楽園実験「UNIVERSE25」は人類滅亡のシナリオなのか?

マウスの画像 陸生動物

「人類もいつかは滅ぶ」。

その通りだと思います。

核戦争か、感染症か、隕石の衝突か……。

そのシナリオは多く提唱されています。

「このままでは世界は~」と、メディアもやたら不安を煽る。

だけど、実感はあまりないんですよね~。

そうした問題や危機が、身近に感じられないからかもしれません。

今回は「UNIVERSE 25」のお話をします。

マウスを使った実験です。

まず、ネズミの楽園を作る。

そこでネズミがどう変化するかを見るのです。

楽園なら大繁殖するはず……。

でも、結果は絶滅した。

この実験の怖いところ。

それは滅亡への過程が、今の人間社会に似ているからです。

「実は今こそ、人類滅亡の途中なのでは?」

そう思わずにはいられません。

僕らはもう、滅びの道を歩いているのかもしれません。

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天国から地獄?恐怖の実験「UNIVERSE25」!

「UNIVERSE25」は「ネズミの楽園実験」とも呼ばれます。

エサに困らず、敵もいない。

そんなエデンみたいな楽園で、生き物はどうなるのか?

ネズミを使ってやってみたのです。

考案者は動物行動学者のジョン・バンパス・カルフーン

1968~72年に行われました。

今から半世紀以上前のことです。

楽園、そして繁殖

カルフーンが用意したのは――。

2.7m四方の部屋。

壁の高さは1.4mの空間です。

「四畳半」の広さだね。

そこにトンネルと呼ばれる溝を走らせる。

トンネルを通って、ネズミはどこへ行くのも可能。

食料・水はじゅうぶんに与える。

気温は適温、掃除もするので衛生面も心配ない。

巣箱も完備され、住居環境はGOOD。

隠れる場所や遊び場も多数。

むろん、生存を脅かす敵もいない。

まさに「ネズミのための国」。

「ネズミーランド」ですね。

おいおい、大丈夫か?

そんな空間に放たれたのが、4組のカップルネズミ。

この8匹が、楽園のアダムとイブってわけ。

快適すぎる世界に、最初は戸惑う8匹。

しかし、慣れてくると生活は安定。

子作りも始め、楽園の人口?は増えてゆくのです。

繁殖は頭打ち?滅亡に進む?

そこには計算上、3800匹以上のネズミが住めるはずでした。

約1年で人口は600匹を突破。

さすが「ネズミ算」。

この時期は「フェーズB(繁殖期)」と呼ばれています。

この辺から、増加率がやや鈍ります。

開始から500日ほどの数は約2000匹。

増えてはいますが、増加率はほぼ半減です。

これが「フェーズC(停滞期)」

さらに、そこから人口は減り続けます。

実験開始から1500日が経とうとしていた頃――。

楽園のネズミは100匹を割るまで激減。

「フェーズD(滅亡期)」で、事実上の全滅。

カルフーンはここで実験を中止しました。

ネズミーランドは、4年足らずで終わってしまった。

なぜ、こんな事態になったのか?

食料、住処に困らず、敵もいないのに。

理由は「ネズミの変化」。

フェーズCになって、ネズミが異常行動を見せ始めていたのです。

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格差が拡大!無欲ネズミの誕生!

フェーズCで何があったのでしょう?

