カモノハシ:哺乳類なのにくちばしや卵生の理由とは?

カモノハシの画像 陸生動物

哺乳類なのに卵を産み、くちばしのあるカモノハシ。

ミステリアスというよりも、ストレンジといったほうが合う動物ですね。

オーストラリアの一部にしかいないローカルアニマルでありながら、知名度がやたら高いのはその「変な」姿が理由なのでしょう。

18世紀末、カモノハシの姿が初めてヨーロッパに伝わったときも

「こんな生き物がいるもんか」

「カモとビーバーをくっつけた作り物だ」

と散々バカにされたそうです。

まあ、僕らだってカモノハシを知らなかったら絶対フェイクだろうと思う。

その見た目と同様に、生態までが哺乳類なんだか鳥類なんだか爬虫類なんだかはっきりしない

「お前どうしたいんだ?」と問いたい進路の定まらない問題児でもある。

不思議生物の筆頭格カモノハシについて解説してゆきますよ。

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カモノハシはくちばしがないと生きてけない!?

どこか正体不明に思えるカモノハシですが、生態はわりと判明しています。

大きさは60cm前後で、丸く平べったい胴体に、水かきのある四肢

顔には大きなくちばし、後ろにはオールのような尾があります。

「カモとビーバーがくっついた」という誤解は的確でもありますね。

なんといっても、最大の特徴はくちばしでしょう。

和名のカモノハシも「カモのくちばし」の意味ですから、「本名がくちばし」みたいなもんです。

このネーミングにはいい加減さを感じぬにはいられません。

好感度のセンサー

このくちばしはゴムのようで、カモノハシが間抜けに見える原因でもあるのですが、非常に鋭敏な器官です。

4万個のセンサーで微弱な電磁波を感知することができます。

つまり、生体電流を感じるわけですね。

サメの頭部にあるロレンチーニ器官のようなものでしょう。

この能力によって、カモノハシは水中では目も耳も閉じているのに、獲物や敵の存在を知ることが可能

もちろん水が濁っていても、真っ暗な夜でも、問題なく採餌ができる。

「本名くちばし」は伊達じゃない!

カモノハシは歯がない

このくちばしには歯がありません

魚、昆虫、甲殻類を食べる肉食なのに、歯がないことが長年謎だったのですが、最近の研究で「くちばしの神経が発達しすぎたことで、歯の生える余裕がなくなったのではないか」と考えられています。

なんだか得心のいかない等価交換です。

ほとんどを水中で過ごすカモノハシにとって、感度のいいくちばしは魅力的な部位でしょう。

だからといって、その代償に歯を失うのは肉食獣として本末転倒な気がする。

そもそも、水中生活のくせに「目や耳に水入れたくないから閉じます」という根性はいかがなものか?

しかし、考えてみれば卵から産まれる哺乳類なわけですし、生まれたときから方向性が狂っているのだから、くちばしの事情は些細なことなのかもしれません。

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卵生をする単孔目という超希少種

卵を産む哺乳類はカモノハシとハリモグラだけです。

この2種は「単孔目」に属する動物。

単孔目とは、糞尿の排出と生殖をひとつの排出腔で行うという荒業の哺乳類のことです。

さすがにこんな荒業をする生き物は、永い地球の生物史でもたった4種しか現れていないという超希少種。

他の2種コリコドン、ステロポドンは白亜紀にいた絶滅種です

このことからもカモノハシがかなりオールドファッションな動物であることがわかりますよね。

実際カモノハシと、1300万年前にいた先祖のオブドゥロドンは見た目が変わらず、ほとんど変化していない「生きた化石」です。

そして、単孔は哺乳類以外の爬虫類や鳥類などの特性でもある。

カモノハシは爬虫類から進化した、単孔を引き継いだ初期の哺乳類なので、ハリモグラとともに卵生も残しているのです。

だったら、くちばしもあるし、鳥になるんじゃないのって思いますよね。

一時期は鳥類に分類されたこともありました。

でも、体の構造は哺乳類だし、乳腺から染み出た母乳を子供に舐めさせる形で変則の授乳行為もします。

カモノハシは生まれたときからくちばしがあるので、吸うよりは舐めるほうが楽っていうのもあります。

こんな原始的な動物が生き残っているというのが、オーストラリアの凄さですよね。

変な動物の宝庫でもあるオーストラリアは、真っ先に大陸から切り離されて孤立したおかげで、他大陸で滅んでしまった生物が生き残り、クラシックな動物たちの楽園になりえたのです。

カモノハシはその中でもかなりの特例。

数少ない「毒を持つ哺乳類」であることも不思議な特性のひとつでしょう。

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哺乳類最強の毒使いだった‼

渓流の野生カモノハシ【AAK Nature Watch】

毒といえばヘビやフグ、昆虫がよく武器にしています。

哺乳類ではモグラ、トガリネズミなどの一部と、スローロリス、そしてカモノハシくらいです。

どれも下等なタイプの哺乳類です。

毒を精製して利用するというのは、毒持ち生物にとっても大仕事になりますから、高等な哺乳類であれば他にも楽な狩りや防衛メソッドを確立しており、あえて毒使いになる必要がないのでしょう。

化石からも下等哺乳類に毒持ちが少なくないことがわかっています。

高等哺乳類になるにつれ、有毒哺乳類は淘汰されていったらしい。

猛毒で仲間同士殺し合うこともある?

カモノハシの毒はオスが持っています。

後肢の蹴爪が危険な毒手なのです。

「あんな間の抜けたカモノハシなら毒も大したことないでしょ」

なんて油断はできません。

カモノハシの毒は犬一頭くらいならあの世に送るほどの強さ。

人間も安易に近づけば、この毒の蹴爪に反撃されます。

これがすごい激痛なんだとか。

人間の死亡事例はありませんが、その痛みは鎮痛剤でも抑えられず、数週間から数ヶ月も回復しないといわれます。

メスの蹴爪は大人になるとなくなるので安心

カモノハシのオス同士は、その毒爪で戦うことも多く、死亡率も高いんだそうです

こんな強力な毒がカモノハシに本当に必要なのかわかりません。

毒も結局は、爬虫類などの名残りなんでしょうが、カモノハシにはあまり似合いの武器とはやっぱり思えないんですけど。

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まとめ

哺乳類なのに哺乳類らしくないカモノハシは、オリジナリティに富んだ生き物です。

飼育方法は確立されておらず、動物園でも見られません。

オーストラリアのいくつかの施設で見られるくらい。

野生のカモノハシもなかなか見られないので、観賞においても希少種になりますね。

こんな不思議な生物には末永く生き続けてほしいですが、生息範囲は類に漏れず狭くなっています。

きちんと保護されて、繁殖が進むことを願わずにはいられませんね。

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