ヒグマ事件簿『星野道夫ヒグマ襲撃事件』人気番組ロケ中の悲劇!

ヒグマの画像 陸生動物

日本最大の野生動物ヒグマ。

2mを超える巨体で、襲われれば人間などひとたまりもありません。

その襲撃事件はとにかく凄惨!

特に有名な三毛別ヒグマ事件

日高山脈で起きた福岡大ワンダーフォーゲル部が襲われた事件など、伝説的な獣害も多い。

ヒグマのプロが襲われたこともあります。

著名なカメラマンがヒグマの餌食になった『星野道夫ヒグマ襲撃事件』です。

TBSの人気番組「どうぶつ奇想天外」のロケ中で、犠牲者の星野氏が有名人であったこともあり、衝撃度はかなり高かったでしょう。

マスコミが絡んでいることで、今なお物議を醸しているのです。

これは起こるべくして起こったヒグマ事件だったのかもしれません。

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「どうぶつ奇想天外」のロケで起こったヒグマ事件!

1996年、カメラマンの星野道夫氏がTBSテレビに企画を持ち込みます。

「ヒグマと鮭」の営みを、人気番組「どうぶつ奇想天外」で紹介しようというもの。

星野氏は野生動物写真のプロだった。

「どうぶつ奇想天外」は視たことある人もいるでしょうね。

動物の映像、クイズなどをスタジオのタレントが楽しむような番組で、いかにもPTA受けするような感じが僕の肌に合わなくて、僕は一度も視たことがなく、説明が曖昧なのは勘弁してください。

そのロケ地となったのがロシアのカムチャッカ半島、クリル湖畔グラシー・ケープ。

世界的にもヒグマが密集した地域で悲劇が起こりました。

テントのそばにヒグマ!取材班に忍び寄る危機

当地は自然保護区。

観察小屋などもあり、銃の所持・使用は禁じられています。

7月25日。

星野氏とテレビスタッフ3人、ロシア人のガイド2人が到着。

このとき、すでにヒグマの影は近づいていたようです。

泊まる小屋の食料が、ヒグマに漁られていたのです。

嫌な予兆ですが、経験豊富な星野氏は動じません。

他の5人が小屋に泊まり、自分だけは1人で10mほど離れた場所にテントを設営し、より近くから動物を撮影しようと準備するのでした。

27日、アメリカの写真家が星野氏のテントの近くに自分のテントを張ります。

しかし、その夜不審な物音が。

アメリカ人が外に出てみると、小屋の食糧庫の屋根の上で一頭のヒグマが飛び跳ねていました

2m以上もある、額に赤い傷跡のある大グマです。

写真家は大声、手を叩いて、ヒグマを威嚇。

クマは屋根を下り、星野氏のテント後方に移動。

そのとき、騒ぎに気づいてテントから星野氏が顔を出します。

「あなたのテントの後ろ3メートルにヒグマがいる」

「どこに?」

「すぐそこ。ガイドを呼ぼうか?」

「うん。呼んで」

こんな会話が交わされたそうです。

写真家の知らせで、ロシア人ガイドはクマ除けスプレーを持って出てきました。

銃が禁じられているので、スプレーが命綱なのです。

大声や鍋を叩いてクマを牽制しながら、スプレーを噴射する。

でも、7mの距離で噴射してもクマまで届かないという、頼りない射程距離。

近づいてシュッ、クマがちょっと後退、また近づいてシュッ、を繰り返し、どうにか撃退しました。

ここで深刻になっていれば、事件は起きなかったのですが……。

次々現れるヒグマも星野氏は一蹴

間一髪の事態にスタッフも危険を感じます。

小屋に寝泊まりするように星野氏に提案。

しかし、「この時期は鮭が豊富で、クマは人を襲わない」と、星野氏はテント泊をやめません。

その後数日は順調に撮影していたようですが、クマは各地に出没していたらしい。

  • 7月29日、ロシアのローカル局のヘリが、額に赤い傷のあるクマに窓を破られる
  • 8月1日、日本の撮影班の近くにテントを張った環境保護団体のところに例の赤傷クマが現れる
  • 同日の夜、その団体の一人が泊まっていたサケ観察タワーにクマがよじ登ろうとして、恐怖の一夜を過ごす
  • 8月6日、星野氏のテント近くをヒグマがうろつくも、テント泊は続行
  • 8月7日、サケ観察タワーに避難していたアメリカ人写真家がクマを目撃

もう、悪い予感しかしない空気ですよ。

そして、8月8日早朝を迎えるのです。

カメラマン星野道夫、ヒグマに連れ去られる!

まだ明けきらぬ闇に響いた、星野氏の叫び声とヒグマのうなり声。

テレビスタッフが「テント!ベアー!テント!」と絶叫。

外に出たガイドが懐中電灯で照らすと星野氏のテントは壊されていました。

声の方向に光を向けると、ヒグマが星野氏を咥えて引きずってゆく。

ここで銃があれば結果は違ったかもしれませんが、ガイドにできることは音を鳴らし、ヒグマに去ってもらうのを祈るしかなかったのです。

ヒグマは一度頭を上げただけで、そのまま星野氏を咥えて森に消えてしまいました。

その日のうちにガイドから無線連絡を受け、ハンターが到着します。

昼過ぎには加害熊も射殺されました。

森の中で、星野氏の遺体も見つかります。

それは食い散らかされた無残なものだったのです。

以上が「星野道夫ヒグマ襲撃事件」です。

「どうぶつ奇想天外」では追悼特番となり、遺族の意向でこのとき撮影された映像も放送されました。

でも、意見はいろいろあるでしょう。

事の真偽についても判然とせず、後日に検証もされています。

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事件の原因は?星野道夫の死は誰の責任?

