ターリーモンスターといっても、ほとんどの人はキョトンかもしれませんが、一部ではわりとよく知られている生物です。
「名前からすると怖ろし気な怪物だな」と連想しちゃいますよね。
残念ながら、むしろ笑っちゃうような生物です。
3億年以上も前にいた滑稽な生物で、あまりに奇妙なので「モンスター」といわれるだけ。
変すぎて有名という、超個性的な絶滅種なんですよ。
このターリーモンスターはナマコかなにかだと思われていたのですが、近年の研究で脊索があったとわかり、人間を含む脊椎動物のご先祖様だった判明してビックリ。
さらに以前から「ネッシーの正体ではないか」との説もあって、こちらも気になるところです。
謎だらけのターリーモンスター、知らなきゃ損ですよ!
ターリーモンスターはとにかく変!ヤツメウナギに近い?
ターリーモンスターは、学名が「タリモンスト・グレガリウム」。
「トゥリモンストゥルム」という属の生物になります。
ターリーモンスターは俗称。
セサミストリートのテリーモンスターとは無関係!
ターリーモンスターはこんなに奇妙!
「タリ」とか「トゥリ」とか舌の回らない名前ですが、1958年にアメリカ・イリノイ州で化石を発見したアマチュア収集家のTullyさんに因みます。
Tullyさんも最初は「これはなんだ?」だったようです。
驚いたのも無理はありません。
その生物は大きさが約10cm。
イカのような胴体に、耳(三角のひれ)みたいなものもある。
胴体の上に、左右にピンみたいに横に張り出した目。
その先(イカでいえば足のある部分)に長い口吻がニョキっと突き出している。
口吻の先はカニのハサミのように二股に開き、尖った歯が並んでいる。
文章で表現するのが難しいので、動画で確認してください。
どうです?このフォルム。
Tullyさんも「モンスター」と呼ぶしかなかったのでしょう。
で「ターリーモンスター」。(Tullyの発音の違いで「タリーモンスター」「タリモンスター」ともいいます)
さて、アマチュアでは埒があかないってことで、博物館に持ち込んだのですが……
「なんだこりゃ?」
「ホンマにモンスターやんけ」
「常識外れの生物だべさ」
学者さんたちも困惑。
なぜなら、当時こんな生物は知られておらず、どの種目の生物かもわからなかったのです。
学者も匙を投げた?ヘンテコ生物の走りだった!
ターリーモンスターが生存していたのは3億~3億5000万年前くらい。
生物史の悪ふざけ時代、カンブリア紀~バージェス動物群の後になります。
アノマロカリス、ピカイア、ハルキゲニアなど、ヘンテコ生物が乱立した時代。
この頃から口吻の長いオバピニアなどの生物がいたことはいました。
でも、1950年代にはまだこれらの生物は研究の途中で広く認知されていません。
カンブリアの代表種アノマロカリスも、全体像がわかったのは1980年代なのです。
前知識のないところに、ターリーモンスターが持ち込まれたことを考慮すれば、学者がアタフタするのも頷けますよね。
「ナマコみたいな軟体動物かな」
「いや、ムシにも見える。節足動物じゃないか」
「古代の魚類にも見える」
半笑いしながら意見を交わす光景が見に見えるようです。
肉食だったらしいですが、はっきりしません。
生態なんてさっぱりわからない。
意見はまとまらず、「クリーチャーってことで」と置いとかれることに。
現在のカンブリア・バージェス生物の人気を考えれば、ターリーモンスターはデビューが早すぎたのかもしれません。
しかし、生物学が発展し、このクリーチャーの正体も少しずつわかってきました。
同じ長い口吻を持つ節足動物のオバピニアとはまったく違い、ターリーモンスターは脊椎を持ち、ヤツメウナギに近い生物だった可能性が出てきたのです。
ヤツメウナギの近種説も!だが否定説も強い
ヤツメウナギは細長い体からウナギと名付けられていますが、ウナギとはまったく違う生物です。
丸い口を持つ円口類で、歯も円形に生えていて、かなりエイリアン的。
生息する川や湖で泳ぐと、ヒルみたいにキュゥーっと吸いついてくることもある。
ウナギのように蒲焼きで食べますが、水族館の人気者にはなれそうもない不気味な生き物ですね。
ヤツメウナギは魚の定義からだいぶ外れており、原始的な脊索動物の特徴を残す「生きた化石」なのですが、これがターリーモンスターと似ているというのです。
2016年に軟体動物かと思われていたターリーモンスターに脊索があったと確認されます。
他にも、背びれと非対称な尾びれ、歯の角質、鼻の穴が一つなど、ヤツメウナギとの共通性が高く、両者は近種の生物の考えられるのです。
ということは脊椎動物。
クリーチャーのターリーモンスターは、僕ら人間と同属という意外な発見ですよ!
