「海猿」といえば、近年は海難救助の保安士の愛称。
でも、年配の人は「おお、シーモンキーか!」と懐かしむかも。
昭和の頃、シーモンキーというペットがちょっと流行ったんです。
もちろん猿じゃありません。
むしろ、「なんでモンキー?」という、詐欺みたいな生物。
「水に卵をいれるだけで、あら不思議~」というもの。
昔、小学校の近くで、変なオッさんが売っていた、インチキ手品グッズみたいな記憶として、今でもネタ扱いされるようなペットです。
そのシーモンキー、現在も売っています。
ノスタルジー狙いもあるでしょうが、簡単で知育にもなるペットとして、新たに見直されている。
水槽で飼う猿?シーモンキー。
その正体や、飼い方のコツをまとめました。
どうして即席?シーモンキーとは?
「海の友だち・シーモンキー!」。
僕もこんなフレーズだけは聞いたことがあります。
ただ、出会ったことはありませんでした。
「いったいどんな生き物だろう?」と思っていました。
その正体を知ったのは、ずっと後のこと。
「なんだこりゃ!」と唖然としたことを覚えています。
シーモンキーの正体は?
シーモンキーとは「アルテミア」という節足動物。
商品名をとっつきやすい「シーモンキー」にしただけで、シーモンキーという生物はいません。
「いや、アルテミアがわかんねーよ」
……確かに。
熱帯魚の餌などで使う「ブラインシュリンプ」が、アルテミアの一種です。
ブラインシュリンプを改良したのがシーモンキー。
シュリンプといいつつ、「エビ」でもありません。
エビのようなプランクトンです。
オキアミみたいなものですね。
田んぼでカブトエビやホウネンエビというのを見たことはないでしょうか?
これもプランクトン。
プランクトンというと、ミジンコサイズと思われがちですが、普通に見える大きさの種もいるのです。
アルテミアもそれらの仲間で、2cmくらいもあるプランクトン。
シーモンキーも、見た目はホウネンエビとそっくり。
それらの生物は、乾燥に強い卵を産みます。
乾いた土地でも卵のまま、10年ほども耐えられる。
水を与えると孵化が始まります。
田んぼに水を入れると、湧くようにカブトエビなどが現れるのはそのせい。
この特性が「水を入れるだけで生まれるインスタント生物」と面白がられ、品種改良を加えられ、1957年にアメリカで商品化されたのがシーモンキーなのです。
「シーモンキー」の名前は1962年につけられました。
それ以前は「インスタントライフ」と呼ばれていました
復活したシーモンキー
乾燥した卵を、水に入れれば生まれるシーモンキー。
「魔法みたいで面白い」とちょっと受けた。
昭和40年代には、日本でもちらほら見られるようになります。
例えば、変なグッズの宝庫・通信販売。
雑誌の裏表紙広告で「服が透けて見えるサングラス」とか「モテモテマッチョになれる運動器具」などと共に、「不思議な即席生物シーモンキー」も売られました。
パッケージには、顔がおサルの可愛いイラスト付き。
子供心をくすぐったのです。
知育グッズとして、学習雑誌の付録にもなりました。
大ブームとはならないまでも、割と知られる存在だったのです。
ただ、実物のシーモンキーはエビのようなプランクトン。
泳ぐゲジゲジというか、ボウフラの化物というか、あまり可愛くない。
パッケージのイラストとあまりに違う。
一体どれだけの子供の夢を壊したことでしょう。
まあ、昭和の子供はこうやって「世間の闇」を知りながら、タフな大人へと成長したのですが。
シーモンキーは徐々に消えてゆきます。
可愛くない、貧乏臭い、インチキペット。
人気になる要素がありません。
時は流れ、現代は空前のペットブーム。
そんな風潮は、シーモンキーも復活させてしまったようです。
シーモンキーの育て方・楽しみ方
シーモンキーの魅力は……。
・簡単で、安価
・飼育に場所を取らない
・餌やり、水換え、掃除などの手間が楽
・基本的に長期飼育しない
「ペットは飼いたいけど、お金かけるのも、面倒臭いのもイヤ!」
そんなグウタラさんにも大助かり。
元々、シーモンキーは寿命が2~3ヶ月で、死んだら終わりの使い捨てペットなのです。
だから、飼育も敷居が低い。
すぐにも始めることができます。
シーモンキー飼育を始める
シーモンキーの飼育セットは、通販などで買うことができます。
2千円ほどで、「海水の素」と「卵」、「餌」に容器付き。
このお手頃価格は嬉しい!
