今から700年ほど前。
ポリネシア人が前人未到の島に辿り着きました。
その島には2種の巨大な鳥が生息しており、争いを繰り返していたのです。
……特撮映画の設定みたいですね。
その島は今のニュージーランド。
2種の大型鳥とは、『陸の巨鳥ジャイアントモア』『空の覇者ハーストイーグル』。
体高3.6mの飛べない鳥と、翼長3mの猛禽です。
南洋の孤島で、そんなバトルが人知れず行われていたなんて、なんかロ~マンチック!
でもこのバトル、200年くらいで見られなくなってしまった。
両者が絶滅してしまったのです。
残念だ……と思ったら、近年にも目撃がある。
巨鳥たちはニュージーランドの森林の奥で、現在もひっそりと生きているかもしれません。
史上最も背が高い鳥ジャイアントモア
モアはダチョウのような飛べない鳥でした。
僕は7つか8つの頃に読んだ『かたあしダチョウのエルフ』という絵本の、ダチョウの絵がなんだか怖かったため、今でもダチョウにトラウマがあるのですが、ジャイアントモアなら怖すぎて泣くと思います。
だって、ダチョウですら体高2mチョイで威圧感ハンパないのに、ジャイアントモアは3.6mですよ。
これは一番高身長の鳥類です。
鳥とは思えぬ規格外の大きさ
ジャイアントモアはとにかく巨大。
その骨を「鳥のものだ」と断定した学者も、「そんなデカい鳥がいるか!アホ」と一蹴されたほど。
鳥だとわかり、学者が化石集めに現地人を使った折、「もっと探して持ってこい。More More」と命じたからモアになったという怪しい話もある。
体高3.6mといえば、畳を縦に2枚ですよ。
体重は200kgを超えました。(ダチョウは100kg)
卵だってダチョウの1.5倍の長径24cmもあった。
巨体を支える丸太のような足。
太く長い首の上にある小さな頭。
骨格標本では首を真上に上げた姿のモアですが、普段は前のめりの水平状態であることが多かったらしいです。
で、高い場所の採餌は首をもたげる。
まるで草食恐竜のようじゃありませんか!
17世紀に滅んだマダガスカルのエピオルニスの体重500kgには及びませんが、見た目ではまったく劣らない体格ですよ。
エピオルニスの身長はモアよりちょっと低い3.4m
ヘビーすぎて、モアは完全に飛ぶことを捨てた鳥でもあったのです。
巨大化して翼を失った
ダチョウやエミューなど、飛べない鳥は今もいます。
しかし鳥である以上、翼の痕跡はあるものです。
飛ぶどころかジャンプもしたくなさそうなキウィですら、5cmくらいは羽の存在が確認できる。
ジャイアントモアは翼の痕跡がまったくない。
羽(前肢)をすっかり退化させ、空への未練を捨てきっている。
陸の鳥として、巨大になることを選んだのです。
でも、飛べないモアはどうやってニュージーランドに来たのでしょう?
泳いで来たわけでもないだろうし。
おそらくは恐竜が滅んだ頃にモアの祖先が現れ、ニュージーランドが島になって隔離されたものが、巨大化の道へ進んだと思われます。
ニュージーランドには肉食獣がほとんどいませんでした。
飛ぶのを捨て、陸でゾウのようなポジションに収まったほうがよかったんでしょう。
大きくなれば敵なしですから。
しかし、ある猛禽類がモアに対抗して大きくなります。
モアの唯一の天敵ハーストイーグルです。
最強猛禽ハーストイーグルの強さと絶滅
ハーストイーグルは史上最大のワシといわれます。
現存する大型ワシは、体重10kg、翼長2.5mくらい。
これでもかなりデカいです。
ハーストイーグルのオスはそれと同じくらいだったようです。
メスのほうが大きく、体重15kg、翼長3mにもなりました。
その重量だと、たぶん3mという長さ以上に、羽の大きさ(広さ)は驚異的だったと考えられる。
片翼は大きめのバスタオルくらいあったんじゃないかな~。
さらに揚力を補う尾羽は50cmもある扇子を広げたよう。
10cm以上の鉤爪。
そんなのが翼を広げて襲ってきたら、すごい迫力だったでしょう。
最高時速は80km/hに達し、ぶつかる衝撃は8階の高さからコンクリートブロックを落としたに等しいというから、さすがのモアも転ばされて、捕食されたようです。
ハーストイーグルの進化は「対モア」の結果。
そのくらいのサイズでなければ、モアとバトルはできません。
ジャイアントモアVSハーストイーグルは、鳥類最強の対決だったのです。
一度は見てみたいマッチですね。
しかし絶滅。
それはこの対決に人間が加わったためです。
モアとハーストイーグルは絶滅したのか?
