道によくあるマンホール。
「開けてみってぇ~」と思ったことないですか?
下水道へ降りる地下世界への入り口。
僕らの足の下にあるのに、見たこともない暗渠。
文字通りアンダーグラウンド。
「未知の怪物がうろついているのでは?」
そんな空想もしてしまう。
マンホールは日常に存在する、異世界への扉って気がするんですよ。
ほとんどの人が行ったことのない異世界「下水道」。
そこには不思議な世界が……なんてことはもちろんない。
ファンタジーの欠片もない、汚水と悪臭の世界です。
でも、生物はいる。
日光の届かぬ地下で、僕らの目を逃れ、生きているんです。
まるでモンスターのようじゃありませんか!
この「穴があったら覗いてみたい」欲求。
満たしたい!
地下世界はどんな場所なのでしょうか?
下水道にモンスターはいるの?
下水道は生活排水を捨てる場所。
我々が日々垂れ流している汚水が溜められ、処分される。
下水がないと、家中は糞尿の臭いが充満し、
害虫や病原体がうじゃうじゃ集まってしまいます。
僕らの快適な暮らしには不可欠なもの。
紀元前5000年のメソポタミアの町にもあったくらいです。
日本でも7世紀には下水が作られていました。
でも、一般にイメージされる地下のトンネル状の近代下水道は300年くらいの歴史。
下水道の築造は14世紀頃には始まっていましたが、産業革命で必要性が高まり、処理技術も進み、現在に至るのです。
どこか、この世の「ヨゴレ」を一手に引き受けているような下水道。
その迷宮が地下を縦横無尽に広がっている。
廃棄物という餌があり、駆除する人間もいない。
そんな楽園に生物がいないわけありません。
下水道はワニの棲家?
アメリカには昔から「下水道のワニ」の都市伝説があります。
ペットにしようとワニを買ったが、やがて手に負えなくなって、トイレに流してしまう。
そのワニが下水道で生き永らえ、都市のゴミなどを食べて巨大化。
人を襲うというような話です。
日本人にも「アメリカの下水にワニは当たり前」みたいな印象ありますよね。
これは創作ですが、アメリカの下水道に棲みついているワニは実際にいます。
おそらく、伝説と同じ捨てられたペット。
または、川から下水道に入り込んだ野生のワニでしょう。
ただ、ワニは下水道で生きるには大きすぎる生き物。
一時的に住んでいても、すぐに野外に出るか、死んでしまうと思われます。
下水道のワニに襲われた事例もない。
都市伝説レベルの話。
しかし、ワニをペットにするのは日本でもできる。
無責任な飼い主が下水にワニを捨てることはあり得ます。
ワニがマンホールから「こんにちは」ってのは勘弁してほしい。
下水から現れた怪生物
下水道から出てきた生き物が、人々を恐怖に陥れた事件は日本にもあります。
都会の繁華街のマンホールの上で、奇怪な生物がのたうちまわっていたのです。
正体は「コウガイビル」。
蛭の名がついていますが、プラナリア(ウズムシ)の仲間。
頭がトンカチみたいに横に張り出した、蛭のような不気味な生物。
種類によって1m近くなり、都市圏でも普通にいます。
件のコウガイビルは、どうやらマンホールの穴から這い出してきて、途中でどこかに引っかかり、脱出しようとのたくっているうち、伸縮の利く体がどんどん伸びていった結果だったようです。
道行く人にはじゅうぶんモンスターですよ。
コウガイビルは動きがもう生理的にキショいし。
肉食ですが血は吸いません
コウガイビルをはじめ、カマドウマやゲジゲジなど、湿気のある暗所を好む虫は多いものです。
彼らにとっても地下道は快適な住処。
モンスターとまでは言えませんが、仲良くしたくない相手でしょう。
しかし、地下道の住人で、嫌われ者の双璧といえば、やはりゴキブリやネズミが挙げられます。
下水道に潜む生き物たち
ネズミ、ゴキブリは地下道に適した生物です。
生命力・繁殖力が高く、人の暮らしと密接している。
廃棄物を餌に生きてゆける。
張り巡らされた地下道は、どこにでも移動できる利便性。
もちろん、あなたの家にも繋がっている。
日当たりの悪さを差し引いても、なかなかの好物件でしょう。
家にネズミ・ゴキブリが侵入!
