桃から生まれた桃太郎。
成長して、鬼を退治しに旅立つ。
途中、きびだんごで犬、猿、雉を味方に加えて。
見事、鬼どもを倒し、宝を持って帰ってくる。
もちろん、これは童話『桃太郎』のあらすじ。
起承転結の見本みたいな、誰もが知るおとぎ話です。
でも、よくよく考えると「なんで?」って部分も多い。
「桃から生まれた?」
「鬼って何?」
「犬・猿・雉ってどれほど頼りになるの?」
おとぎ話にツッコミ入れるのも大人げないんだけど、未解決にしておくのも気持ちが悪い。
で、調べてみたら桃太郎はけっこう奥深いのです。
お供の「犬・猿・雉」にもちゃんと理由がある。
適当にスカウトしたわけじゃないんですよ。
大人になってこそ知るべきな、桃太郎の謎を解き明かしましょう!
桃太郎はどこから来たのか?
桃太郎の物語は、おさらいするまでもありません。
日本人なら知らないほうが「異常だな」と思うほど、浸透しています。
登場キャラは少ない。
主人公の桃太郎。
おじいさんとおばあさん。
家来になる犬・猿・雉。
鬼が島の鬼、それだけです。
さまざまなことには、なんの説明もありません。
桃から生まれた理由も、鬼が悪事を働く描写も、家来たちの戦闘力についての解説も、一切ない。
桃太郎は強い、家来の三匹も強い、おじいさんおばあさんは優しく、鬼は悪党。
「そのくらいわかるだろう」という、いきなり異世界に転生して、いきなり魔法や魔物ありの設定で話が進む、テンプレの「なろう系」にありがちな不親切です。
でも、川から流れてきた桃から生まれたというくだりは、異世界からの転生者に似ている気がします。
特別なスキル?を与えられ、別な場所から来た、特殊な人間です。
桃太郎の出自はわかりませんが、桃には意味があります。
桃は善の象徴?女性の隠喩?
桃は「邪気を払う」と言い伝えられているのです。
だから、桃から誕生した桃太郎は、生まれながらに「退魔の勇者」。
「邪」に対抗する「善」に決まっているのでしょう。
桃が「不老不死の霊薬」といわれることから、
「桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんの間にできた子供」という説も。
また、「桃は若い女の尻」の象徴とされ、
「おばあさんが若い女を家に連れてきて、おじいさんとウッフンな関係を結ばせ、できた赤ん坊を取り上げる(女の尻から赤子を取り出すが、桃から子供が生まれるになった)」というのもある。
ちょっとハードコアで、子供に読み聞かせできない。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki2.png)
おじいさん頑張りすぎです
とにかく、立派な若者に育った桃太郎。
鬼との戦いに備え、犬、猿、雉とパーティーを組むわけですが、なぜこの3動物なのでしょうか?
犬・猿・雉の意味と強さは?
鬼討伐の旅に出た桃太郎。
腰にはおばあさん手作りの「きびだんご」。
穀物の「黍」、岡山県の旧名「吉備」、どちらかが由来のようです。
江戸時代の物語では「十団子(とおだんご)」でした。
これは団子を紐や串で繋げたもの。
こっちのほうが腰にぶら下げやすそう。
きびだんごに改変されたのは近代のようです。
その団子で家来になるのが、なぜか「犬、猿、雉」。
これには2つ説があります。
鬼門と裏鬼門
ひとつは「十二支で申・酉・戌が裏鬼門に当たるから」というもの。
風水では「邪が来る」という悪い方角・鬼門が「北東」。
干支には方角があって、その位置にあるのが「丑(ウシ)」と「寅(トラ)」。
鬼は「ウシのような角」があり、「トラのパンツをはいている」の理由です。
その「艮(うしとら)」の対面にある南東に、申・酉・戌がある。
下図になります。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2021/09/momotarou.jpg)
「いや、未(ヒツジ)だよね。申と未だよね」と言いたいところ。
裏鬼門に当たる南西は「坤(ひつじさる)」です。
この辺はちょっと強引な気がしないでもない。
酉と戌はどう見てもズレています。
日本ではヒツジはあまり馴染みがないし、桃太郎が牧童みたいになるとか、作者の都合なのかもしれない。
平和じみたヒツジを従えて鬼退治じゃ絵になりません。
智・仁・勇の三“獣”士?
もうひとつは、3匹が「智・仁・勇」の象徴という説。
「智の人は惑わず、仁の人は憂えず、勇の人は恐れない」
儒教が説く「三徳」です。
「こんな人になりなさい」ってことですね。
知恵のある猿が「智」。
飼われた恩は忘れないという犬が「仁」。
勇敢に巣を守る雉が「勇」です。
雉はピンときませんが、猿と犬は納得できる。
でも、この3匹、どれほど強いのでしょうか?
