日本最大の水生昆虫タガメ。
その風貌は悪魔的であり、あのデスサイズ然とした大鎌は怖ろしいとしかいえない。
水中で獲物の体液をすすり、時には飛ぶこともある。
あの巨体が鎌を振り上げて飛んで来たら、僕は「あひゃァィやぁ」と変な声をあげるでしょう。
そんなタガメは意外と子煩悩。
近頃ではペットとして飼育されることもあります。
愛玩とは対極にいるような昆虫ですが、飼ってみると繁殖もできるし、なかなか面白いんだとか。
タガメはどんな昆虫なのか。
その生態とともに、飼育方法や採取の仕方などをご紹介しましょう。
家庭的な殺し屋?タガメの生態に迫る
あなたはタガメを見たことがあるでしょうか?
実は、僕は一度も実物を見たことがありません。
僕の故郷の北海道にタガメはいないのです。
生息する本州、四国、九州でもタガメは数を減らしていて、今では滅多に見られない貴重な昆虫です。
なかなか見られないのは、タガメの住処が局地的という理由もあります。
いる所にはいるが、いない所にはまったくいない。
どういう理由なのかは知りませんが、コミュニティーが点々としているらしい。
タガメはカメムシの仲間で、コオイムシ科に属しています。
大きさは6cm前後。
タガメ未経験の僕は10cmくらいあるようなイメージだったんですが、そこまで大きくない。
強面だからデカい感じありますよね
それでもミズスマシやゲンゴロウに比べれば、タガメの迫力は段違いです。
尻から呼吸し、逆さになって獲物を待ち構える姿は、まさに『昆虫界の必殺仕事人』。
♪チャララーンと音楽を流したいところだ。
あの大鎌で水生の生物――時には自分よりずっと大きなカエルやヘビ、ネズミまでも襲うという無鉄砲さ。
鋭い口吻を差し込んで体液を吸うバンパイア的食性。
『水中のギャング』の異名にふさわしい昆虫じゃありませんか!
そのタガメは水面に出た草などに産卵します。
メスは産みつけた後はほったらかしで、オスが時々登ってきて、乾燥しないように水をかけたり、陽射しから守るのに影を作ってあげたり、とても献身的です。
メスは完全に育児放棄で、幼タガメはしばらくオスの近くにいます。
人間にもこんな夫婦いますね
タガメは生まれたときからハンターで、生粋の肉食。
共食いもしちゃうんですが、そうした生存競争を生き残って5度ほど脱皮をすれば、立派なタガメになります。
タガメ属は世界中に生息し、中国では漢方薬の材料、東南アジアでは普通に唐揚げで食べられるものの、日本では絶滅危惧種。
タガメの好む水辺が減っているためです。
「自然が棲みにくいなら、人間が飼えばいいじゃん」なのか、近ごろはタガメ飼育する人もいる。
タガメを飼って面白いのかとも思うけど、これが簡単で繁殖もさせられるのだそう。
飼育するなら、まずはタガメを手に入れないとです。
タガメをどこで採取するか?毒とかはないの?
タガメはショップでも見つけることができます。
一匹500円~くらい。
絶滅危惧種のわりには買い叩かれている感もあるな……
でも、タガメは自分で捕まえたものを飼ってもいいんです。
捕獲して、育てる。
子供の遊びみたいな飼育も楽しいんじゃないかなと思う。
水生昆虫の採取といえば、なんといっても『ガサゴソ』でしょう。
池や川で、気になる場所を網でガサゴソとやる。
僕も子供の頃はこの方法でヤゴやミズカマキリをよく捕ったものです。
使った補虫網の消費量も激しかったですが
もっと強度のある網がいいかもしれません。
ただし、タガメはいない所にはまずいない。
ガサゴソのポイント探しは難しそう。
- 浅い
- 水流が弱い
- 水草が多い
- タガメの餌となる小魚などが豊富
こんな感じの場所を探して、ガサゴソ頑張ればいいでしょう。
もうひとつ、陸のタガメを捕まえるという方法もあります。
タガメは飛ぶのです。
夏の夜、灯りの近くで見つかることがよくあります。
これは運要素の強い採取法ですが、タガメがよく飛んでいる地域であればガサゴソより効率はいいかも。
タガメは毒はないので、素手で捕まえても大丈夫。
でも、口吻で刺されると痛いらしいんで、そこだけは注意ですよ。
ちなみに、タガメの雌雄は大きさと、腹部の裏にある生殖板で見分けられます。
オスは生殖板が尖がっています。
メスは生殖板の先が欠けており、オスよりやや体も大きい。
つがいで飼うなら覚えておいてください。
さあ、それではタガメ飼育の仕方も見ていきましょう。
飼育は環境作りだけ。餌、産卵、繁殖の方法
タガメ飼育、実は簡単です。
環境を作ってあげれば、あとは餌やりだけ。
用意するのは飼育ケース。
これも水を入れられるものならバケツでもなんでもいいのですが、100円ショップでも透明なケースが買えるので、観察しやすいものを選びましょう。
半分くらいの水を入れ、タガメの足場になる場所を立てかけます。
留まる場所がないとタガメは溺れちゃうよ
足場は流木でも、格子になった網でも、タガメが逆さに身を置くことができればOK。
そして、飛んで逃げないための蓋があればいいのです。
寒ければ冬眠するのでヒーターは要りません。
ろ過機はあってもいいのですが、タガメは水流を嫌うので、水質はまめな水換えで維持しましょう。
餌はコオロギやローチ、メダカ、小さいカエルなどです。
目の前に落としてやれば、大鎌を振るって襲ってくるでしょう。
体液を吸われたかわいそうな餌は、水質汚染の元ですから、ピンセットなどで取り出してください。
タガメをつがい、複数飼育の場合、共食いの可能性があります。
あまり過密に飼わず、餌を多めに与えて空腹にしないことが大事ですよ。
心配なら仕切りを置き、繁殖のときだけ外す方法もあります。
産卵用の杭を数本立てて、メスが産卵する場所も用意してあげましょう。
産卵後はメスも産後の肥立ちが悪いのか、食欲旺盛になります。
この時期はメスを隔離したほうがいいようです。
じゃないとオスが餌食に……
孵化した幼タガメは、タガメというよりはダニみたいな姿をしています。
これも一匹ずつ分けて飼うほうがいい。
紙コップでもプリンの空き容器でもじゅうぶんです。
幼タガメは体に合わせて、餌を大きくしてゆけばいいです。
きちんと飼育してあげれば、3年くらいは生きてくれますよ。
まとめ
獰猛だからこそ魅力的なタガメ。
意外とペットにしても簡単だし、面白いかもしれないですね。
最後に、飼っていて増えたタガメの放逐について。
タガメを市民に育ててもらい、自然に還して増やす運動をしている自治体もあるので、採取した水場に戻すのであれば僕は問題ないだろうと認識しています。
ただし、飼育生物を放逐すること自体を禁じている場所もあり、注意は必要です。
タガメは農業被害になることもあって、むやみに増えればいいというのでもありません。
この辺は各々で確認していただくしかないようです。
タガメを増やそうとしている自治体、公園などもありますから、増えすぎたときは相談してみるのもいいかもしれませんね。
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