世界的な怪魚『ヨーロッパオオナマズ』。
「湖の怪物」「川辺で人が襲われた!」
そんなモンスターの正体を突き詰めてゆくと、必ず容疑者として名前が挙がります。
「人喰い」と冠されるのも、このヨーロッパオオナマズ。
とにかく、悪名高い魚です。
しかし、たかがナマズですよ。
サメならともかく、ナマズが人を襲うとは思えません。
ヨーロッパオオナマズって、そんな凶暴なのでしょうか。
それなら、日本のナマズに食われた人がいてもいいのに。
どうも大ナマズには誤解がある気がします。
ナマズは本当に怖い魚なのか?
いろいろな逸話を検証すれば、回答が見えるかもしれません。
巨大で貪欲!恐怖の大ナマズ
ナマズは大きな淡水魚です。
日本にもビワコオオナマズがいて、大きいのは1.5mほど。
イトウと並び、日本の淡水魚でも最大級です。
ヨーロッパオオナマズは約1.8m。
日本のとあまり変わりないような。
ただ、上には上がいるもので、アマゾンの大ナマズ・ピライーバは2m以上。
東南アジアのメコンオオナマズは3m級もいるのだとか。
どうやら、ナマズは大型化の可能な魚のようです。
ヨーロッパオオナマズのサイズは?
ヨーロッパオオナマズも、巨大個体が確認されています。
イタリアのポー川で捕獲されたものが、
体長2.78mで重さ144kg。
これが最大記録。
未確認の情報なら、さらに大物もいる。
1856年に、5mで400kgのヨーロッパオオナマズが捕まった記録もあるのです。
まあ、これはあまり信憑性のない数字。
5mもあったら、倍の重さがないとおかしい
3m、4mという話もちらほら残っています。
通常、ヨーロッパオオナマズは大きいのでも2mを超えることはありません。
それでも、環境さえ良ければ3m超えはあり得そうです。
じゅうぶん「人が食える」サイズでしょう。
鳥や犬、人間も被害に!?
ナマズは大食でも知られています。
大きな口で、バキュームみたいに獲物を飲み込んでしまう。
食料だと思えば、選り好みもしません。
口に入る大きさなら、すべての動物が餌といってもいい。
それは陸の動物でもです。
実際、ヨーロッパオオナマズが川辺の鳥やネズミ、犬などまで襲うことがわかっています。
例えば、ドイツの『殺し屋クノ』。
ダックスフントをパクっと食って、人々に怖れられた大ナマズです。
川で愛犬を水浴びさせているとき、3mもあるナマズが水面から現れ、犬を一飲みして深みに消える。
悪夢でしかありませんよ。
その後、1.5mのナマズの死体が見つかり、「こいつがクノだ!」とニュースになったのですが、「いや、クノはこんな小物じゃない」と反論もあり、クノの生死はわかっていません。
とにかく、ナマズは大食漢。
人間が食われたといわれても、信じちゃうじゃありませんか!
昔、捕らえられたヨーロッパオオナマズの話。
その胃から、人間の骨が見つかりました。
人を食っていることは間違いありません。
人間だってターゲットなのです。
「でも、ナマズが人を襲うかなぁ」
にわかには信じられないですよ。
ヨーロッパオオナマズの人食いの噂を検証してみましょう。
人食いは事実か?
ナマズは大食らいですが、特に凶暴でもありません。
巨大で、大口でも、基本的には臆病な魚です。
ヨーロッパオオナマズもそう。
少し誤解がありそうです。
ナマズの習性「まずは食う」
ナマズは「人を襲う」。
これは本当です。
人を獲物と勘違いして、食おうとする。
というか、ナマズは目の前にあるものに、とりあえず食いつく習性があるのです。
腹が減っているところに、たまたま人がいたので、食いついてみました、という状況。
とりあえずビールみたいに、軽く食いつかれては困るんですが……。
基本、人を積極的に襲うことはありません。
たいていは「あら?人間か」と離れます。
ナマズは全身で味覚を感じるそうです
しかし、大ナマズは巨体でパワーもある。
確証はないのですが、ナマズの襲撃で溺れたと思われる事例も少なくありません。
川で泳いだり、漁をしていると、ナマズに咬まれ、時には水中に引きずり込まれる。
不幸な事故です。
「人食いナマズ」の伝説は、このような事故の蓄積から生まれたのでしょう。
人食いは嘘ではなかった!
ナマズの胃から人骨が出た話。
これも溺死した水死体を食べたと思われます。
その死因が、ナマズの襲撃に因るのかは、なんともいえません。
少々、「盛った話」という気もします。
「人食いの大ナマズ!」
なかなかセンセーショナルな見出しですよね。
こんなニュースにナマズより卑しく食いつくのが人間という動物。
当然、メディアや巷の噂は、食いつく餌で大衆を「釣る」。
事実は、
・しかし、人を襲い、事故に繋がることは稀にある。
・ナマズは水死体を食べることがある。
人食いナマズは、半分くらい事実といってよさそう。
イヌやネコ、小さい子供などなら、飲み込んでしまえるのです。
実はヨーロッパオオナマズは日本でも確認されています。
人食いまではないとしても、うかうか川辺にいられません。
気になる兆候でしょう。
日本にもいるヨーロッパオオナマズ
2005年、滋賀県の公園の池で、ヨーロッパオオナマズが見つかっています。
体長は約60cm。
アルビノで、金色に見えるナマズです。
自然下ではあまり見ないアルビノ種。
ペットで飼っていたナマズを捨てた可能性が高そうです。
人食いナマズはどこにでもいる!
ヨーロッパオオナマズは特定外来種に指定されています。
「日本の在来種の生存を脅かす外来種」ということ。
『入れない(勝手に輸入しない)』
『捨てない(飼育している外来種を捨てない・逃がさない)』
『拡げない(移動させない)』
この三原則を守らないとなりません。
そんな脅威があちこちで繁殖したら、日本の生態系が壊されてしまいますから。
もちろん、飼育は原則禁止です。
ただ、指定される前から飼っていた場合は、申請して許可されれば飼い続けられます。
でも、今は空前のペットブーム。
無許可で持ち込まれたもの、飼育しているものが「絶対ない」とはいえません。
もちろん、罰則はあります。
勝手に輸入すれば、1年以下の懲役、100万円以下の罰金。(法人は5千万円)
放流したら、3年以下の懲役、300万円以下の罰金。(法人は1億円)
それでも、飼う人は飼うし、捨てる人は捨てる。
ヨーロッパオオナマズは、葛飾に下流を置く「中川」でも、捕獲されています。
ヨーロッパでも、本来は北にいるヨーロッパオオナマズが、南部のイタリアやスペインに放流され、環境が良いことで、繁殖と巨大化が進んでいるといいます。
つまり、北日本にも棲めて、温暖な地域では大きくなれる。
寿命も30~60年あり、タフな魚です。
日本ではまだ繁殖していないといいますが、今後どうなることか……。
川で愛犬がパクッと……そんな悪夢がないことを祈るしかありません。
まとめ
3m超えもいるであろうヨーロッパオオナマズ。
非常に貪欲で、小動物なら丸飲み。
時には人も襲い、被害を及ぼす。
人食いの容疑がかけられても文句はいえません。
そんな極道ナマズが日本にもいるとなれば、恐怖です。
一方で、ヨーロッパオオナマズは釣り人の憧れでもある。
人の手で「釣りたいから」という理由で、各地に持ち込まれた事情もあるんです。
人間も罪深い。
ナマズばかりを責められないですね。
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