昔から船乗りを恐れさせてきた、海の怪物クラーケン。
複数の触手を持った姿で描かれます。
クラーケンのモデルといわれるのがダイオウイカ。
最大で18mにもなるというモンスターです。
そのダイオウイカに引けを取らないのがダイオウホウズキイカ。
こちらも12mを超える巨大イカ。
怪物の伝説となったのは当然でしょう。
イカは人を襲うこともあり、そんな大イカどもは恐怖でしかありません。
スルメやイカソーメンになる奴だけじゃない。
驚愕の巨大イカを紹介します。
解明されつつある謎のダイオウイカ
ダイオウイカが有名になったのは2013年。
NHKが「初めて撮影された生きた姿」を公開。
快挙に浮かれたのか、しばらくあちこちの番組にダイオウイカをぶっこんで、自画自賛していたので、映像を見た人も多いでしょう。
ただ、その存在は以前からわかっていました。
時々、死骸が浜に打ち上げられるからです。
古くは紀元前4世紀。
アリストテレスが「一般のイカより遥かに大きいイカ」の存在を知っていた記録があります。
ダイオウイカはヨーロッパでも普通に知られていたようです。
ダイオウイカはどこにでもいる?
ダイオウイカの生息地ははっきりしません。
死骸の漂着、目撃は主に
・北大西洋(特に北欧)
・アメリカ西海岸
・日本の南海
・アフリカ南部
・オセアニア南部
赤道付近ではあまりなく、比較的高緯度の世界中の海にいるのでしょう。
深度は300~1,000m。
たまに海面付近まで上がることがあります。
どこのダイオウイカも遺伝子に差はありません。
このことからダイオウイカは一種で、広く分布していると推測できます。
規格外の最大無脊椎動物
やはり、魅力はその大きさ。
最大で18mなんていわれます。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki3.png)
山手線の電車の一車両が20m。
とんでもないサイズですが、ほとんどは触腕の長さ。
イカは三角耳のある胴体と頭。
頭から8本の触手、さらに両端に2本の長い触腕という構造です。
ダイオウイカの大きさは2/3が触腕。
18mといっても胴体と頭が6mで、12mの触腕の計算ですね。
だから、数字ほどの大きさは感じないでしょう。
見つかるダイオウイカのほとんどは、胴体3m触腕6mを超えません。
こちらは富山県の港で見られたもの。
それでも骨のない無脊椎動物としては、驚きのデカさ。
目玉だけでもバレーボール並みという化物です。
スルメにしたら四畳半くらいになりそう。
いったい何を食ったらそんなに育つんでしょう?
食べても美味しくない
ダイオウイカの天敵はマッコウクジラ。
これはよく知られていて、深海の巨大生物バトルって感じで描かれます。
ダイオウイカの足には、直径5cmほどの鋸状のリングになった吸盤がある。
マッコウクジラの頭部には吸盤の痕がよく見られます。
いくら巨大でもマッコウクジラに捕食され、虚しい抵抗をしているのでしょう。
でも、人間の好む味ではないそうです。
巨大イカは巨体を浮かすために、身に海水より軽い塩化アンモニウムを含んでいて、ひどく臭い。
「世界一不味い」というお菓子「サルミアッキ」に似た味だとか。
ダイオウイカの味を体感したい人はサルミアッキで。
そんなダイオウイカもかなりの肉食。
深海の魚、他のイカ類、そしてダイオウイカ同士で共食いもしているらしい。
人を襲うは嘘?