ネズミ社会に格差が生まれたのです。

豊富な餌を独占する勝ち組が登場。

当然、同時に餌に困る負け組ができた。

「貴族と貧民」のように集団が分かれたのです。

楽園におけるヒエラルキーの形成

楽園で悠々自適に暮らす勝ち組ネズミ。

そうなると、勝ち組にへつらう子分ネズミも出てきます。

こいつらが野放図になり、好き勝手やり始める。

弱い者は集まる。

負け組ネズミは集団を形成。

そこは貧民街のように、ストレスの絶えないグループ。

やはり、そこのネズミも狂暴化した。

世の中が乱れれば、被害に遭うのは「女」「子ども」が常。

生まれた子ネズミが殺されることもあった。

メスのネズミも防衛強化が必要になる。

自らを、産んだ子を、守らなきゃならないし。

そして、これも狂暴になるしかない。

その凶暴さが、子ネズミに向けられることもありました。

育児のできないメスも増えます。

カルフーンはこうした「過密状態の異常行動」を
「ビヘイビア・シンク(Behavior Sink/行動沈下)」
と呼びました。

こんな乱世で、またニュータイプのネズミが現れます。

「無気力」というやつです。

1972 UNIVERSE-25 MOUSE UTOPIA THE END OF HUMANITY EXPERIMENT

蔓延する「無欲なネズミ」

「こんなひどい世の中で、頑張るだけ無駄無駄」

こういうキャラも一定数いるものです。

引き籠り、やる気がない。

「ヒッキーマウス」ですね。

あまりD社に喧嘩売るな……

ヒッキーマウスは性欲もない。

いや、他者と交流さえしない。

餌はそこそこあるし、だったら協力も協調も必要ない。

欲を持つだけバカバカしい。

ある意味、悟ってしまったネズミです。

「ビューティフル・ワン」と名付けられました。

孤高な生き方に見えたんでしょうか?

なんにでも「やれやれ……」と斜に構えている無気力キャラ。

それが良く見えるのは、漫画くらいだと思うんですが。

ともかく、集団の繁殖力は低下。

出生率<死亡率、数は減る一方。

そして、絶滅へ……です。

この実験は25回行われ、最後はどれも同じ。

実験が今もよく知られているのは、
ネズミ社会が現代の人間社会に通じるからです。

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実験が示す人類の未来とは?

現代は便利な時代。

「楽園」と言っていいかもしれません。

しかし、ストレス社会。

直情的に文句をSNSでぶちまけるのが当たり前。

時々起こる育児放棄(ネグレスト)。

ジェンダーの線引きが曖昧。

「結婚・恋愛には興味なし」の若者の増加。

UNIVERSE25は、人類の未来を示唆しているように見えませんか?

滅亡の画像

人類滅亡のシナリオにならない!

この実験の結果を持って、

「人間も同じように滅ぶのだ!」

「その証拠に、ネズミのビヘイビア・シンクと
同質の人間が増えているではないか!」

と、言う人もいます。

これはその実感があるだけに、的を射ている気もする。

でも、「ネズミと一緒にされてたまるか!」とも思うのです。

本来、動物は「自分ファースト」です。

人間ほどの「共有」「共感」意識はありません。

ネズミたちにその意識があったとしたら――。

限界はあるにしても、ネズミーランドは楽園化できたのではないか?

だって、食料も住処もじゅうぶん提供されているんですよ。

人間なら「公平に」と考えたでしょう。

多少の格差はあっても、みんなが最低限で暮らせる。

一人ひとりがちょっとだけ「我慢」や「遠慮」をするだけで、プチ楽園くらいにはなる。

人間ならきっと気がつくでしょう。

恩恵を分かち合えると信じます。

UNIVERSE25を人類滅亡と繋げるのは、やや早計とも思う。

まあ、最近はそのちょっとの我慢も遠慮もできない奴もいるんだよなぁ……。

とは言え、UNIVERSE25が無意味な実験だっととは言えません。

集団社会における動物(人も含めて)の変化。

快適な生活の弊害。

現代との相似にはドキッとします。

ネズミにならないよう努力しないとね。

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まとめ

UNIVERSE25の興亡は、今の社会に似ています。

便利な世界。

広がる格差。

物欲、性欲のない人の増加。

その方向性は、ネズミも人間も一緒です。

「このままで大丈夫なのか?」

そう感じることもできます。

でも、それは「生物の性(さが)」なのかもしれません。

誰だって楽はしたいし、無駄な努力はしたくない。

楽園実験は、その先は闇と教えてくれます。

ある種の教訓と捉えるべきでしょう。

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