もちろん、そこから魚類、両生類、爬虫類……とかなり進化したのが人間ですが。
ただし、この意見には反論も。
脊索状のものは軟体動物にもあります。
イカにも骨みたいのありますし。
イカは貝から進化したので、骨みたいのは貝殻の名残りです
また、ターリーモンスターの体内構造がどの脊索動物とも一致しない。
ターリーモンスターがヤツメウナギに近いという説は、まだまだ確定とはいえないようです。
ところで、ターリーモンスターが一部ではよく知られていると冒頭で触れましたが、それは近年この生物がネッシーの正体として取り上げられることが多かったからです。
次項でその辺にも触れてみましょう。
ネッシーはターリーモンスター説。信憑性は?
イギリス北部のネス湖に生息するという怪獣ネッシー。
1994年にもっとも有名であった通称「外科医の写真」の捏造が発覚し、デマ感が広がりはしたものの、他の証拠も数多く、今もって未知動物界の横綱を張っているといえる誰もが知るUMA。
昔からプレシオサウルスの生き残り、大ウナギ、新種のアザラシなど、その正体が議論されてきました。
1970年代頃からそこに加わったのがターリーモンスター説です。
たしかに口吻を長い首と頭に見立てれば、ネッシーの形には似ています。
この説は目新しさもあり、衝撃的でもあったため、一時は最有力の説ともてはやされました。
正解だとすれば、3億年も前のターリーモンスターが現存していることになる。
でも、知られている限りターリーモンスターは最大でも35cm。
ネッシーのサイズにはだいぶ足りないですね
ヤツメウナギの大きいのは1mくらいだから、そのくらいのターリーモンスターも考えられますが、ネッシーにしてはちょっと寂しい……。
10m前後もあるターリーモンスターもあまり考えられません。
ネッシー=ターリーモンスター説は面白いけど、僕はないと思います。
形が似ているマイナーな生物を正体に挙げて、なんとなく慧眼みたいに思われているだけでしょう。
「ネッシーは恐竜」といえば鼻で笑われますが、「ネッシーはトゥリモンストゥルム」といわれると、なんかスゴイ新説に思えちゃう。
まずは10cmのでいいからターリーモンスターの生き残りを発見してもらいたい。
それを飛び越してネッシーまで話を広げるのは無理筋もいいとこですよ。
まとめ
ターリーモンスターことトゥリモンストゥルム。
ターリーモンスターが覚えやすくていいですね。
子供の落書きのような姿ですが、脊椎動物だったとすれば当時なら最先端の生物です。
でも、どうしてあんなヘンテコに進化したのか疑問はつきません。
しかし、古代の軟体動物から脊椎動物へとシフトするエポックメイキングの時期に、重要な役割を果たした生物であることは確かでしょう。
イリノイ州ではターリーモンスターの化石が州の化石(これもよくわからんが)に認定されています。
ネッシーはともかく、もっと注目されていい生物だと思いませんか?
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