北海道で、巨大なヒグマが暴れているようです。
その名は『OSO18(オソじゅうはち)』。
コードネームで呼ばれるほどの大物クマ。
怖いのは、このOSO18が「現在進行形で動いている」こと。
過去に被害を出し、討伐されたクマではないのです。
つまり、終わっていないヒグマの獣害事件。
現在(2022年3月)はまだ人への攻撃はありません。
(※2023年7月加害熊は駆除)
しかし、その凶暴性は知られており、いつ爪牙が人に向けられるかわからない。
駆除に動いてもいるのですが、成功しない。
凶暴なうえ、巧みに逃げ回る知恵もあるようなのです。
ある意味、進化したニュータイプのヒグマといってもいい。
怖ろしいヒグマ「OSO18」。
そいつはどんなクマなのでしょう?
ヒグマの常識を覆すOSO18は、なぜそんな進化を遂げたのかも考えます。
OSO18の被害
2019年の7月。
北海道・釧路の北に位置する標茶(しべちゃ)町の牧場で、乳牛が無残な姿で発見されました。
状況から見て、ヒグマの犯行。
数日後、標茶の南の厚岸(あっけし)町の牧場でも、牛の惨殺死体が見つかります。
標茶から厚岸は酪農業が盛んな地。
大きな牧場も多く、北海道らしい牧歌的な光景が随所に見られる。
そこで起こったヒグマに因る「連続牛殺し」の事件。
財産である牛を守らなければならないのですが……。
OSO18と呼ばれる理由
畜牛が襲われる被害は続きます。
当然、牧場や自治体も防備・対策をしたのですが、凶行は止まりません。
というのも、その加害熊は従来のヒグマの常識が通用しなかったのです。
「こいつはただのヒグマじゃない」
そんな恐怖に地域は苛まれることになります。
加害熊の足跡は横幅が18cmありました。
15cmもあればかなり大きいヒグマですから、それ以上です。
そこから大きさを推測すると――
立ち上がれば3m~4m。
体重は350kg~400kg超えもあるという巨大ヒグマ。
普通のヒグマは最大でも体長約2.2m、体重200~250kgくらい。
OSO18の実寸は不明です
日本最大の獣害とされる「三毛別ヒグマ事件(死者7人負傷者3人)」の加害熊が、身長2.7m、体重350kgと伝えられていますが、それよりデカい。
「とんでもない大クマだ!」と震える住民。
最初の被害牧場のある地名「オソツベツ」と、
足のサイズから「OSO18」と呼ばれます。
牛の背骨をへし折る怪力!
大きいだけにパワーも強い。
200kgもある牛の背骨が折られていた事例もあります。
だいたい、ヒグマは牛を襲うことは多くありません。
牛だって体格はクマに劣らない。
牛は人間の近くにいることもあり、クマも手を出しにくい相手なのです。
しかし、OSO18はあちこちで牛を襲っています。
最初の2019年から、2021年の秋までの3年に、襲われた牛は57頭。
そのうち26頭が殺されました。
その殺し方がまた非情です。
利口で残酷!その行動は予測不能!
OSO18に仕留められた牛は、内臓を食われています。
ただ、ほとんど食べられてはいない。
専門家も「食うためではなく、まるで遊びで狩っているようだ」と印象を強めています。
食べる目的もないのに、牛殺しを楽しんでいるのなら、相当知恵があると考えられるでしょう。
実際、人間以外でも霊長類やイルカ、シャチなど、知能が高い動物に娯楽殺人?が見られます。
OSO18は獲物に執着心もありません。
普通、ヒグマは一度所有した物を手放しません。
昭和45年に起こった「福岡大学ワンゲル部」の事件は、ヒグマに奪われたリュックサックを取り返し、ずっと持っていたことで、ヒグマに執拗に追われました。
獲物も同じで、牛を「俺だけの物」として、何度もその場所に戻って食い、奪われぬよう近くに居座るのです。
だから、食いかけの餌は囮にもなる。
そこに加害熊が戻る可能性が高く、待ち伏せできるわけです。
ところが、OSO18は戻ってきません。
牛に興味がないのか、人の待ち伏せに気づいているのか。
ある牧場では、牛が襲われ10分ほど目を離した隙に、近くにいた別な子牛が連れ去られたそうです。
OSO18も人間を深く観察している。
そんな狡猾なヒグマは過去に例がありません。
予測不能のOSO18は、まだ捕獲も駆除もされていません。
2021年秋までは活動していました。
ほとんど目撃もなく、大胆でありながら慎重。
人の裏をかく知恵もあり、3年も逃げ切っています。
監視カメラやドローンが使える現代に、尻尾も掴ませないなんて、とてもヒグマにできる芸当じゃないですよ。
しかし、OSO18は必然的に現れた進化形なのかもしれません。
OSO18はどうして誕生したのか?
本来、人とクマは住み分けされています。
クマだって人間は怖い。
できれば近づきたくない。
それでも被害があれば、その距離が接近し始めている現実は否定できないのです。
牧場の変化がクマも変えた?
一時期、乳製品が足りないと話題になりました。
バターや牛乳がなくて、ケーキ屋さんが困るとかいうやつ。
僕も酒のツマミのチーズを控えていました。
それを受けて、「牧場増やそう」と政府も動いた。
おかげで、牧場は増加・拡大したのです。
まあ、そのせいでコロナ禍で
今度は「牛乳が余って」と
オチがつくんですが……
栄養価の高い牧草「デントコーン」の面積も広がりました。
このデントコーンはクマも好物。
結果的にクマを呼び寄せることになる。
栄養があるならクマの巨大化も伴います。
もちろん、住宅地もクマのテリトリーへ広がっているでしょう。
こうした状況で、人間社会とクマとの距離も縮んだんですね。
当然、ヒグマも人を見ることが増える。
OSO18も、そういう環境で学習したヒグマだと思うのです。
とすれば、他のクマだって知恵をつけると考えていい。
第2、第3のOSO18が育っているのではないでしょうか。
OSO18は一頭で終わらない?
OSO18は10歳くらいと見られています。
もう繁殖できる年齢。
野生のヒグマの寿命は20年。
OSO18の2世、3世も心配な点です。
OSO18に教育されたヒグマ。
知識を共有し合い、予測不能のヒグマが増えるとしたら。
現在、標茶と厚岸ではOSO18一頭のために、2000万円ほどの損害が出ています。
同タイプのクマが増えれば、それだけ害も増える。
いつかは人にも害は及ぶでしょう。
知恵のあるOSO18は「人間の怖さ」を知っているので、人を襲うことはない気もします。
でも、知恵のあるクマが増えれば、出会い頭の事故だってあり得ます。
そのクマが知的で、忍者のように隠れ、残虐性を持つなんて……。
知能犯のサイコパスが何人もうろついているようなものです。
人はこのまま翻弄させられ続けるのか……。
人とクマの戦いは、新たな局面に突入しているのかもしれません。
まとめ
標茶・厚岸で牛殺しを繰り返すOSO18。
凶暴性があり、牛殺しを楽しみ、小狡く逃げ回る。
暴虐だけのヒグマじゃありません。
そんなクマが現れたのは、やはり人の問題もあると思えます。
クマは頭が良く、学習能力は高い。
人の行動を観察しやすくなり、知恵をつけたのでしょう。
そして、それを見習うクマもいるはずです。
OSO18の知恵が、多くのクマに共有される前に、なんとか片づいてもらいたいものです。
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