【ヒグマ事件簿】「弟子屈事件」人里でも起こる猛獣飼育の死角!

ヒグマの画像 陸生動物

猛獣の「ヒグマ」。

日本で人間を一撃で仕留められそうな動物といえば、まずヒグマ。

数々の事件を起こしています。

そのうちの一つ「弟子屈(てしかが)事件」

小さい子が犠牲になりました。

この事件。

人災だと言われます。

ヒグマ事件の多くは、人間側にも幾分非があるものですが、弟子屈の事件は特に人災の傾向が強いのです。

なぜなら……。

加害熊は飼育されていた!

つまり、ペットだったからです。

「ヒグマをペットにできるの?」

疑問に思いますよね。

事件当時はできたのです。

後の法改正にも影響を与えたであろう、弟子屈事件を今回は解説します。

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飼育されたヒグマの2つの獣害事件

弟子屈事件。

別名を「土産物店飼育ヒグマ男児殺害事件」と言います。

必要な情報が全部入っているから、あらすじがわかりますね。

もう少し詳しく事件を語りましょう。

観光地で5歳児が襲われた!

北海道の東部。

弟子屈町は北半分が阿寒摩周国立公園の一部に当たり、昔から観光客も多い。

絶景の屈斜路湖、摩周湖を擁しています。

昭和44年(1969年)9月15日。

屈斜路湖近くの土産店で事件が起こります。

その土産店では、2頭のヒグマを飼っていました。

もちろん、檻に入れて。

そこに釧路から5歳の男児が遊びに来ます。

乗ってきた父親の車が故障。

父親が修理している間、知人に連れられ時間を潰していました。

そこに檻に入ったヒグマがいた。

男の子は興味津々。

ヒグマに夢中な子供を見て、知人も「しばらくそこにいるな」と安心した。

目を離す。

その隙に、男児は柵を超え、檻に入ってしまった。

飼われているクマです。

近所のイヌをなでなでするような気分だったのかもしれない。

そして襲われました。

腹部に咬みつかれ、振り回された。

近くの人が気づいて、クマを追い払う。

なんとか男児を助け出し、病院へ。

しかし、1時間後には死亡してしまったのです。

この時、傷は腹から骨盤に達していたそうです

店の主人(飼い主)も犠牲に!

この事件には後日談があります。

男児の事件から12年後の昭和56年(1981年)

土産店ではまだヒグマを飼っていました。

成獣3頭と、子グマ4頭。

12年前より増えていますね。

死亡事故があっても、飼育をやめず、増やしてまでいるのは驚きですが、その店の店主が飼っていたヒグマに襲われ、亡くなったのです。

店主の長男が猟友会に頼んで、クマを射殺。

店主は後頭部と手足を咬まれていました。

季節は6月。

繁殖期で、クマの気が立っていたのが理由と考えられています。

皮肉というか、因果応報というか……。

とにかく、この獣害事件。

ポイントはやはり「飼育クマ」による加害というところ。

クマのいる山に行って襲われたのではない。

人里で、飼育されていたクマに、襲われた。

構図としては、飼い犬に咬まれたと同じ。

それが殺傷能力の高いヒグマだっただけです。

そんな猛獣が人の集まる場所で飼われていた。

なぜ、そんなことが行われていたのでしょう?

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ヒグマ飼育の現状はどうなっている?

ヒグマの画像

ヒグマって飼えるものなのか?

そう思う人もいるでしょう。

ヒグマの飼育は「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」で禁じられています。

「動物を可愛がりましょう」という法律と思われがちですが、愛護とともに「飼い主は動物をしっかり管理しろ」と命じている法律です。

この法で、危険な動物、生態系に影響を及ぼす動物は原則飼育禁止。

動物園、研究所などでは許可を取って飼えます

ヒグマだけでなくクマ類全般。

むろん、ライオンやトラやワニといった猛獣も飼えない。

ただ、昔は飼えたのです。

猛獣飼育は簡単だった?