夜のテントの画像

事件後、疑問も投げかけられました。

前項で書いた事件の経緯が、すべてTBSの報告書によるものだからです。

「TBSが無謀な撮影を要求し、死亡事故になったのを、星野氏の責任に仕立てたのではないか?」

疑われるのも自業自得でしょう。

普段から「人の不幸は蜜の味」みたいなマスコミですからね。

カメラの外で何をやってるかわかったもんじゃない。

迫力ある画を撮るために、社員でもないカメラマンに危険な仕事をさせるくらいはやりかねません。

ロシア人ガイドや、アメリカ人写真家の証言と合わない部分もあったらしいです。

そう思われても仕方ないですよ。

僕もマスコミなんか信用してませんが、この事件についてはほぼ報告書通りだと思います。

亡くなった人を悪く言うつもりはないけれど、星野氏の判断ミスが原因でしょう。

経験と過信が命取りになった!

星野氏は高校在学中にアルバイトで旅費を貯め、北米を2ヶ月冒険旅行しています。

大学時代はアラスカの村に憧れ、そこで3ヶ月滞在し、クジラ漁を手伝ったり、ヒグマ、ハイイログマなどの写真を撮って過ごしました。

大卒後、動物写真家の助手になるも、雑用が嫌で2年で辞職。

その後はアラスカ大学の入試を受け、点数が足りなかったのに学長に頼み込んでどうにか入学。

野生動物の写真撮影に明け暮れ、大学は中退。

そして写真家に……と、なかなか奔放な経歴の持ち主。

小心者の僕には真似できません

やりたいことに一直線のチャレンジャーである一方、向こう見ず、怖いもの知らずの感もある。

事件の一番の疑問。

「ヒグマの脅威があったのに、どうしてスタッフは星野氏のテント泊を強く止めなかったのか?」

報告書にあるようにスタッフが勧めても、星野氏自身が止めなかったのだと思います。

彼が自分の意志を通す性格なのは、経歴からも想像できます。

「鮭が豊富だから人は襲わない」というのも、星野氏が経験から学んだ確信でしょう。

そこには「ヒグマに詳しい俺のほうが正しい」「素人は心配性で困るよ(笑)」という自負もあったんじゃないか。

でもその年、カムチャッカの鮭は例年より少なかったのです。

つまり星野氏は「鮭で満腹のクマは安心」という基本はプロらしくわかっていたのに、「鮭の量が少ないこともある」を忘れていた。

食料庫が襲われている時点で、クマが満腹でないのに気づくべきでした。

もしかしたら、クマに不慣れなスタッフを安心させるためとか、クマの知識があることを行動で誇示したかったとか、内心にはあったのかもしれません。

危険な行動は、時として「自慢」にもなりますし。

とにかく彼はヒグマに「襲われに行った」格好ですよ。

もちろん、TBSにまったく非がないともいえません。

マスコミの反省も不十分

撮影上の安全管理はテレビ局の義務です。

鮭の遡上や、ヒグマの動向は事前に調べられたはずです。

許可を取って銃の携帯者を同行させるなど、万全を期すこともできたでしょう。

取材には「危険なヒグマ生息地に向かう」という意識が足りなかった。

ヒグマに詳しい星野氏に全部任せっきり、なんでも言いなり、なところはなかったんでしょうか。

星野氏の名前が多少売れていたこともあり、強く物が言えなかった(あるいは、星野氏が言わせなかった)のではないか。

状況判断ができる強いリーダーがいれば防げたのでは?

いろいろ考えられます。

僕はこの事件がテレビで積極的に議論されていた記憶がありません。

マスコミのミスですから、あまり大きくしたくない隠蔽心理ですかね?

身内の不幸は「蜜の味」ではないのでしょう。

星野氏が流した涙の理由は?

こんな証言がありました。

「星野氏はクマに襲われたとき泣いていた」

この心境は想像するしかありません。

助けてほしいと泣いていたのか、家族友人と別れる悲しさか、信じていたクマや自分の知識に裏切られた悔恨か……。

こうして星野氏は43年の短い人生を終えたのです。

名誉の殉職?

愚かな死?

どちらで見るかは、人それぞれなのでしょうが……。

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まとめ

ヒグマの獣害は日本にも多くあります。

「星野道夫ヒグマ襲撃事件」は現場がロシアだったことや、被害者が自らヒグマに近づいたこと、マスコミが絡んでいることなど、他の事件とはちょっと毛色が違う気がします。

近頃はホンワカした動物番組が多く、野生動物の恐怖が伝わるものは少ない。

でも、恐怖感がなく野生動物に近づきすぎて、痛い目に遭う事故もある。

距離感っていうのは大事だな~と思います。

ちなみに、星野氏が最後に撮ったという「テントに侵入するヒグマ」の画像がネットに出回っていますが、あれはガセですから。

コメント

  1.   より:

    センターの所長が餌付けしていた熊だという説がありましたが真偽はご存知ですか?

    • 紅蛙 紅蛙 より:

      所長だかどこかのお金持ちが餌付けしていたという情報はあったと記憶しています。
      真偽は定かではないのですが、保護区でもあり、人の介入はいくらかあったのではないでしょうか。
      事件でも、ヒグマが人を怖れず慣れていた様子があるように感じます。
      そういった環境も背景にあったかもしれませんね。