【スプレッダー】と【クラスター】感染症はどうやって広まる?

感染の画像 その他

世界規模で騒動を起こす新型コロナウイルス。

その報道でよく聞く言葉。

『スプレッダー』『クラスター』

語感はカッコいいですが、感染病を拡大させる原因となるものです。

要は「感染源となる人」と「ある場所で一緒に感染した集団」ってこと。

過去にもこの2つが被害を大きくした事例が見られます。

例えば「腸チフスのメアリー」

スーパースプレッダーとして有名です。

そんな話も紹介しながら、スプレッダーとクラスターがどのように感染を広めるのか、詳しく解説してゆきます。

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動く感染源スプレッダー

スプレッダーは本来「広める人」という意味。

今で言う「インフルエンサー」に近いでしょうか。

幸福を広めてくれるなら言うことはありません。

しかし、広めるのが感染病では困る。

被害が拡大する場合、
動き回ってウイルスや菌をバラまく感染者が必ず存在します。

それがスプレッダー。

といっても、スプレッダーを諸悪の権現、悪党と呼ぶのは気の毒です。

スプレッダーは自分を感染者、保菌者とわかっていません。

スプレッダーとして知られる「メアリー・マローン」。

彼女の物語を聞けば、単純に悪とすることができないとわかるでしょう。

腸チフスのメアリー

20世紀初頭――。

ニューヨークで腸チフスが小規模な流行をしていました。

腸チフスはサルモネラ菌の一種、チフス菌が引き起こす感染症。

高熱が続き、頭痛、腹痛、下痢などを伴い、最悪死に至ります。

不衛生な途上国で発生しやすく、現在も年間15万人前後が亡くなっている。

海外旅行で感染が多いので注意

昔とはいえ、大都市ニューヨークで流行するのは不思議だったのです。

そこで衛生士が感染経路を徹底的に調べます。

その結果は……。

いくつかの感染者が出た家で、同じ料理人が働いていた!

それがメアリー・マローン。

14歳でアイルランドからニューヨークに渡り、
料理人として腕を磨いて、富豪宅にも雇われていた信用ある女性でした。

性格もよかったメアリーは、どこでも歓迎され、1900年から7年の間に数件の家で働きました。

それらの家々で腸チフス感染者が22人もいたのです。

各地の発症現場にいた共通人物。

メアリー怪しすぎです。

ところが、当のメアリーはいたって健康。

衛生士は彼女を「健康保菌者(無症候性キャリア)」と断定します。

感染しているのに症状が出ない人のことです。

メアリーは当然反論しました。

当時は「チフスに感染したら100%発症する」が常識。

「元気な私が保菌者であるはずがない!」というわけ。

しかし、市はメアリーを隔離。

現在は、発症しない感染者もあることが知られています。

マスコミは『Typoid Mary/腸チフスのメアリー』と書き立て、
現代もその名で定着しているのだから、えらい悪名を被らせられたものです。

ちなみにメアリーは、
「食品を扱う仕事をしない」
「定期的に住所を報告する」

ことを条件に隔離は解かれたのですが、その後消息不明に。

名前を変えて産婦人科で働いていたのが見つかり、再び隔離。

亡くなるまで自由にはなれませんでした。

解剖すると、胆のうにチフス菌の感染巣がやはりあったそうです。

行方をくらましたことで、「タチの悪い保菌者」との意見もありますが、僕はそうは思いません。

メアリーは自覚がなかった。

彼女が依頼した医師は「陰性」と判断していた

隔離施設では看護師などの仕事を手伝っていたそうですから、根っから人の世話が好きだったのでしょう。

メアリーはスーパースプレッダーでしたが、悪人ではありません。

たまたま抵抗力が強く、症状が顕在化しなかっただけ。

このように、誰もがスプレッダーになる可能性があるのです。

生前のメアリーの記録も残っています。

Typhoid Mary

スプレッダーになりやすい人とは?

