鉄オタ、工場萌えなど鉄の構造物に魅了される人は少なくないはず。
あの光沢がたまらない!
文明が生み出した芸術品といった感がありますよね~。
人工的な美は、とても自然界では見られないものでしょう。
と思ったら……
なんと金属質の生物がいたんですよ!
その名は「ウロコフネタマガイ」。英語で「スケーリーフット」と呼ばれます。
なんたって磁石にくっつく生物はコイツだけ!
数百万種の生物の中で唯一無二の存在。(このキャッチフレーズだけでカッコいい!)
メタル好きは是非チェックしなきゃですよ。
鉄の鎧を身に着けた巻貝を発見!
このニュースが伝えられたのは2001年でした。
この巻貝は深海の熱水噴出孔(別名「黒の喫煙者」)にコロニーを形成し、その体は「愚者の黄金」と呼ばれる黄鉄鉱、グレジャイトといった鉄化合物でコーティングされているというのです。
この二つ名……異世界チックだわ~。
後につけられた和名は「ウロコフネタマガイ」。
あまりカッコよくないので、英語で「スケーリーフット」と呼ばれることが多いです。
ScalyFootは「鱗の足」という意味
ウロコフネタマガイは大きくても4.5cmという、ちょっとデカい海のタニシといった感じ。
インド洋の2.000mを超える深海の、熱水噴出孔(一般にチムニーと呼ばれる)近くで暖を取るように生息しています。
名前の由来は巻貝から出た這う足。
硬いウロコがびっしり。
こんなの。
というのは、ウロコフネタマガイの本体は貝の中にスッポリ収まらないので、足を内側に丸めて防御しなくちゃならないから。
殻から露出した部分を手甲で守るようなイメージかな。
けっこう防御力は高そうなのに、ウロコフネタマガイはさらに鉄で装甲を施す念の入れようです。
粋なメタルブラック。でも白いのもいる?
チムニーは海中の小さな火山みたいなものです。
噴出する数百℃の熱水には硫黄、重金属、硫化水素も含まれている。
そういった硫化鉄が付着したのか、貝自体が生産しているのかはよくわかりませんが、貝殻からウロコ足までコーティングされているのです。
特殊な外殻に米軍も着目!?
色はメタルブラック。
「テツ」じゃなく「クロガネ」と呼びたいような渋い光沢。
生息地以外では錆びて色味が落ちるんだって
もちろん磁石にもくっつきます。
貝殻は三層構造で、一番外側がいわゆる鉄の層。
強度は極めて高く、ウロコフネタマガイを参考に米軍が新型アーマーの開発をしているのだとか。
ただし、ウロコ足のほうの防御力はたいしたことないらしい。
貝の本体はナメクジみたいなもんですし、いくらウロコや鉄コーティングがあっても硬度には限界があるのでしょう。
その後、別な場所からもウロコフネタマガイが発見されます。
黒スケ、白スケってなに?
2007年に中国チームが、2009年に日本チームが、それぞれインド洋の別のチムニーで新たなウロコフネタマガイのコロニーを発見しました。
見つかった生息場所はこの3つだけ(2018年現在)
日本が見つけたのは黒に混じっていた白いウロコフネタマガイ。
メタルブラックじゃない!
なぜか硫化鉄で覆われていなかった。
磁石にくっつかない、ノンコーティングのウロコフネタマガイも中にはいたのです。
この個体差の謎はわかっていません。
環境の違い?
栄養の違い?
体質みたいなもの?
「真の戦士に鎧など要らぬ」というやせ我慢?
今後の詳細な研究が待たれます。
ちなみに黒いのを「黒スケ」、白いのを「白スケ」、中国が見つけたものを「ドラスケ」と呼び分けたりします。
「スケ」はスケーリーフットの略。
「ドラ」は見つかった場所がドラゴンフィールドと呼ばれるから。
真っ黒クロスケみたいになっちゃってるな……。
このスケさんたちはどんな生活をしているのでしょうか?
摂食は細菌まかせ。飼育は困難
ウロコフネタマガイの生息地はとても過酷。
金属と硫黄の混じった有毒海域です。
雌雄同体なので繁殖は問題ないでしょうが、食料は?
共生細菌で食料要らず!
心配はいりません。
ウロコフネタマガイは食道の部分に共生細菌を飼って(?)いて、栄養はこの細菌が全部作ってくれる。
細菌は有毒物質を食い、エネルギーを生み出します。
研究で細菌は後天性であることもわかっています。
つまり、共生細菌を生まれつき持っているのではなく、生後に飼い始めるんですね。
これは同時に、二種の共生の歴史が比較的浅い証拠でもある。
共生以前、ウロコフネタマガイはどうやって生きていたんでしょう?
そもそも、ただでさえ鎧系の生物である貝が、鉄で殻を強化する必要があったのか?
鉄防御の理由は不明。飼育はできる?
もしかしたら鉄のコーティングは偶然で、たまたまそうなっただけかもしれません。
それが露出したウロコ足と、美しい巻貝というデザインとマッチし、ディフェンスの高そうな、カッコいいメタルの貝になったという自然のイタズラとも思えます。
どちらにしても、鉄をまとった生物は他に類がない。
それだけでも貴重で、多くの研究機関がこの小さな巻貝に大注目しています。
日本でもウロコフネタマガイの研究は積極的に行われているのですが、長期の飼育は難しくて思うように調査できないのが現状。
まだまだ謎多き巻貝なのです。
まとめ
メタリックな光沢がたまらないスケーリーフットことウロコフネタマガイ。
鉄で覆われていることで人気ですが、それを除くとかなりエグい巻貝です。
近年の深海生物ブームに乗ってフィギュアも販売されているけれど、置物としては「う~ん(困)」というのが僕の感想。
特徴を考慮して、ウロコフネタマガイのマグネットというのもある。
長期飼育ができるようになれば、水族館でも現物が見られるでしょう。
そのときは錆びないように工夫してもらいたいですね。
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