2020年冬――。
世間を騒がせている新型コロナウイルス。
不安な気持ちで報道をチェックしている人も多いでしょう。
新型の危険なウイルスが蔓延すると、
どうも終末的な気分になっちゃうんですよね。
毎度のインフルエンザも流行っているらしい。
こういった報道が過熱するたび、
僕はいつも「ウイルスと菌が一緒くたにされている」と感じます。
ウイルスと菌は、どちらも健康を害します。
感染の仕方も似ており、予防もほぼ同じ。
なので、同じものとざっくり理解している人もいる。
でも、ウイルスと菌はまったく違うモノ。
その違い、わかっていますか?
不安を煽る報道に右往左往しないためにも、
ウイルスと菌の違いを知っておくことは大切ですよ。
ウイルスと菌は別物
かつてO-157が話題になりました。
O-157は大腸菌の一種。
つまり「菌」です。
大腸菌は人の腸内にもあり、消化を助ける無害な菌と知られています。
そのうちのO-157は「病原性大腸菌」にあたり、
下痢や腹痛を引き起こす悪玉大腸菌。
たいていは無害なのに、一部に悪玉もあるのが「菌」です。
サルモネラ菌、ピロリ菌などが悪い菌として有名ですね。
対して、ほとんどが体に悪影響を及ぼすのがウイルスです。
ウイルスは生物ではない?
ウイルスには自己増殖の機能はありません。
人あるいは動物の細胞に侵入して、はじめて増殖できるのです。
これが菌との決定的な違い。
菌は単独でも栄養を摂り、分裂して増える。
身近では「食べ物が腐る」で見られる現象。
片や、ウイルスは他生物に寄生しなければ増えません。
自己増殖は生物の基本なので、菌は生物でウイルスは非生物ともいえます。
現在、ウイルスは生物と見なされていません。
とはいえ、石などの無機物とも違う。
ウイルス自体が謎の存在なのです。
ウイルスはどうやって感染する?
ウイルスは「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」「経口感染」します。
大気中を浮遊しているウイルスが、1m以上離れた相手につくのが空気感染。
ウイルスは大気中では短命(数時間)ですから、滅多にありません。
しかし環境次第で空気感染することもあり、
新型コロナが空気感染するかどうか、不安が広がっています。
新型コロナウイルスは比較的長寿の可能性があるようです。
新型コロナウイルスは場所により
8時間~数日生きるという報告もあります
くしゃみなどで唾液などに含まれたウイルスが1m以内でつくのが飛沫感染。
これは風邪、インフルエンザでお馴染ですね。
ウイルス保有者、その保有者が使ったものに触れて感染するのが接触感染。
インフルエンザは接触でも感染ります。
食べ物についたウイルスを口から入れてしまうのが経口感染です。
ノロウイルスなどが有名で、主に胃腸を壊します。
そのウイルスは、細胞に取り込まれたり、ウイルス自身が侵入して、そこで増殖。
菌ではないので、抗生物質は効きません。
細胞に侵入される前に、うがい、手洗いなどで滅ウイルスする。
身近なもの(家具、衣服など)に付着したウイルスを退治する。
除菌シート、消毒液は菌用ですが、ウイルスにも効果があります。
ウイルスが長生きしない環境を作る。
要するに、清潔を保つことで感染病は防げるというわけです。
ウイルスの大きさと構造
人間の歴史はウイルスとの戦いでもありました。
ウイルスが原因と思われるパンデミックの記録も、紀元前から見られます。
菌とウイルスは肉眼では見えないので、
パンデミックは悪魔の仕業くらいに思われていたんでしょう。
ウイルスは細胞より小さい
17世紀にやっと菌が発見。
ウイルスが発見されたのは1935年。
200年以上も遅れた原因はウイルスの大きさです。
菌は1000分の1mm程度ですが、
ウイルスは菌のさらに数百~1000分の1ほどなのです。
まあ、細胞に侵入するんですから、大きいわけありませんが。
電子顕微鏡の発明を待つしかなかった。
菌レベルの大きなウイルスも稀にあります
新しく見つかったソレは、まったく異質の半生物でした。
シンプル構造のサイコパス
菌を含む生物は膜のある細胞を持ち、
その中にDNAとRNAの両方を持っています。
DNAとRNAは、記録媒体とその読み取り機みたいなもので、セットが基本。
ところが、ウイルスは
細胞壁を持たないむき出しのタンパク質の塊(カプシド)で、
せいぜいエンベロープと呼ばれる外膜があるだけ。
DNAとRNAはどちらか1つしかない。
中途半端だから、まともに生物として生きられません。
「足りないぶんは誰かのを使っちゃおう」
と他動物の細胞に入り込んで、利用するだけ。
相手の痛みなんか知ったこっちゃないサイコパス性質。
普段は特定の環境でおとなしくしています。
そこから渡り鳥などに感染して運ばれ、
家畜や野生動物を介して、人にも感染するのです。
ウイルスは感染が命綱。
感染力を強めるように進化してきたようなところがある。
ウイルスの広まりが早いのは、それが理由です。
かなり厄介な敵だと思いませんか?
細胞使わせてやった恩を仇で返しやがって!
ただ、憎きウイルスが人の進化を助けたという意見もあります。
ウイルス進化論は事実か?
遺伝子は親から子へ「縦」に受け継がれます。
他に、他者の遺伝子が「横」から運ばれてくる場合もあります。
水平伝播といわれるもので、クマムシには2割近い他生物の遺伝子が見られる。
人間も数%は水平伝播遺伝子を持っています。
その侵入がウイルスによってもたらされたかもしれません。
つまり、運搬したのがウイルスと考えることができる。
ウイルスが運んだ遺伝子が、細胞に取り込まれ結合。
他者の遺伝子は、突然変異を生む可能性も。
現在、サルからヒトへの飛躍的な進化の説明はできていません。
ウイルス感染での水平伝播で、サルが変異したのがヒトだとしたら……。
サルとヒトの中間ミッシングリンクが見つからないのもうなずけます。
進化はウイルスが起こした「飛び級」だったかも。
本当のところはわかりません。
あったとしても、怪我の功名でしょう。
ウイルスは所詮侵略者。
人のためになにかしたわけじゃない。
とにかく、人間とウイルスは切り離せません。
根絶させるのも無理です。
感染病はあるものと割り切り、
流行したときは各々予防するしかなさそうですね。
まとめ
感染病はウイルスと菌が引き起こします。
しかし、ウイルスと菌はまったく違うもの。
ウイルスは生物ともいえず、シンプルな造りで、他者を利用するだけ。
ウイルスは生物のような侵略マシーンといってもいい。
完全な生物の菌とは、撃退法も変わってきます。
症状が似ているといっても、治療法を間違えては意味がないのです。
ウイルスは人の宿敵。
戦いは今後も繰り返されるんでしょうね。
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