スプレッダーになるのは、ほとんどが「無自覚の感染者」。

ウイルスや菌に強い健康体の人ですね。

スプレッダーとなる人は社交的で、趣味も広く、人に会うことが多い。

さらに活発で、行動範囲が広い。

むしろ、モテるタイプだと思います。

逆に、ウイルスや菌をもらってきやすい。

アクティブが裏目に出るパターン。

引きこもりにはできない芸当です。

中には、症状を自覚しているのに動き回る無責任な人もいるでしょう。

拡大する感染症は、こうしたスプレッダーの存在が一番の懸念。

感染経路を調査するのは、スプレッダーの有無を知るためです。

少数のスプレッダーが、被害を広める。

「元を断たねば」ってこと。

しかし、人の移動が多い現在、
メアリーのような容疑者を見つけるのは至難の業でしょう。

そこで注目したいのがクラスターです。

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大量感染の始まりクラスター

クラスターは「集団」の意味。

感染症では「ある場所で多数の感染者が出る」ということになります。

クラスターは集団感染なので、特定しやすい。

新型コロナウイルスでもライブハウスや屋形船が、クラスターを出した場所と報じられました。

感染予防では、似たような場所に近づかないことも重要です。

限られた空間に注意!

人が集まる密室。

ミステリーが始まりそうな空間は、
ウイルスや菌に感染しやすいといえます。

他人と接触しやすく、飛沫が届く距離感。

一斉感染が起こるのも当然でしょう。

代表的なのが学校と病院。

大流行の発生源といえば、この2つが相場ですよね。

これは建物だけでなく、町や地域でも見られます。

スラム街のような不衛生な場所。

人の出入りが激しい繁華街など。

ウイルスや菌が好む環境で、人々が肩を寄り添って暮らしていれば、爆発的な大量感染を引き起こします。

クラスターが特定されれば、同じ空間にいた全員が感染容疑者。

新たな感染者がスプレッダーになることも防げます。

感染症対策は、プチプチビニールをひとつずつ潰してゆくような作業。

感染の広がりは覚悟しつつ、抑制する手段をとるしかありません。

永遠に流行するウイルスもないですし、
「感染が落ち着くまで被害を広げず耐える」のが上策。

それには個人個人の予防が不可欠でしょう。

でも、それを邪魔するスプレッダーもあると思います。

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誰がパニックを引き起こすのか?

情報の画像

病気が蔓延すると、報道が過熱します。

健康は最大の関心事ですからね。

多くはTV、新聞、SNSなどが情報源となるでしょう。

これらが間違った情報を流したら……。

その被害はスーパースプレッダーの比ではありません。

現代の最悪スプレッダー

コロナ騒動でトイレットペーパーや缶詰を買い占めませんでしたか?

在庫はじゅうぶんだったのに、噂にみんなが踊らされる。

怖いのはこうしたパニックです。

特に品薄でもないのに、「なくなる」と聞けば買いたくなる。

おかげで、本当に品薄になっちゃう。

で、「やっぱり買わなきゃ」と負の連鎖です。

メディアリテラシーと言われて久しいですが、
「ウイルス流行などの異常事態になると、人は考える余裕を失う」
といういい例ですね。

これなどは最悪のワーストスプレッダーでしょう。

パニックの原因は常に大勢の「踊る阿呆」なのです!

マスコミもネットも、不安を煽りたがる傾向があります。

そのほうが大衆の食いつきもいい。

不安が蔓延すれば、みんないとも簡単に乗せられてしまう。

これでは別な被害で困り事が増えるだけです。

現代は情報が雑多な時代。

緊急時こそ正しいものと怪しいものを選別しないといけません。

ネットは言うまでもありませんが、
TV新聞だって誤報が少なくないのはご承知の通り。

特に新型ウイルスなんて未知のものは、情報が錯綜しがちです。

ウイルスや菌の感染は、どんなに予防していても完全に防げません。

多少の知識と、判断力を持ち、せめて情報被害は免れたいものです。

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まとめ

病気の運び屋「スプレッダー」。

集団感染「クラスター」。

人の移動と集合は、ウイルスと菌にとっても利用しやすい。

スプレッダーに運ばれて侵略地を拡げ、
同じ場所に集まった多数に感染して、さらに四方に運ばれる。

そしてパンデミック。

なかなか倒せる敵じゃありません。

やはり、一人ひとりがスプレッダー、クラスターに加わらないよう心掛けるしかないようです。

そのためには情報を精査すること。

パニックは害にしかなりません。

オタオタせずに、流行が落ち着くのを待つのがいいのかな~と思います。

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