たまに、ネズミやゴキブリが排水口から出てきたという話を聞きます。
いわゆる「水回り」は、外からの侵入口でもあるのです。
地下の害獣・害虫が配管ラビリンスを通じて、家のキッチン、バスルーム、洗面所に現れる。
排水口は塞げませんから、入って来放題です。
それを防いでいるのが、S字パイプ。
排水口の下に、Sを横にしたようなパイプがあるのを見た人も多いでしょう。
S字にすると、そこに水が残ります。
その水が、ネズミやゴキブリの侵入、下水の悪臭を止めているわけです。
登ってきた生き物が「水があって進めないから引き返そう」となる。
ちょっとした工夫ですね。
反面、物が詰まりやすいので、大きなものを流さないようにしましょう。
髪の毛などはかたまって大きくなることがあり、普段からの掃除も大事ですよ。
中には水を物ともせず、上がってくるチャレンジャーもいて、洗面所を阿鼻叫喚に陥れるかもしれないんですが……。
下水道に怪物はいない!
ゴキとネズは、被食者でもあります。
自然界では「よく食われる」弱者。
人間から見ると、どちらも最強種族に見えるんだけど
下水道にはそれを狙う者もいます。
例えばヘビ。
ネズミが好物のヘビも、下水を通じて家に侵入することがあります。
配管をよじ登るのもお手の物。
泳ぎも上手く、S字パイプが通用しないことも。
下水に適応している生物といえるでしょう。
ただ、ヘビもワニと同じく変温動物。
日光の当たらない地下道は、居心地がよくない。
ネズミを追って入り込んでも、長居はしないと思います。
排水口からニョロっとヘビが、というのはほとんどないからご安心を。
こうして見ると、何かの生物が変異し巨大化するというのは、考えられません。
いるのは主にコソコソ生きている小動物。
「洞窟の怪物」はよく聞きますが、日の当たらない場所の生き物は、貧相なものが多いのです。
モンスターは期待薄ですね。
もはやアンダーグラウンドじゃない!
下水道にはさまざまな生き物がいます。
虫は多いですが、大きな生物はあまりいないようです。
下水にもっともたくさん棲みついているのは微生物のほう。
悪病が下水を通じて拡散したこともあります。
最近では、逆に微生物で汚水を処理し、役立てることが盛んに行われています。
アメーバ、クマムシなど有名なものから、
ボルティケラ(ツリガネムシ)やカエトノツス(イタチムシ)など「誰やねん?」というものまで。
見た目が本当に釣鐘やイタチっぽいです
微生物の働きと、処理技術の向上で、「汚く臭い下水道」のイメージもなくなりつつあります。
下水道の見学ツアーなんてのもあるらしい。
みんなやっぱり「穴があったら覗きたい」んですね。
想像力をくすぐるアンダーグラウンド世界も、時代とともに変わっているようです。
清潔な下水道……いいんですけど……。
「モンスターがうごめく闇の世界」感が減ってゆくのが、ちょっと寂しくも思うのです。
まとめ
ずっと気になっていた地下空間。
勝手に恐獣や犯罪者の巣窟と思っていました。
そんな異界めいた下水道のイメージとは、ずいぶん違うようです。
いや、怪物が本当にいるなんて思ってなかったけどさー。
害虫・害獣と、迷い込んだ動物がたまにいるくらい。
そこまでダークな異世界じゃありません。
今はずいぶんキレイなのです。
子供の頃、何度か道脇のドブに落ちたことがあるのですが、今ではむき出しの側溝も珍しくなり、安全にもなっています。
それを寂しく感じるのは、僕がオッさんだからなんだろうなぁ。
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