光に集まる虫の事情「飛んで火に入る」のは切実な理由があった!

街灯と虫の画像 節足動物

多くの虫は「光が好き」です。

これは「正の走光性」と呼ばれます。

光に向かって走って(飛んで)ゆくということ。

逆に、光から逃げる「負の走光性」というのもあります。

虫の「光好き」は、日常的に見られるもの。

自販機や店の看板に集まる羽虫。

誘蛾灯に集まる昆虫。

「飛んで火に入る夏の虫」という慣用句。

当たり前のことと、誰もが思っているでしょう。

だけど、虫はなぜ光に集まるのか?

実は、この理由がわからないって知ってましたか?

いや、どうしてなのか「なんとなく」はわかるけど、
イマイチ???なのです。

火に突っ込む生態なんて謎すぎますから。

でも、最近少しわかりかけてきました。

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光と闇への反応が生死に関わる

昼と夜がある地球。

その地球で進化した生物。

生物が「光」と「闇」に対応するのは自然なことです。

人間も多くは闇を嫌います。

怖いもんね。

視覚を奪われるのも不安すぎる。

そういう意味では、人間も「正の走光性」と考えられます。

走光性には、ちゃんと理由があるのです。

走光性は安全確保のため

人間も長い進化で、
「昼間は安全、夜は怖い」と刷り込まれてきたんでしょう。

周囲の状況がわからず、夜行性の敵も多い。

生存の危機感は、夜のほうが高い。

闇を嫌いになるのは自然なこと。

経験則が習性として身についた。

だから、暗いのは本能的に嫌なのです。

逆に、ミミズは「負の走光性」です。

地中暮らしのミミズには、暗い場所が安全地帯。

光のある地上では干からびてしまいます。

光に対して「負」、つまり逃げるわけです。

このように、走光性には意味があります。

それはどうやら生存本能からくるもののようです。

有利に近づき、不利から逃げる。

生きるため、死なないためのマストですね。

でも、虫は火に飛び込んでゆく。

死への突撃が本能とは思えません。

違う事情がありそうです。

光は何かの目印なのか?

虫の走光性は、今までよくわかっていませんでした。

「飛んで火に入る夏の虫」はどう見ても自殺行為。

この語源になったと言われるのが「ヒトリガ」です。

蛾の種類で、アメリカシロヒトリが有名ですね。

ヒトリは「火取」「火盗」「灯取」「灯盗」などと書きます。

漢字にすると『鬼平犯科帳』みたいで、ちょっとカッコいい気がする。

ボッチな蛾じゃありません。

むしろ大量発生します

そのヒトリガが、自ら火へ飛び込み命を落とす。

「なんてアホな虫なのだ」

ものの憐れを誘い、慣用句になったんでしょう。

これは「自死」に見える。

しかし、虫の動きをよく見ると、
火に飛び込むというより、
火を何かの目印にして飛んでいるようなのです。

その結果、身を焦がすんですね。

虫の走光性は、どんな理由があるのでしょう?

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飛行に不可欠!「背光反射」という本能

「飛んで火に入る……」は
「虫が混乱している」と長く考えられていました。

走光性が進化の傾向であるのなら、
その対象は自然界に普遍的にある光。

太陽と月のはずです。

太陽が出ているから昼だ。

光があるから地上だ。

このように、太陽と月に対する反応が走光性です。

しかし、人間が火を使うようになった。

光源があちこちにある。

そこで虫が混乱し、突っ込んでしまうというわけです。

光は姿勢安定の目印?

ところが、よく観察すると少し違っていました。

すべての昆虫というわけではないですが、
多くの羽虫は「光に背を向ける」ことがわかったのです。

飛んでいる虫に重要なのは上下の把握。

小さい昆虫は重力をほぼ感じないので、状況から上下を判断するしかない。

上にあるのは太陽と月。

つまり、光に背中を向けていれば、姿勢が正しいとなります。

でも、現代は光がどこにでもある。

虫は紫外線への感受が高く、紫外線のよく出る蛍光灯に集まりやすい。

紫外線量が少なめのLEDには
やや集まりにくい傾向があるようです

自分の下にそんな光があったら。

虫は本能的にひっくり返ることになります。

そして墜落。

炎ならその中に飛び込む、というか落ちる。

これは飛行機でも同じで、ひっくり返っちゃうと失速して落ちます。

「ヤバい!」と思っても手遅れ。

「オワタ……」と運命を受け入れるしかありません。

まあ、混乱説も、あながち間違っていないのかな。

シンプルすぎて失敗?「背光反射」

昆虫のこの本能は「背光反射」といいます。

昆虫の誕生から約3億年。

「光は上にある」というシンプルな判断で問題なかった。

光を作ってしまう人間が現れるまでは。

今は四方から光が当たる。

どっち向けばいいの?ってなります。

面白いことに、背光反射は虫によって差があります。

すぐひっくり返る虫と、そうでもない虫がいる。

墜落しにくい虫もいるのです。

その違いは、その虫の生態や、進化の歴史で変わるのでしょう。

例のヒトリガは、光に頼りすぎた虫なのかもしれません。

それにしても、飛行姿勢安定のための背光反射。

長い間、この本能で空を支配してきた羽虫たち。

人間の登場で、命を奪われることになるとは皮肉な結果です。

だけど、光を信じて飛ぶしかない。

その愚直さが、「ものの憐れ」なのかとも思う。

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まとめ

光に集まる虫たち。

その光景は夏の風物詩であり、ちょっと異様な印象も受けます。

虫がトランス状態に見えるというか。

でも、背光反射を知ると、かなりパニクってるであろうとわかります。

そりゃ焦りますよね。

飛んでいる最中に上下がわからなくなるんだもの。

それを見て「飛んで火に入る~」とか情緒を感じる人間。

虫は「お前らのせいだぞ」と怒っているかも。

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