海にも数多い哺乳類。
中でも広く見られるのが、魚のように進化したクジラの仲間。
魚型哺乳類といえばいいかな。
クジラ、イルカ、シャチ“など”です。
「“など”って、その3種だけじゃないの?」と思ってませんか?
たしかに有名なのは3つ。
もうひとつには、『ゴンドウ』がいます。
ゴンドウクジラとも呼ばれ、マイルカ科に属し、シャチの近種。
魚型哺乳類ビッグ3の中間にいるような動物です。
日本近海にもいますし、水族館でも見られる。
知名度はイマイチですが、この第四のクジラは身近なのです。
意外と知らないゴンドウ。
「シャチより強い」という説もある代表的なオキゴンドウを中心に紹介しますよ!
ゴンドウは中途半端なクジラ?
クジラ類の分類はけっこういい加減です。
だいたい4mより大きいならクジラ。
それ以下ならイルカ。
ざっくりし過ぎ。
でも、マイルカ科のオキゴンドウやシャチは5m以上ある。
だから、イルカ科でもクジラと扱われます。
で、ゴンドウの中にシャチを含むこともあって、またまたややこしい。
ゴンドウもどっちつかずの動物です。
クジラ?イルカ?いいえ、ゴンドウです
ゴンドウは5属います。
1属1種のハナゴンドウ、ユメゴンドウ、カズハゴンドウは体長3m程度。
ゴンドウクジラ属の2種、ヒレナガゴンドウ、コビレゴンドウは7m近くになります。
そして、オキゴンドウ(1属1種)は5~6m。
さらに、厳密にはゴンドウクジラではない「シャチ亜科」のカワゴンドウ属とシャチ属が近種でいる。
ゴンドウとイルカは区別がつきやすいでしょう。
口が突き出ているのがイルカ。
鼻が突き出したような新幹線みたいな感じ。
ゴンドウは頭から口までのカーブが緩やかで、
車でいうならボンネットの部分がほとんどありません。
だから、形はクジラに近い。
でも、クジラというには小さいし、体型も細め。
その形から、オキゴンドウは「キュウリゴンドウ」とも呼ばれます。
たしかに上から見るとキュウリっぽい。
人懐こく、水族館で芸も見せる。
この辺はイルカらしく、愛嬌もありますね。
でも、オキゴンドウは海のギャング・シャチのライバルともされているんです。
オキゴンドウとシャチはライバル?
オキゴンドウとシャチは生態が似ています。
オキゴンドウの別名が「シャチモドキ」。
英語でも「False killer whale(偽シャチ)」というくらい。
見た目では、オキゴンドウがほぼ黒一色なのに対し、シャチはパンダのような白黒で違いは歴然です。
どちらも大きさ5~7m。
頭が良く、肉食。
マグロやイカだけでなく、小さいサメも襲います。
オキゴンドウがクジラを襲った例もあります
寿命も50~60年と長い。
主に外洋性ですが、漁場に集まり、人様の獲物を掠めたりして被害も大きい。
さらに、1000m近くまで潜水できる。
スペックではじゅうぶん張り合えそう。
気になるのは「オキゴンドウとシャチはどちらが強いか」。
オキゴンドウVSシャチ
これはシャチに分がありそうです。
シャチと比べ、オキゴンドウはやや小ぶりで、体も細い。
体重ではシャチが倍。
泳ぐスピードもオキゴンドウが時速30kmで、シャチは50km。
とても勝負になりません。
事実、シャチは時々オキゴンドウも捕食するのだとか。
ただし、シャチはどちらかといえば北の海にいる。
オキゴンドウは南洋で、かち合うことは多くないでしょう。
たまたま出会ったら、シャチはオキゴンドウも襲うという程度。
シャチには敵わないとしても、オキゴンドウは別なテリトリーで「最強クラス」の捕食者です。
トラとライオンのような関係ですね。
しかし、オキゴンドウは大きな群れをつくる。
