1965年に発見された「イリオモテヤマネコ」。
世紀の大発見でした。
ヤマネコほどの大きさの未確認哺乳類がいるとは考えられなかったのです。
といっても、西表島の人は時々見ていた。
だから、「発見」というよりも「確認された」が正しい。
島の中では普通に知られていたのです。
ところが、島民は言います。
「イリオモテヤマネコより大きな、別のヤマネコもいる」と。
それが「ヤマピカリャー」。
ヒョウのような大型のネコだそうです。
今回はイリオモテヤマネコの紹介と、まだ見つかっていないヤマピカリャー実在の可能性を探ってゆきます。
イリオモテヤマネコ
面積の9割が亜熱帯の森という沖縄県・西表島。
西は「日が入る」から「イリ」と読むのに、なぜか「日の出の東」を「デ」と読む話は聞いたことない。
沖縄本島より台湾に近い、南の島です。
この島に隠棲していたのがイリオモテヤマネコ。
発見当初は「新種」とされていましたが、
後の調査で東アジアに生息する
ベンガルヤマネコの亜種であることが判明。
日本で見られるヤマネコは、
同じベンガルヤマネコ属の、長崎県・対馬のツシマヤマネコと、このイリオモテヤマネコだけです。
イリオモテヤマネコの特徴
イリオモテヤマネコは大きさが50~60cm。
イエネコより一回り大きいくらい。
25cm前後の、先まで太い尻尾があります。
毛色は暗灰色、淡褐色。
額には数本の黒い縦ラインが見られる。
どこかヒョウの風情も感じます。
イエネコと見分けるポイントは
・耳の先は丸く、後ろ(耳たぶの裏)が白い。
・白く縁取られた目。
・大きく見える鼻
・体表に黒の斑点。
あたりでしょうか。
こちらの動画がわかりやすいです。
原始的な生態の理由
その生態はワイルド。
食べられるものはなんでも食べる。
普通ヤマネコはネズミやウサギを獲物にしますが、
イリオモテヤマネコは鳥でもトカゲでもカエルでも昆虫でもいただきます。
その食べ方は原始的。
ただ食らいついて、食い散らかすというスタイル。
戦略もマナーもない。
これには「島の野生ネコ」という事情があります。
まだ、西表島が大陸と繋がっていた頃。
大陸のヤマネコが渡ってきました。
しかし、数万年前に島となって孤立。
そこは、ヤマネコが生息できるほど広くなかった。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki1.png)
西表島はヤマネコのいる世界最小の島です
古い生態を残したまま、閉じ込められた島で、なんでも食べるしかなかったわけ。
悪環境でどうにか生き延びているという感じ。
おかげで増えもできず、島も小さかったので、
「幻のヤマネコ?そんなのいるわけないじゃないか」
とほったらかされて、発見も遅れた。
現在、イリオモテヤマネコは推定で100頭前後。
もちろん、西表に行っても、見られる可能性は低いです。
薄暗い時間に活動するので、朝方か夕暮れの時間を狙って、あとは運次第でしょう。
イリオモテヤマネコは島の名物なので、本物じゃなくてもあちこちで絵や像が見られます。
![イリオモテヤマネコの像の画像](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2021/02/4314069_s.jpg)
そんな西表島には、さらに大きな「ヤマピカリャー」の噂があります。
それはまるでヒョウのような動物なんだとか。
ただでさえヤマネコには手狭な島に、もっと大きいヤマネコがいる?
ちょっと信じられません。
未知の大ヤマネコ ヤマピカリャー
「ヤマピカリャー」とは「山で目が光るもの」の意味。
イリオモテヤマネコを「ヤマピカリャー」と呼ぶこともあります。
その発見前の聞き取り調査を開始した頃から、島民は2種のヤマネコに言及していた。
「ヤマピカリャーには、大きいのと小さいのがいる」
小さいのはイリオモテヤマネコ。
では、大きいほうは?
