人ともっとも親しいのは犬。
「好きな動物ランキング」ならトップの常連。
一番愛されている動物でしょう。
でも、「犬」「イヌ」にはどこか侮蔑的なニュアンスもある。
「お前は犬だ!」と言われて「褒められた」とも思えない。
愛されているわりに、「くだらないもの」扱いなのも犬なのです。
なぜか蔑まれている犬。
世の中には、犬にまつわるいろいろな言葉があるようです。
「犬」は良い意味で使われない?
雨に濡れた野良犬ほど惨めなものはありません。
僕も雨に濡れると、「俺はまるで犬だ」という気がする。
そういえば、英語で「土砂降り」は「Cats and Dogs」ですしね。
これは「ネコとイヌが喧嘩をしているような雨」という意味。
土砂が降ってくるよりはいいのかな。
要は、「とんでもなく騒々しい雨」ってことでしょう。
「Cats and Dogs」には、「犬猿の仲」という意味も。
なぜかどちらにも犬が入っている。
思ったよりも犬は平和的じゃないのかもしれません。
犬のケンカなら「Dog fight」という言葉もあります。
戦闘機での戦いで使われますね。
空での戦いは敵機の後方または上に位置するのがいい。
そこで戦闘機は互いに後ろを取ろうとする。
その様子が「互いの尻尾を咬もうとする犬のケンカみたい」だから。
僕には「盛りのついた犬がメスを追っかけ回す様子」が近いと思うんだけど。
犬は“惨め”と“卑怯”の象徴
このように、犬を使った慣用句は豊富。
いい意味もありますが、「負け犬」で使われることが多いようです。
「負け犬」は英語で「Underdog」。
下の犬なのか、犬の下なのかはわかりませんが。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki2.png)
どっちも嫌だな
ちなみに、「アンダードッグ効果」は日本の「判官びいき」のこと。
弱いほうを応援したくなる心理ですね。
逆に強いほう、目立つほうを応援するのは「バンドワゴン効果」といいます。
「行列のできる店は美味しいに違いない」と行っちゃうようなことです。
英語ではどうも、犬は「ひどくダメ」のシンボルらしい。
「犬のような死に方」
「犬のように体調が悪い」
「犬みたいに酔っちまったぜ」
などの言い回しが見られます。
日本もそうですが、犬は「卑怯者」の意味もある。
密偵や探偵を、コソコソ嗅ぎまわる犬に例えます。
英語でもDogは「卑怯者」。
「浮気者」と使うこともあります。
犬は胸を張って生きているように見えないんでしょうか?
「人間に媚びて、追従笑いしているみたいで嫌いだ」
というのは、太宰治の短編小説『畜犬談』。
犬嫌いの主人公「私」が、とにかく犬をこきおろす。
やっぱり、犬はかなり低く見られるようです。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki3.png)
でもいい話なんですよ~
「悪い言葉ばかりだ」
犬好きさんはプンプンでしょうか?
しかし、犬は押しも押されぬ人気者。
犬を絶賛する名言も豊富です。
犬の愛情は人類を救う!
![犬の画像](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2020/07/dog-girl.jpg)
犬は忠誠心の強い動物。
愛情だけでなく、「Work like a dog/犬のように働く」のようにマジメさも表します。
日本でいうなら「犬馬の労」。
「犬を三日飼えば三年恩を忘れず」も忠誠ですね。
でも、どこか「社畜」の感じもする。
野良犬の減少でイメージアップ
昔は野良犬も多かったのでしょう。
当然、悪さをする犬もたくさんいた。
ろくに躾もされていないのだから、ギャングみたいなものですよ。
悪い意味の言葉は、それが原因でしょう。
犬を可愛がる文化はもちろんありました。
それでも野良が暴れれば、心象は悪い。
犬が侮蔑的に使われたのもわかります。
最近は野良犬が珍しい時代。
犬は人間の保護下で、飢えることなく暮らし、家族の一員とされています。
それに伴い、犬は親友というイメージも強まった。
犬の魅力は、情が厚いこと。
それに癒される人も多いでしょう。
たくさんの著名人が「犬愛」を語っています。
やはり犬は最良の友だった!
一方で、最高の賛辞を送られているのも犬。
犬好きは、犬を人間以上の高位な存在と位置付けています。
「犬は自分以上に自分を愛してくれる」
~アメリカの作家、ジョシュ・ビリングス
「犬が人生のすべてではないが、人生のすべてを満たしてくれる」
~アメリカの写真家、ロジャー・カラス
「私は人間の天国より犬の天国に行きたい」
~アメリカのコメディアン、ウィル・ロジャース
「私が知っていることは、全部犬から学んだ」
~アメリカの作家、ノーラ・ロバーツ
「利己的な世界で、人間が持てる最も謙虚で、決して見捨てられず、愛情深く裏切らない友は犬だ」
~アメリカの政治家、ジョージ・ヴェスト
……など、ベタ褒めのオンパレード。
イギリスの長い諺――
「子供が生まれたら犬を飼いなさい。
子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。
子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。
子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。
そして子供が青年になった時、 自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう」
も犬好きには有名でしょうか。
少々、度を越えた賛辞にも思えるんですが……。
まあ、海外の格言って大仰な表現しますからね。
ライターとしては、この言葉のセンスを見習いたいものです。
とはいえ、犬は飼い主の鏡でもある。
群れる動物である犬は、空気を読むので、一緒にいる飼い主家族や仲間に染まりやすいのです。
忠犬に育つかどうかは、飼い方、躾け方が大切。
アンダードッグにしないためには、飼い主自身が健やかでないとダメなんでしょうね。
まとめ
惨めな野良だったり、最良の友だったり。
犬に与えられてきた役割はいろいろです。
時には見下され、時には愛情を注がれる。
それも人間に近い動物だったからなのでしょう。
侮蔑表現が多い犬ですが、それもどこか「俺ってまるで犬だよ」みたいな仲間意識が、人間側にあるような気がします。
それだけ親しい動物だともいえそうです。
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