事件当時。

ヒグマも知事の許可を得れば素人でも飼えました。

当然、檻など管理体制は必要です。

しかし、昭和のこと。

一言で言えば「ゆるかった」。

「動物愛護法」自体、現在でもそこまで厳しく取り締まっていると言えない。

アメリカザリガニやミドリガメを捨ててはいけない。

これも「動物愛護法」の禁止事例です。

ニュースでも報じるので、よく知られていると思う。

でも、きちんと守られているかは疑問。

実際にカメを捨てて、罪に問われた人とか、見たことありますか?

ほとんど性善説に頼っている。

そんな法律なんですよ。

土産店でも柵や檻は設けていました。

しかし、安全性に問題があると、役場や警察から勧告されていた。

現に5歳児が入り込める隙があった。

檻といっても、DIYに毛の生えた程度だったのか。

それでも改善されぬまま、放置。

その辺も「なぁなぁ」だったわけです。

その結果が、男児の死亡事故となった。

「人災」であると言わざるを得ません。

動物愛護法で禁じられたが……

ヒグマを飼う。

これは昔、北海道でわりとあったんです。

ヒグマは言わば「北海道名物」。

観光地、土産店などで、客を呼び込む「看板クマ」みたいに利用された。

僕も子供の頃、見たことがあります。

子グマが檻に入って、見世物のようになっていました。

ヒグマは駆除されることもある。

親グマを撃てば、子グマは生きてゆけない。

とは言え、子グマまで撃つのはさすがに気の毒と思う。

猟師さんも人間ですからね。

そこで、子グマを捕まえて売る。

客寄せに欲しがる店も少なくない。

需要と供給が成り立っていた。

しかし、2020年6月から猛獣の飼育は禁止。

弟子屈事件から50年も経っています。

その間にも、飼育されている猛獣の被害事件がいくつかありました。

その多くは、やはり人災の色が濃い。

「やっと政府も腰を上げた」ってことか。

素人が猛獣を飼うことは、なかなか無理があることなのでしょう。

愛玩動物に関しては、飼育者も多く、思い入れも強い。

そのため、法の強要もしにくかった側面もあると思います。

それでも、人命が失われてはいけない。

「飼い主の自己責任」という丸投げでは、もう済まないのです。

人と動物が共存してゆくためには?

ヒグマなどの猛獣飼育が、すべて悪とも言えません。

例えば、ヒグマを見せるクマ牧場。

ヒグマの調査・研究に大きく貢献しています。

人とクマの共存のためには、研究が欠かせないのです。

そのためには飼育して、よく知ること。

もちろん、大衆の「クマ意識」の向上も期待できます。

時には秋田県・八幡平のクマ牧場のような悲劇もある。

詳細は省きますが、二人の飼育員が犠牲になりました

その事件も、施設の管理、行政指導の怠慢が原因。

弟子屈事件の教訓が活かされてなかった。

そういった事例から、動物愛護法も強化されたのでしょう。

それでも、まだ法自体に強制力が足りない部分がある。

こっそり危険生物を飼う輩もいます。

同様の事故が起きぬよう、猛獣はもちろん、ペットを飼育する場合は、飼い主は管理責任の意識を強く持ってもらいたいものです。

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まとめ

北海道・弟子屈町で起こった「土産物店飼育ヒグマ男児殺害事件」。

飼われているクマの獣害。

身近に潜む危険といえます。

しかし、人のテリトリーにも猛獣がいることはある。

隣人が怖い動物を飼っていたら不安ですよね。

特に子供はリスク回避力に劣るし。

平和的な動物番組や動画が多い昨今、猛獣に対する恐怖も薄く見えます。

一応、動物愛護法はある。

でも、現実的にガバの多い法なのは否めません。

動物の管理者は責任を持つ。

ありきたりですが、現状ではそう願うしかありません。

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