ユニーク生物ハナアルキ!二度と見られぬ絶滅種『鼻行類』とは?

その他

昨今は“ヘンテコ生物”が大流行り。

「なんでそうなった?」という変な動物は今やスターです。

まあ、ゾウの鼻だって、キリンの首だって、
メジャーだから見慣れて普通だけど、かなりアホな進化ですよね。

そんな不思議生物の究極なのはハナアルキでしょう。

鼻で歩くという鼻行類の哺乳類です。

「そんな動物見たことない」ですよね。

動物園にもいないし、剥製もありません。

数枚の絵と、絵をもとにした模型があるくらいです。

幻の動物なんですよ!

「本当にそんなのがいるのか?」

心惹かれますよね。

ハナアルキの物語は、戦時の太平洋からスタートします。

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驚くべき鼻行類の発見

1961年。

一冊の本が発行されました。

『鼻行類の構造と生活』。

なんでも鼻行類という動物について書かれた書物らしい。

鼻行類???初めて聞く言葉です。

著者はハラルト・シュテュンプケとなっていますが、
その友人であるドイツの生物学者ゲロルフ・シュタイナーが、
シュテュンプケの記録をまとめて書いたというスタイルです。

その内容が驚愕でした。

本の内容によると――

1941年、太平洋。

大日本帝国と連合軍がにらみ合っていた頃。

日本軍の収容所にいたスウェーデン人が脱走します。

探検家のエイナール・ペテルスン=シェムトクヴィスト。

ややこしい名前がたくさん出てきますが、覚えなくてもいいですよ。

探検家は船で逃げるも、途中で難破。

その近くのハイアイアイ群島に流れ着くのです。

ハイアイアイ群島は約100㎢の範囲に散らばる島々で、当時まったく知られていない場所でした。

そこには数百人の人間も住んでいましたが、探検家が驚いたのは奇妙な動物。

鼻が特異な進化を遂げた動物群です。

その数は本によると14科189種!

孤島で独特の進化をした、あり得ない動物ばかり。

他に類を見ないハナアルキ(鼻歩き)――『鼻行類』の発見です。

どんな動物だったんでしょう。

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奇想天外!ハナアルキの種類

ハイアイアイ群島は環境も他とは違っていたようです。

ハナアルキもいろいろなヤツがいます。

代表的な種を挙げましょう。

・ナゾベーム

もっとも知られているネズミのような鼻行類。

鼻が4本のタコ足のように分かれており、その鼻を足にして逆立ちして移動する。

・トビハナアルキ

鼻軟骨が発達し、関節でL字に曲がる腕のような鼻でジャンプができる。

・ラッパハナアルキ

ラッパ型の鼻を水面に出して呼吸する水生のハナアルキ。

・モグラハナアルキ

鼻をドリルにして土の中を移動する。

・ハナモドキ属

鼻を花に擬態させた洒落のようなハナアルキ。昆虫をおびき寄せて食べる。

・ハナススリハナアルキ

長い鼻から垂らした鼻水で小魚を釣り上げて捕食。絶対人気出ない……

・ダンボハナアルキ

大きな耳を羽ばたかせて飛行ができるハナアルキ。

著作権大丈夫か

どいつもこいつも、あさっての方向に進化した動物ばかり。

こんな動物が知られていないのには事情があります。

核実験で鼻行類は全滅した!

この時代の太平洋は激戦区。

戦後になってもハナアルキの研究は進まず、その存在もほとんど知られなかった。

数人の学者がハイアイアイ群島に向かったものの、この頃の太平洋の孤島にはそう簡単にたどり着けません。

本の著者シュテュンプケもハイアイアイに向かった学者の一人でしたが、研究の半ばで行方知れず。

その記録をまとめて本にしたのがシュタイナーなのです。

もちろん学会は騒然。

鼻行類はまったく知られていない動物。

他の動物とも類似点がない。

ところが、発刊後もハナアルキは研究されませんでした。

なんとハイアイアイ群島が、1957年の核実験で消えてしまっていたんです。

この時代、アメリカの水爆実験が何度も太平洋で行われていました。

そのために起こった地殻変動でハイアイアイ群島は水没

鼻行類も運命を共に。

この不思議生物を二度と見ることはできなくなった……

こちらの動画がわかりやすいです。

核実験によって絶滅した、知られざる奇妙な生物群『鼻行類』

悲しい話ですね。

…………

「ちょっと待て。しんみり纏めちゃってるけど、話おかしくねーか!」

ドキッ、鋭い。

たしかに100km四方の群島が、戦闘機飛び交う太平洋に知られずにあるわけない。

核実験だって周辺調査などしてから行うでしょう。

ハナアルキの話も怪しくなってきました。

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ハナアルキの真実

実は鼻行類は全部嘘。

ハナアルキなんて動物も存在しません。

でも、詐欺とかデマでもないんですよ。

探検家や行方不明の学者は架空ですが、ドイツ人生物学者ゲロルフ・シュタイナーは実在します。

『鼻行類の構造と生活』はシュタイナーが書いたもの。

「絶海の孤島で、生物はどんな進化をするのか」という思考実験だったんです。

小動物は地面の虫などを食べますよね。

いつも鼻を下にしています。

それなら鼻に嗅覚と、移動手段も一緒にやらせたほうがいい。

鼻が特殊に進化するとしたら、その生物はどんな生態になるだろうか?

そうして考え出されたのが鼻行目14科189種。

これだけなら、ただの空想動物で終わっていたでしょう。

シュタイナーという人は相当いたずら者だったのかもしれません。

そこに日本の収容所とか、スウェーデンの探検家とか、アメリカの核実験とか、それっぽいストーリーを加えてドキュメンタリー仕立てにしてしまった。

本でも「嘘です」とは一言も言っていません。

しかも、ハナアルキ類の描写が緻密で膨大。

化石調査(嘘)から進化体系を組み立て(嘘)、各種の骨格や内臓(嘘)、細かく分類(もちろん嘘)しています。

創作物をリアルにする作り込みがハンパない。

漫画原作の実写映画にも見習ってほしい徹底ぶりです

専門家すらネタバレするまで「鼻行類はいたかも」と考えていた。

それほどリアルな思考実験だったんです。

鼻行類を「大嘘、インチキ」と非難する学者もいません。

むしろ称賛し、大マジメに(いや悪ふざけなのか)著名な学者が本を「事実」と宣伝、推薦までしちゃう始末。

完璧な空想だったんですよ。

こうして鼻行類は「かつて実在した生物」と独り歩きしてしまった。

デマだとしても被害はないし、楽しいですから。

馬鹿げていながら、徹底した世界観の構築が見事な『鼻行類の構造と生活』は、むろん日本語版も販売しています。

専門書風なのでちょっと難しいんですが。

トンデモ生物ハナアルキにどっぷりハマりたい方は一読をおススメします。

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まとめ

あまりにもユニークな鼻行類。

その背景となるストーリーもドラマチック。

ついつい好奇心をくすぐられますが、実は空想の産物でした。

本の出たのが現代なら、「こんなのいるわけない」とネットで笑われるだけかもしれません。

未知のハイアイアイ群島も、グーグルアースに否定されちゃう。

そういう意味でも、二度と見られない動物でしょう。

しかし、ハナアルキのような生物が現れた可能性もあったのです。

空想生物学の傑作といえますね。

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