これが未確認のオオヤマネコ「ヤマピカリャー」なのです。
ヤマピカリャーの目撃
ヤマピカリャーの体長は1~1.2m。
尾は60cmほどで、地面に届くほど長く、太さもある。
緑がかった黄色に、黒い斑紋。
イリオモテヤマネコの倍もあり、見間違いしそうにありません。
目撃は島の西側に多く、遭遇した人も50人に近い。
島民は小さなイリオモテヤマネコと、大きなヤマピカリャーを、明らかに区別しているらしい。
「殺して食べた」という強者もいます。
だいたいの未確認生物には、食った報告があるんですよ。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki2.png)
いや、食うなよ
最近の目撃は2017年。
これは魚の調査に訪れた、島根大学の秋吉英雄教授が遭遇した件で、生物に詳しい目撃者という点で特筆すべきと思います。
海辺にいた教授は、近づいてくる獣に気づきます。
「ヒョウのような動物。尾が長く、黒の斑紋だった」
距離は2.5m。
教授は恐怖を感じたそうですが、観察はよくできたでしょう。
獣のほうが先に逃げたのだとか。
最近では「ヤマネコの倍はある、3mもジャンプするヤマピカリャー」の目撃もある。
しかし、日本にそんな大型のネコが実在するのでしょうか?
秋吉教授は獣を「ウンピョウ」と考えました。
ヤマピカリャーはウンピョウ?
ヤマピカリャーの正体の第一候補がウンピョウです。
「昔、ユンピョウってカンフースターがいたな」
と思い出した人は、僕と同じオッサン世代。
「雲豹」と書く、ネコ科動物です。
中国南部、インドシナ半島、そしてインドネシアに生息しています。
ウンピョウは体長が1mほどで、尾が50~90cm。
黒の斑紋が不定形(雲状)なので雲豹。
ただし、見た目がヒョウに似ているというだけで別種。
ネコとヒョウの中間に当り、むしろヤマネコに近いと思う。
樹上を身軽に移動し、泳ぎも上手で、なんでも食べる。
大きさ、特徴、習性……。
ヤマピカリャーの特徴に合致するじゃありませんか!
このウンピョウには「台湾トラ」という別名もあります。
かつては台湾にもいたのですが、現在は絶滅したと考えられているのです。
西表島は台湾と近い。
もし、台湾にウンピョウが少数生き残っていたら。
もし、ウンピョウが泳いで西表島に渡っていたら。
あるいは、ウンピョウもイリオモテヤマネコと一緒に大陸から渡ってきて、島に閉じ込められて独特の進化をしながら生き延びているとしたら。
「ヤマピカリャー=ウンピョウ」が成り立つんですが……。
ヤマピカリャー実在の問題点
これは難しい問題です。
まず、台湾でもウンピョウは見られなくなっている。
いるかいないかはっきりしない。
台湾と西表は近いといっても150kmほども離れている。
途中に与那国島があって、中継地にはできそうですが、ウンピョウが泳ぎ上手としても、けっこうな距離ですよ。
そして、西表島の大きさ。
ヤマネコにも狭い土地なのに、ウンピョウくらいの大型ネコがいられるのか?
ウンピョウの行動範囲から計算すると、
西表島の広さでは10~15頭生息できるかどうかなのです。
そこに人間もいて、ヤマネコもいるのだから、生息可能な頭数はもっと少ないはず。
イリオモテヤマネコは奇跡的な存在です。
小さな島に残された原始ヤマネコ。
彼らが生存することは、日本人にとっても喜ばしい。
そのうえ、ヤマピカリャーなんて大型ネコまでいたら、奇跡の2乗。
信じられない話です。
しかし、「東洋のガラパゴス」と呼ばれる西表島のフトコロは、僕らの常識よりずっと深いのかもしれません。
現にイリオモテヤマネコがいたのです。
「ヤマピカリャーも」と思いたい。
まとめ
イリオモテヤマネコとヤマピカリャー。
西表の島民に語り継がれてきた2種のヤマネコ。
小さいほうは見つかりました。
なんでも食べて、狭い島で細々と生き延びてきた。
大きいヤマピカリャーはどうか?
「日本にも大型ネコがいた!」と、いつか驚きたいものです。
そのためにも西表島の自然環境を、守っていかなきゃなりませんね。
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