月に影響を受ける生き物は少なくありません。
満月の夜に、海の生き物がよく産卵するのも有名です。
太陽と月は、地球になくてはならない天体でしょう。
しかし、エネルギーを与えてくれる太陽に比べ、月はどこか陰気な雰囲気がする。
魔性というか、なにか「悪いもの」を呼び起こすような。
「満月の夜は人が狂う」
そんな話もあります。
月の影響が大きくなり、人が正常でいられなくなる。
犯罪率も高くなるとか。
あの狼男も、月で狂った人間がモチーフなのかも。
でも、月にそんなダークパワーがあるの?
満月が人を狂わせ、オオカミのように獣化する。
だとしたら、人の心は月に支配されていることになるのですが……。
満月は事件・事故が増える!
「満月の夜」はいろいろことが通常より増えるといわれます。
・交通事故
・犯罪
・自殺者
・出産
など。
ネタ話というか都市伝説みたいに、どこかで聞いたことがあるでしょ。
小さいことなら
「暴飲暴食をしてしまう」
「つらいことを思いだしがちになる」
「眠れない」
など、ネガティブな夜になりやすいとも。
これらを「引力」のせいだと考えている人も多いかもしれません。
月の引力は無関係?
満潮と干潮は月が起こす現象です。
月は約24時間で地球を一周します。
真上か真下(地球の裏側)に月がある時間帯が満潮になり、月が横(90℃)にあるときが干潮になる。
太陽の引力が加わると、
大潮と小潮になります
月は地球上の水を動かす力がある。
人間の体は7割が水分。
影響を受けないわけがありません。
……と、符合する印象ですが、これは思い込みのようです。
満干の差は大きくても、月の引力は微々たるもの。
海洋生物の出産は潮を利用しているだけで、月の魔力のせいとはいえません。
それに月の引力が満月で最高になるわけでもない。
新月でも半月でも「そう見える」だけで、月の質量が変わっていないのだから、引力はいつも同じです。
月の引力で人が狂うのではない!
であるなら、人を狂わせるのは「月光」なのでしょうか?
月光に魔力があるとしたら、光量がピークになる満月に狂うのは筋が通る。
月光で狂ったのが「狼男」「ワーウルフ」なのかもしれません。
狼男の真実
ヨーロッパでは、月を「狂気」の象徴と捉えていました。
英語でも“狂気”は「Lunatic」。
月は人を狂わせ、獣のように変えてしまうと信じられています。
それが狼男です。
オオカミになったシリアルキラー
16世紀。
フランスでは
・ブザンソンのピエール・ブルゴットとミシェル・ヴェルダン
・「ドールの狼男」と呼ばれたジル・ガルニエ
が火刑に処せられています。
彼らは「オオカミに変身できる軟膏」を使い、何人もの子供を襲い、食った「狼男」でした。
同じ頃、ドイツで
・「ベートブルクの狼男」ことペーター・シュトゥンプ
も、「オオカミになれる魔法のベルト」を身につけて狼男となり、18人を殺害した罪で極刑にされました。
中世のヨーロッパは狼男が暗躍していたらしい。
有名な『ジェボーダンの獣』事件も、犯人は狼男という説があります。
「狼女」もいます
狼男といえば、満月を見ると毛や爪が伸び、オオカミになるもの。
でも、実在の狼男は「獣のようなシリアルキラー」。
「食人鬼」とか「吸血鬼」とか呼ばれるタイプで、
たまたま「狼男」のレッテルを貼られた人間ということでしょう。
人食(カニバリズム)も、貧困な時代ですからあったのです。
その行為がケダモノなので「狼男」。
本当に変身しちゃう事例はひとつもありません。
人は昔から「オオカミになりたがる」傾向があるのです。
なぜオオカミになるのか?
オオカミは神聖視される動物。
日本でも「大神」ですしね。
オオカミは気高い「神」であり、同時に凶悪な「悪魔」とも見られる。
これはおそらく、多くの文明国において、
オオカミが食物連鎖の頂点にある(あった)からでしょう。
地域によっては、「豹男」だったり「虎男」だったり、
そのエリアの最強生物がオオカミの代わりになっています。
神々しくも怖ろしい獣が、神や悪魔の象徴となったんです。
「俺は人間を超える!」という欲望が、
オオカミになりきる行為となり、
本能の赴くままに殺戮を繰り返す「狼男」が生まれる。
また、狼男の時代は、魔女の時代でもありました。
オオカミになる薬やベルト、毛皮などは魔女(とされる呪術者)が作ったもの。
狼男は変身する特異体質ではなく、魔法の力を得たと思い込んだ異常な人間にすぎないのです。
どうやら、狼男も月とは関係なさそう。
では、満月の特殊性とはなんなのでしょう?
月の魔力には理由があった!
満月は「明るい夜」です。
そこに原因があるかもしれません。
満月はストレスになる?
例えば、体内時計は狂うでしょう。
月明りでつい夜更かしして、眠りが浅くもなる。
なんだかイライラする。
体内時計の狂いは・倦怠感・食欲不振・うつも引き起こすのです。
そうなればケンカも起こりやすいし、ドライバーも運転に集中できず事故になる。
実のところ、満月の夜に事件・事故が多いことに確証はありません。
「統計をとってみたら、なんとなく多い気がする」って程度。
月に魔力があるなら、もっと顕著に出るはず。
人のイライラが、アクシデントに繋がる向きはある。
満月がストレスを生む可能性はあるものの、やはり「月が人を狂わす」のは飛躍しすぎですね。
満月と動物の行動
満月は獣の行動も変化させます。
目が利くことで、被食動物は危険を察知し逃げやすい。
夜行性の肉食獣には営業妨害。
狩りがうまくいかなければ、気も立っているでしょう。
獣害が起こりやすい時期ともいえます。
ヨーロッパで目立ったのはきっとオオカミです。
狼男伝説は、そうして生まれたと思うんですよ。
そして「満月の夜は怖い」「なにかが起こる」という雰囲気が醸成される。
親も子供に「気をつけなさい」と警告する。
深夜でも明るい現在と違い、中世の頃は月明りのあるなしは大きな差だったと思う。
人も動きやすく、普通に犯罪も多かったのでしょう。
追い剥ぎとか。
結果、「人を狂わす」と変わったのかもしれません。
月光の不思議
月光にも理由がある気がします。
あの冷たい光は、月独特の輝きではないでしょうか。
人を魅了するというか。
日によって色が違って見えるのも不気味。
時には真っ赤に見えることもあり、夜空の黒と相まって、悪い予兆に思えたりします。
月の色は「月の位置」により
大気を通過する光の散乱で変化します
月の満ち欠けや光色は、昔の人には不思議だったと思う。
そんな月自体の特徴が「人が狂う」「狼男になる」の想像を呼んだ。
意外とそんなオチなのではないでしょうか。
まとめ
月はもっとも近い天体。
地球の生物に無影響とは思いません。
しかし、「人を狂わす」は都市伝説。
「満月の夜は悪いことが多い」に確かな根拠もないのです。
一方で、月はどこか陰鬱な星。
血色の悪い、夜の帝王といった感じ。
風情もあるけれど、ちょっと近寄りがたい雰囲気もある。
その月が「人に悪さをする」と考えることも無理はないと思うのです。
星好きの僕は月のきれいな夜はテンション上がるほうなので、まあ影響を受けているといえるかな。
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