎖の頂点にいます。

この地での、最大肉食獣です。

その大きさは約70cm!

……最大ってわりには小さい?

ネコより一回りくらい大きいだけではないか。

尻尾も60cmくらいあるので大きくは見えますが、猛獣というにはイマイチか。

これがマダガスカルの動物事情なのです。

フォッサはマングースだった

普通、地域の最大の捕食者といえば、トラやライオンなど大型のネコ族。

またはハイエナやジャッカルなどのイヌ科か、クマといったところでしょう。

ネコ族、イヌ族、クマ族は、すべて「食肉目」に当たります。

特にネコ・イヌは肉食で、ヒエラルキーのトップに立ちやすいのです。

ところが、フォッサはマングースの一種。

沖縄でハブと戦っている、あのマングースです。

現在、動物愛護の観点から、
ハブVSマングースの見世物は減少しています

マングースも食肉目。

最強捕食者となるアビリティはありそうですが、体は大きくないし、雑食性が強い。

あのミーアキャットもマングース族なんですよ。

あまり迫力がないじゃありませんか!

なぜ、マダガスカルではマングースのフォッサなんぞが幅を利かせているのか。

ここにマダガスカルの面白さがあります。

フォッサが頂点に立った理由

アフリカの東、インド洋に浮かぶマダガスカル島。

日本の1.6倍もある、世界で4番目に大きな島です。

その誕生は、今から1億3000万年前にさかのぼります。

超大陸ゴンドワナから切り離された。

これが恐竜の時代で、まだ哺乳類は原始的なネズミみたいな頃。

つまり、マダガスカルは哺乳類がほとんどいない状態で孤立したのです。

しかも、同時期に切り離されたオーストラリアやインドに比べ、ずっと小さい。

植物と下等な動物しか乗せられなかったノアの方舟のようなもの。

マダガスカルといえば、カメレオンの楽園と有名ですが、爬虫類などが独特で多様化したのには、そうした理由があったわけです。

やがて、小さな哺乳類が流木かなにかに乗って、島にたどりつきます。

げっ歯類、小型のサル、そして体が大きくないマングースなど。

大型の捕食者というニッチがなかった島で、
食肉目のマングースが空いたニッチを埋めるのは必然でした。

そのうちの一種が、フォッサとなります。

FOSSA – Amazing Predator

フォッサは、マングースがより肉食獣的な特徴を備えた動物。

マングース、イタチ系のベースに、さらにネコ的、イヌ的な部分もあって、ちょっと分類しづらい外見です。

その生態を詳しく紹介しましょう。

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フォッサの狩りと繁殖

最初、フォッサはネコと思われていました。

出し入れ可能な爪、食肉性の歯、大きな眼窩など、ネコっぽかったのです。

「フォッサ」の語源も、ネコを意味する「ポサ」、イタチを意味する「プサ」からといわれます。

諸説あります

これはマダガスカルの捕食者になるため、ネコ要素が必要だったということ。

獲物の多くがサルだからです。

サルの天敵!樹上のハンター

小型のサルの楽園でもあるマダガスカル。

フォッサの食事も半分は小型ザルです。

サルが相手なら、フォッサも樹上での活動が増える。

忍者のように動けるネコになるのが都合がいいでしょう。

枝を伝いやすい大きな足。

やはり木登りが得意なネコ科のウンピョウも足が大きい。

足首は柔軟で、木から木へ飛び移れる。

樹上を動き回るので、バランスを取る長い尻尾も必要。

実際、フォッサはほとんど木の上にいます。

夜行性で、目の光彩が縦になっているのもネコらしい。

かと思えば、鼻は突き出してイヌみたいだし、丸い耳はアニメのクマのよう。

でも、長い胴体は「マングースだなぁ」と思う。

この寄せ集め感がフォッサの魅力。

サルを捕食するために、試行錯誤した結果なのでしょう。

サルの楽園マダガスカルで生きてゆくには、対サル仕様になるしかなかった。

結果、いろいろな動物に見えるのです。

フォッサは繁殖も変わっています。

フォッサのアレがあれれ?

フォッサは立派なナニを持っています。

オスの生殖器ですよ。

最大時には前足に届くといいます。

人間でいえば、股間から鎖骨の辺りにまで届く感じ。

そこまでデカいと邪魔でしかないと思うが……。

若いメスのフォッサは、玉袋のようなものがある。

「メスに玉が!?」と思いますが、これは「疑似陰嚢」と呼ばれるもの。

メスがオスのふりをしているのです。

おかげで、若いメスはセクハラされない。

「ちっ、男か」と他のオスがちょっかいを出さないのです。

疑似陰嚢はハイエナなどにも見られるのですが、
普通はずっと偽チン○を持っている。

フォッサは成長するとなくなります。

若い頃にがっしり貞操を守ったメスは、成熟して疑似陰嚢もなくなると、今度は女王のように振る舞います。

待ち合わせは木の上で

フォッサは数が多くないと考えられています。

オスとメスの出会いも大変。

待ち合わせ場所があると便利ですね。

そう思ったのか、フォッサには「婚活の樹」みたいのがあります。

交尾期を迎えたメスフォッサが、ある木の上で待ちます。

そこにオスフォッサが集まり、自分をアピール。

メスが「あなたいいわね」と選び、長々と交尾をします。

もちろん、木の上で。

選ばれたオスの優越感はすごそうですね。

メスは数日から一週間ほど婚活樹を独占します。

で、そのメスが退くと、また同じ木に別なメスがやってくる。

オスを選んで交尾……の繰り返しです。

このとき、前のメスと交わったオスが再び選ばれることがあります。

他のオス「ちっくしょー」です。

まあ、メスもオスを取り替えたりするので、
どのオスもなんとかおこぼれにあずかれそう。

こうした繁殖は、他の肉食獣では見られません。

示し合わせたように、同じ木が使われるのも謎。

「この木の枝ぶりがロマンチックなのよ」みたいなこだわりでもあるのか?

おそらく、場所を決めて交尾することが、数の少ないフォッサには効率的だからでしょう。

こちらはフォッサの子供。

fossa babies run off with camera

上野動物園で見られる

マダガスカルにも今はイヌ、ネコが入り、フォッサも暮らしにくい。

家畜も襲うので、人間にもやられます。

この不思議な進化をしたフォッサの数の回復が、重要課題なのです。

しかし、フォッサは飼育しにくい。

現在(2020年)、日本では上野動物園で一頭だけフォッサが飼われています。

フォッサのいる動物園は少なく、一頭でもいれば幸運なほうです。

樹上で素早いフォッサは、観察も難しい。

フォッサの将来が心配されます。

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まとめ

ネコのようで、イヌのようなマングース。

フォッサは孤島で、独特の形態になった動物です。

「鳥なき里のコウモリ」――優れた者がいない場所では、くだらない者が威張る。

そういう面もあるのは確かでしょう。

でも、サルを襲うために樹上生活に特化し、効率的に繁殖する。

たった70cmの身体でも、島に君臨するためのスキルを勝ち取った。

立派な捕食者ですよ。

映画の小悪党キャラにだまされちゃいけません。

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