だいたいは10頭前後で、シャチもこのくらいは群れますが、オキゴンドウは小さなグループ同士がさらに集まり、大きな群れを作るのです。
多い場合は総勢500頭もの大軍団。
さすがのシャチも多勢に無勢でしょう。
オキゴンドウは群れ意識が強いのか、イルカの群れに加わることもある。
仲間がたくさんいれば安心ですもんね。
ただ、そんな異文化交流にも、メロドラマチックな愛憎劇は起こるようです。
オキゴンドウの暮らし
ゴンドウはイルカとシャチの中間のようなもの。
一夫多妻のオキゴンドウには、イルカのメスもギリギリストライク。
で、交雑することが確認されています。
オキゴンドウ不倫の子ホルフィン
オキゴンドウのオスが、バンドウイルカのメスに手をつけた。
この不適切な関係が、最初に確認されたのは日本。
1981年に、水族館で生まれたのです。
これこそ『ホルフィン』。
ホエールとドルフィンの混血種です。
ホルフィンは他の国の水族館、自然界でも事例がある。
人為的に掛け合わせる場合もあります
大きさはオキゴンドウ>ホルフィン>イルカ。
イルカのオスも「俺の子じゃない」と疑うでしょう。
ただし、ホルフィンは短命で、繁殖力も低いことが多い。
ハワイのシーライフ・パークで生まれたホルフィン「ケカイマル」は長寿で、出産もしましたが、その子らはやはり短命でした。
ケカイマルは芸もしますよ!(鼻の丸いの)
でも、ほとんどのホルフィンは幸が薄いらしい。
偶発的に生まれる、憐れな「不完全動物」なのかもしれません。
オキゴンドウには集団座礁という運命もあります。
オキゴンドウの苦難
クジラ類が集団で浜に乗り上げ、海に戻れず大量死するのは有名ですね。
原因は不明。
磁場の影響で方向感覚が狂ったとか、
群れのリーダーの判断ミスで群れごと座礁したとか、仮説止まり。
座礁はクジラ類の“さだめ”らしい。
ゴンドウ類も逃れられません。
オキゴンドウの集団座礁は報告も多いのです。
また、好奇心旺盛で人に近づきすぎ、事故に遭うケースも数知れず。
ボートに衝突したり、漁具にからまったりして、命を落とす。
分布は広いのですが、個体数は減少傾向です。
オキゴンドウは食物連鎖の上位にいる海洋動物なので、減少でいろいろな悪影響が出ると懸念されています。
オキゴンドウがいる水族館
シャチを含めたゴンドウ類は、水族館でも見られるクジラ。
数十メートルの大型クジラは水槽じゃ飼えませんからね。
人の手による繁殖のほうも期待したい。
オキゴンドウが見られる水族館はこんなにあるんですから。(2020年現在)
- アクアワールド大洗(茨城県)
- 鴨川シーワールド(千葉県)
- アクアパーク品川(東京都)
- 新江ノ島水族館(神奈川県)
- 八景島シーパラダイス(神奈川県)
- のとじま水族館(石川県)
- 太地町立くじらの博物館(和歌山県)
- アドベンチャーワールド(和歌山県)
- マリンワールド海の中道(福岡県)
- 美ら海水族館(沖縄県)
ざっと調べてもこんなにある。(もしかしたら他にもあるかも)
観賞としても人と一緒に芸をして、ゴンドウはなかなか愛らしい。
是非、出会いに行ってほしいと思います。
まとめ
地味ながら、魚型哺乳類の一角であるゴンドウクジラ。
クジラとイルカの魅力を併せ持ち、シャチに対抗する強さもある。
人懐こさはイルカ以上といわれ、飼育する水族館も多い。
もっと人気があっていいのでは?
コロナで営業時間などが変わっているかもしれませんから、水族館の情報を確認して出掛けてください。
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