1280年頃、ニュージーランドに人が定住し、マオリ族の祖先となりました。
その食料となったのがジャイアントモアです。
大きいだけで飛べず、おとなしい性格だった鳥は、格好の獲物だったのでしょう。
モアは石を飲み込み、消化の助けにする生態がありました。
鳥によく見られる行動で、丸飲みした物を石ですりつぶす砂嚢(さのう)という部位に使います。
僕も大好物の砂肝です
マオリ族は焼けた石をモアに飲み込ませ、苦しんで死ぬのを待つ方法を使ったそうです。
マオリってけっこう戦闘民族なのに、こういう手も使うんですね。
「飲み込む前に気づけよ」とも思うんだけど、そうやってモアは数を減らしてゆくのです。
そのアオリを食ったのがハーストイーグル。
対モア用に進化し、モアを捕食することで巨体を維持していたのだからたまりません。
1400年代にはどちらも滅んだとされています。
白人が初めてニュージーランドを訪れた17世紀には、伝説の生き物だったのです。
ところが、マオリ族は「どちらも最近までいた」といいます。
モアやハーストイーグルの研究が進んでいた19世紀にも、「俺のじいさんがモアを狩った」「でっかいワシを殺して食った」などと証言があったんです。
それが事実なら絶滅したのは1800年代……。
いや、今でも生き残っているかもしれないのです。
相次ぐ目撃!今も巨大鳥は生き残っている!?
目撃が絶えないジャイアントモアとハーストイーグル。
ただ、ハーストイーグルの目撃は少ないうえ、既知の大ワシもニュージーランドにいて、生存説は微妙。
しかし、モアのほうは記録が多く残っています。
19世紀になると白人の目撃情報も増加します。
1850年代には探検隊が2羽のモアらしき生物を目撃。
1860年代、大きな三本爪の足跡が見つかる。
1950年代、砂浜に寝そべっているモアを女性が目撃。
もっとも有名なのは1993年(最近だ!)の記録でしょう。
数人が森の散策中にモアと遭遇したのです。
40m離れた場所で、すぐに「ジャイアントモアだ」とわかったそうです。
急いでカメラに収めたものの、「大きい鳥みたいなものが写ってるな~」レベルのピンボケ写真。
「鹿ではないか」と非難もされ、証拠には弱いのが残念。
「モアのような巨鳥が未確認のまま存在しているのはありえない」というのが定説です。
でも、ニュージーランドの南島は西部が広い森林に覆われ、綿密な調査も大変なエリア。
ニュージーランド以外にも、クック諸島やニューギニアで、ジャイアントモアかそれに近い大型の鳥類が生存できる確率は高いと主張する学者もいる。
ダチョウ、エミュー、ヒクイドリなどの巨鳥がいるのだから、モアだってわかりませんよ。
いつかジャイアントモア発見の大ニュースを聞きたいものです。
まとめ
ジャイアントモアとハーストイーグルは絵になる両雄です。
絶滅の原因となったマオリ族とともに、どちらもニュージーランドの象徴的存在。
圧倒的な大きさで、今も人々のロマンを掻き立ててやみません。
今でもいるなら是非見つけてほしい!
クローン技術でモアを復活させようと考える研究者もいるようです。
巨大な鳥……見たいですもんね。
来たるその時のために、僕も今からダチョウに慣れておこう(笑)。
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