でも、人を襲ったという記録はない。
昔の、船に足を巻きつけている絵は脚色でしょう。
うっかり「絡まっちゃった~」って図かもしれない。
性格はどちらかといえば温和なようです。
まあサイズがサイズですから、見ただけで心臓が止まりそうではあるかな。
ただ、これ以外の生態はよくわかりません。
寿命も不明。
頭足類は短命なので、3年前後~長くても5年程度と考えられています。
むしろ、そんな短期間で10m以上に成長することに驚く。
海の怪物とされるのも納得です。
しかし、巨大イカはダイオウイカだけではありません。
まだまだいるぞ!特大サイズのイカ
ある種のイカは、大きくなることを目指したらしいです。
頭足類は元は貝類で、殻を持っていました。
オウムガイは今も殻付き。
コウイカのまな板みたいな骨や、イカの筋のような骨は殻の名残り。
タコはすっかり骨なしです。
殻を脱ぐことでイカやタコは自由と、体を大きくできる条件を得ました。
そして一部が巨大イカとなるのです。
ダイオウイカのように巨大化したイカに、ダイオウホウズキイカがいます。
南極海のダイオウホウズキイカ
ダイオウホウズキイカの体長は12~14m。
ダイオウイカよりは小さいですが、ずんぐりとして嵩がある。
体重は500kg。
ダイオウイカは200kgほどなので、
ホウズキのほうが大きさを感じるかもしれません。
生息域は南極海2,000mの深海。
寒水にいるからなのか、5kgの餌を食べれば200日生きられるという燃費の良さだそう。
時々、漁船に引き上げられて、その巨体をさらすのです。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki1.png)
なぜかメスしか確認されていません
ダイオウイカとはまったく別の種ですが、
生態は似ているだろうと思われます。
違いは触腕。
葉のような先に並ぶのは、ダイオウイカのようなギザギザの吸盤ではなく、回転式の鉤爪。
顔に線状の傷があるマッコウクジラは、
おそらくホウズキにやられたものでしょう。
いわゆる「くちばし」もダイオウイカより立派です。
これを見ると、攻撃力はダイオウホウズキイカのほうが上か。
人が襲われたことはありませんが、
鉤爪の一撃で引き裂かれそうですね。
しかし、攻撃力でいえば怖ろしいのはフンボルトイカでしょう。
人食いの悪魔フンボルトイカ
東太平洋には凶暴なフンボルトイカがいます。
日本ではアメリカオオアカイカとも呼ばれ、通称は「赤い悪魔」。
胴体部1.5mになる、人間と同サイズのイカです。
この程度の大イカは珍しくないんですが、
フンボルトイカはとにかく攻撃的。
実際に何人もの人間が犠牲になっている、殺人イカなのです。
「赤い悪魔に襲われたら逃げられない」
漁師やダイバーはそう口にします。
フンボルトイカの恐怖は群れで襲ってくること。
鋭い吸盤とくちばしを持ち、時速30kmのスピードで泳ぐ2m級のイカが、数百匹で攻撃してくる。
厚いダイバースーツも軽く破ります。
イカに食われて死ぬなんて、イカ好きの日本人なら耐えられません。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki3.png)
世界のイカ漁獲量の半分は
日本で消費してるんですって
しかし、研究でフンボルトイカの知能はかなり高いとわかっています。
人間への襲撃も、最初は好奇心から集まってくるらしい。
体の色を変え、人間とコミュニケーションを取る様子も見られます。
どこかでなんかスイッチが入って、「食ってやる」になるんでしょう。
フンボルトイカは味がいいので、人に食われるほうがずっと多いんですが。
未知の大イカはいるか?
ダイオウイカ、ダイオウホウズキイカの存在は、海の怪物が実在する証しです。
とすれば、深海には未知の巨大イカもいるのでは?
そんな空想も巡らしたい。
数年前、ある衛星画像が公開されました。
南米大陸の沖の海を撮った写真に、
海面から飛び出すイカが写っていた。
計測すると、そのイカは120m!
ちょっと信じがたいデカさです。
120mはともかく、打ち上げられたクジラの胃の中に、ダイオウイカなどよりずっと大きなくちばしが見つかることがあるそうです。
その持ち主は、20mを超える巨大イカかも。
伝説のクラーケンがいつか発見されるのでしょうか。
まとめ
伝説級の大きさを誇る巨大イカたち。
頭足類の見た目の悪さもあって、フィクションでもお馴染です。
でも、タコが3m程度なのに、なぜイカは20m近くにもなったのか?
その理由はよくわかりません。
天敵を避け、深海に逃げて巨大化したと思うんですが、未だにクジラの餌ですしね。
しかし、そのサイズだけでも興味深い存在です。
深海調査が進歩している今後、新たな発見も期待してしまいます。
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