きびだんごでパワーアップみたいなチートがなければ、あまり期待できません。
強い?弱い?お供の戦闘力
猿はニホンザル。
ゲームでいえば、「素早いがパワーは劣るシーフ」でしょうか。
雉は国鳥でもあるただのキジ。
空は飛べるけど、飛翔能力に長けているともいえず、特に戦闘力は高くもない。
「中途半端な赤魔導士」って感じです。
おそらく、犬は柴犬か紀州犬、四国犬あたりと思われます。
桃太郎伝説が岡山県、香川県、愛知県などの発祥といわれるので。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki1.png)
桃太郎ゆかりの地は全国にあります
四国犬というと「土佐闘犬」。
これは有能そうだ!
しかし、土佐闘犬は明治以降にブリードされた人工犬。
桃太郎物語の成立は、室町時代から江戸時代初期とのこと。
当時の四国犬は柴犬などと変わりません。
闘犬でも使われていましたが、桃太郎にお供したのは野良犬でしょう。
闘犬精神を叩きこまれた犬が、きびだんごなんかで懐柔されると思えない。
良く言っても、少しは使える「武闘家」「海賊」ってところです。
鬼に勝てる最強パーティー組んでみた
その時代でパーティーを組むなら「クマ・ヤマイヌ・ワシ」が最強だと思います。
ヒグマを仲間にしたいけど、舞台が本州なのでツキノワグマで。
ニホンオオカミは実体が不明で、剥製といわれるのがショボく見えるから、野犬的なヤマイヌを。
空軍としてオオワシ、最低でもクマタカくらいは味方にしたい。
他の候補として、突進力のイノシシ(攻城戦で使えそう)、猛毒使いのマムシ、最強の遊撃部隊スズメバチが個人的におススメです。
かなりの戦力になります。
そんな血なまぐさい家来を連れて、鬼ヶ島に乗り込む桃太郎。
平和交渉の余地のない、デスペラードな集団になるな。
絵本にするのは厳しいか……。
僕が一番気になっているのが、実は鬼。
鬼だから悪者という設定で、桃太郎一味が正当化されていますが、鬼が略奪したとか、村人が殺されたとか、そういうシーンは出てきません。
『さるかに合戦』でも『カチカチ山』でも、悪役の残忍性がしっかり描写され、最後ひどい目に遭うことで読者は共感できるのに。
絶対悪にされている「鬼」。
いったい何者なんでしょう?
桃太郎と鬼の関係
桃太郎伝説は、「吉備(岡山県)の土着勢力と大和朝廷の争い」を描いたと考えられています。
強大な大和軍(鬼)に抵抗する、ローカル国家の勇士(桃太郎)という構図です。
吉備の側から見れば、大和は鬼のような侵略者。
絶対悪でなければならない存在でしょう。
鬼の本拠地が「鬼ヶ島」であることから、海賊の可能性もあります。
瀬戸内海では昔から海賊が跋扈していました。
その討伐を任せられたのが桃太郎と、犬、猿、雉。
軍団長と精鋭の兵士だった。
それなら島に宝が集められていた説明がつきます。
桃太郎は単純な話なので、背景がまったく不明です。
話を聞くだけでは、何もしていない鬼をボコって、桃太郎が宝をブン盗ったようにも見える。
威(犬)を持って、盗り(鳥)、去る(猿)なのかもしれません。
吉備地方に桃太郎窃盗団のような集団がいて、侵略軍や悪徳な支配者層からも盗み、それを民衆が痛快に思った逸話が基とも考えられます。
たいていの昔話では、悪役も「やられる」というよりは「やりこめられる」ポジションです。
桃太郎のように武力で完全に制圧される童話は、あまり多くありません。
そこが教訓を含む寓話というより、実話臭いんですよね。
桃の謎、3匹の家来の意味、鬼の正体……。
探れば探るほど、奥の深い国民的物語なのです。
まとめ
桃太郎は誰もが知るお話。
あらすじも10秒くらいで語れる。
そのシンプルさが読みやすい反面、「なぜ?」「どうして?」も多い。
昔話を深読みするのも、心の汚れた大人になった証拠と思う。
でも、子供に読み聞かせたとき、「どうして犬、猿、雉なの?」「鬼はどんな悪いことをしたの?」と質問されたら、ちゃんと答えてあげるのが大人の役目だとも思うのです。
そのためには、自分なりの裏設定を作っておくことも大切。
いろいろ考えてみてはいかがでしょうか。
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