ブラインシュリンプの卵も、ペットショップで売っているので、代用してもOK。
容器はお洒落なグラスでも、ペットボトルを加工したものでも、バケツでも問題ありません。
準備もとても簡単。
1.容器に水道水を入れる
2.海水の素で海水に変える
3.卵を入れる
4.数時間から一日で孵化する
5.たまにちょっぴり餌をあげる
「これなら誰にでも飼育できる!」
と言いたいですが、失敗する人も少なくありません。
まったく孵化しなかったり、孵化してもすぐ全滅しちゃったり。
簡単であるがゆえに、セット内容もお粗末だし、飼うほうもいい加減に扱いがち。
つまらない失敗を避けることが、上手に飼うコツでもあるんですね。
注意すべきは餌と水質
失敗にはいくつかパターンがあります。
まず、容器とシーモンキーの数。
飼育セットの容器は小さいのです。
そこに大量の卵を投入しても、密になって住みにくくなるだけ。
セットの容器で飼うなら、10個くらいで様子を見て、加減することです。
たくさん育てたいのなら、別に大きな水槽を用意しましょう。
水温は20℃以上、25~28℃前後ならBESTです。
夏なら水温を30℃以上にさせないこと。
蒸発も早くなるので、海水の塩分濃度(3%くらい)にも気をつけたい。
必要に応じてヒーター、エアポンプ、塩分濃度計も設置するといいです。
ろ過機は要りません
それから、餌。
シーモンキーはそれほど餌が要りません。
与えた餌を食べるのを見るのが、ペット生活の楽しみですが、多すぎても水を汚すだけ。
シーモンキーは所詮貧弱なプランクトン。
環境悪化ですぐ死んでしまいます。
「シー藻」という、シーモンキーの餌になる藻は便利です。
水も汚さず、餌やりの手間もない。
シーモンキーは植物プランクトンを食べるので、メダカ飼育にも使われるグリーンウォーターを作っておくのもいいでしょう。
グリーンウォーターは水道水を屋外に放置しておく方法や、クロレラ、液体肥料など薬品で作る方法があります。
シーモンキーの繁殖
シーモンキーは寿命が数ヶ月。
長く楽しむには、繁殖させる必要があります。
飼育が成功し、孵化してひと月もすれば、勝手に繁殖してくれる。
でも、子シーモンキーは親シーモンキーに食べられることも。
子シーモンキーを別容器に移さないとなりません。
小さい子シーモンキーだけ分別するのは大変ですが、スプーン状のもので掬い、選り分けてあげましょう。
ある程度大きくなれば、一緒にしても大丈夫。
こうして代替わりさせてゆくのが、シーモンキー飼育の面白さです。
こうして見ると、メダカ飼育くらいの手間はかかりますね。
それでも、改良種のシーモンキーは生命力も強く、ペット初心者にも始めやすいと思いますよ。
まとめ
シーモンキーは昭和のがっかりペットでした。
正体はアルテミアというプランクトン。
「海の友だちシーモンキー」なんて可愛げもロマンもない。
でも、お手軽であることは、むしろ今の時代には強みでしょう。
お金をかけず、簡単にペットを飼いたい人に超おススメです。
見ていると、泳ぎも優雅だし、妙な可愛さも感じる。
ライトアップすれば、美しくも見える。
小さい体で頑張って生きる姿も、きっと励みになると思います。
上手に育て、繁殖させられれば、喜びも大きいでしょうね。
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