ヒトを含め、自然界に繁栄する哺乳類。
だけど、大昔は惨めな存在でした。
小さなネズミ程度で、恐竜時代にはビクビク怯えて暮らしていた。
恐竜が滅んでくれたので「運よく」天下を取れた。
恐竜にまったく歯が立たなかった哺乳類。
そんなふうに思っていませんか?
今回、紹介する「レペノマムス」。
1億年前の恐竜時代にいた哺乳類です。
このレペノマムス、恐竜から隠れて生きていた哺乳類のイメージとは違います。
なんと恐竜を食っていたのです。
弱肉強食の超圧倒的支配層であった恐竜に立ち向かった、僕らのご先祖様といえるでしょう。
「哺乳類なめんなよ」の誇りを見せたレペノマムス。
でも、実像はよくわかっていないのです。
化石からわかったレペノマムス
古生物の姿や生態は化石が教えてくれます。
化石があって初めて、数億年前の風景を思い描くことができる。
僕らが映画、小説で見る恐竜も、化石から類推されたイメージなのです。
巨大恐竜がのし歩く下で、卑屈にうごめくネズミ。
まさに強者と弱者の構図です。
ところが、中国で見つかった「ある化石」は、そのイメージとは違っていました。
哺乳類レペノマムスの化石。
その腹部に、プシッタコサウルス(恐竜)の幼体の骨もあった。
レペノマムスの胃のあった部分です。
ここから「レペノマムスがプシッタコサウルスを食った」とわかる。
「哺乳類は恐竜に適わなかった」の従来のイメージの逆です。
しかし、レペノマムスとかプシッタコサウルスとか、キャスティングの無名度は否めない。
こいつら、何者なんでしょう?
肉食哺乳類レペノマムスとは?
今から約1億2000万年前。
恐竜時代(中生代)は「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」とあって、その白亜紀の最初の頃です。
有名なティラノサウルスがまだ出てきていないほどの昔。
現在の中国と、北アメリカに、レペノマムスはいました。
姿はアナグマやラーテルみたいな感じ。
やや長めの寸胴な胴体と、短い四肢。
大きさは40~80cm。
たいしたことはなさそうですが、この時代の哺乳類では最大だったんです。
アメリカのレペノマムスのほうが大型でした
哺乳類の歴史は複雑です。
最初は両生類から単弓類が生まれ、単弓類から獣弓類が云々……とややこしく進み、どこに線を引くかわかりにくいのですが、2億~2億5000万年の歴史と思えばいいでしょう。
誕生自体は恐竜とほぼ同時期です。
しかし、恐竜が強すぎて、哺乳類なんかアウトオブ眼中の時代。(表現が古い)
大型恐竜の足元を這いつくばる毛玉みたいなもの。
とはいえ、進化しなかったわけでもありません。
元々、恐竜よりも性能は上ですから。
現代の昆虫のように、ちっぽけな存在でありながら、繁栄はしているというポジション。
そんな白亜紀に現れたのがレペノマムスなのです。
レペノマムスは2種いたようです。
小型の「レペノマムス・ロブストゥス」。
大型の「レペノマムス・ギガンティクス」。
小さいロブストゥスでもネコくらいの大きさなので、ネズミサイズの哺乳類とは比べるまでもない。
ギガンティクスとなると、ちょっとデカい犬並みです。
化石からも、相当の咬合力があったことも確か。
つまり、けっこう大きな肉食哺乳類だった。
件の化石でも、プシッタコサウルスを骨ごと食ったことは明白です。
プシッタコサウルスについて
食べられた恐竜プシッタコサウルス。
こちらはUSJのアトラクションにも出てくるらしいので、そこまで無名じゃないかもしれません。
名前もなんか覚えやすい
体長は1~2m。
オウムのような嘴が特徴。
二足歩行する草食恐竜です。
プシッタコサウルスは状態の良い化石が多い。
尾の部分に羽毛があったこと、皮膚の感じなども判明しており、実像に迫りやすい恐竜のひとつ。
角竜(トリケラトプスなど)の祖先に当たると考えられています。
あまり凶暴ではない、小さい恐竜らしい。
レペノマムスでも、なんとか手を出せるレベルといえる。
でも、積極的に襲っていたかは疑問でしょう。
「恐竜を捕食」は疑わしい!
化石から見つかったのは、幼体でした。
大きさは20cmにも満たない。
生後間もないプシッタコサウルスです。
大人のプシッタコサウルスは1m以上で、レペノマムスはせいぜい80cmなので、襲撃することはほぼ考えられません。
プシッタコサウルスは家族で群れていたようです。
生まれたての幼体を襲うことも難しかったと思うのです。
ここで、両者の関係を考えてみましょう。
・レペノマムスは獰猛な肉食獣だった
・恐竜も食べていた
・しかし、襲ったとしても、小さい稚恐竜か、弱り切った老恐竜
・襲うことはなく、死んだ個体を食べていただけかもしれない
このくらいだったんじゃないでしょうか。
恐竜を食べていたことで注目された哺乳類レペノマムス。
恐竜と渡り合っていたとは言いにくい。
体が小さい時分は、怖い肉食動物だったかもしれません。
でも、成長してしまえば、たいした相手ではない。
恐竜に怯える哺乳類に過ぎなかった。
まあ、“一矢報いた“とはいえる……のかな。
この後6000万年もの長い時間。
恐竜絶滅まで、哺乳類の不遇は続くのです。
まとめ
中生代の哺乳類は惨めな存在。
小さく、弱く、生まれついての敗者といったところ。
恐竜が強すぎたともいえますが。
その中で、レペノマムスは大型化しました。
1m足らずとはいえ、なかなかのチャレンジです。
大きくなれば、それだけ恐竜の餌食になりやすいのに。
哺乳類のちっぽけな抵抗?
いや、恐竜時代に生きてゆくための前向きな挑戦と思いたい。
「がんばったで賞」くらいはあげてもいいですよね。
コメント