古代の海の支配者として知られる「メガロドン」。
その強さと、雄々しい巨体は、世間でもお馴染です。
恐竜のいない海で、暴君のように振る舞っていました。
「独り勝ち」のイメージがありますが、
実はメガロドンにもライバルがいました。
いや、メガロドンでも敵わなかったかもしれません。
その強敵の名は「リヴィアタン・メルビレイ」。
名前がすでに強そう。
凶暴性、大きさ、スピードなど、メガロドン以上だったともいわれる古代クジラです。
「クジラは優しい動物」なんて思い込みを、軽くフッ飛ばしてくれるでしょう。
今回はリヴィアタン・メルビレイを紹介しつつ、メガロドンとどっちが強かったのかも考察してゆきましょう。
リヴィアタン・メルビレイの発見
2008年のこと。
ペルー南部で、未知の動物の頭骨が見つかりました。
頭だけで3mもある化石。
すぐに「クジラだろう」と見当はついたのですが、特徴的なのは歯。
巨大な牙が、上顎と下顎に並んでいる。
それは間違いなく「肉を食らう者」の骨だったのです。
肉食クジラの系譜
クジラに「肉食」のイメージはほとんどないと思います。
人を襲うこともありませんし、多くはプランクトン食性ですからね。
歯があるクジラ――いわゆる「ハクジラ」は、イルカ、シャチに多いのです。
肉食クジラで有名なのはマッコウクジラでしょう。
深海の巨大イカなどを食っています。
時にはマグロやサケなども食べるのですが、他のクジラやアザラシは襲わないので、シャチほどの凶暴性は感じません。
ペルーの化石も、形からマッコウクジラに属することがわかった。
しかし、現在のマッコウクジラは下顎にしか歯がありません。
化石は上下に歯があり、大きいものは30cmを超える。
これは捕食用の歯としては史上最大。
さらに、頭蓋の側面に大きな空洞部分がある。
咬むための「大きな筋肉」が収まっていたと考えられるのです。
「こいつはとんでもない肉食クジラだぞ!」
付けられた名前は「リヴィアタン・メルビレイ」。
・聖書に出てくる海の怪物リヴァイアサン(レヴィアタン)
・凶暴な大クジラ・モービィ・ディックとの死闘を描いた小説『白鯨』の作者メルヴィル
に因んだものです。
リヴィアタンが属名で、メルビレイは種名。
『白鯨』はウンチクが長々と続き、
途中で読むのやめちゃいました
古代の海の二大凶獣
その後、オーストラリアやアフリカでも歯の化石が発見。
リヴィアタンは南洋に広く生息していたようです。
化石が少ないため推定ですが、頭蓋の大きさから体長は13~17m。
現在のマッコウクジラとほぼ同じくらい。
アザラシ、イルカ、サメ、10m程度の中型クジラを捕食していました。
生態はシャチに似ていたと考えられますが、大きさからシャチのように群れで狩りをするのではなく、単独で大型生物も仕留められたと思います。
生息の年代は1200万~1300万年前。
ただ、リヴィアタン属は500万年前ほどまでいた形跡があり、はっきりしません。
この頃、海にはリヴィアタンに引けを取らない捕食者がいました。
メガロドン。
むしろ、こっちのが有名で人気ですね。
やはり南洋を好み、当然リヴィアタンとも出会っていたでしょう。
両雄激突!
これは「北の湖と輪島」「レアルとバルサ」「サッポロ一番の味噌と塩」並みのライバル対決!(もっといい例えないんか)
どちらが勝者だったのか気になります。
リヴィアタンVSメガロドン どっちが強い?
メガロドンは約2300万年前から300万年前に生息していました。
この時代では最大級の肉食魚。
泳ぐスピードも40~50km/hで、機動力も高い。
およそ2000万年もの間、海の覇者だったのです。
そのため、「絶対王者」の印象があり、敵などいなかったように思われがち。
しかし、リヴィアタン・メルビレイの発見で、様相が変わってきました。
両者は体格もスピードもほぼ互角なのです。
メガロドンより強かった!?
おそらく、リヴィアタンは1500万年前から500万年前辺りにいたのでしょう。
そして、大きなサメも捕食していました。
メガロドンの推定体長は最大で14~20m。
平均では10~12mと思われます。
マッコウクジラはオスが16m、メスが12mくらいで、マッコウクジラ属のリヴィアタンも同サイズと考えれば、メガロドンよりやや大きかったと想像できます。
さらに、生物として魚より哺乳類のほうがスペックは高い。
体温も維持できるし、活動的。
知能もリヴィアタンよりメガロドンが低かったはずです。
メガロドンの絶滅は、シャチとの競合に敗れたのが原因といわれ、ここからも哺乳類が上なのはわかる。
戦えば、きっとリヴィアタンが勝っていたと思います。
僕はリヴィアタンに賭けますね。
リヴィアタンとメガロドンの関係
でも、「リヴィアタンの勝ち」と一概にはいえません。
たぶん、リヴィアタンもメガロドンも小さいうちは、お互いに食われたかもしれません。
しかし、成長したメガロドンはリヴィアタンでも手を焼く相手です。
当然、メガロドンも無鉄砲にリヴィアタンを襲っていたとは思えない。
双方とも「嫌なヤツだな~」と避け合っていたんじゃないでしょうか。
それに、メガロドンはリヴィアタンが消えた後も、しばらく生き残っていました。
王座にいた期間も長い。
決して「敗者」とはいえません。
なぜ滅んだのか?
僕はこう考えるのです。
現在、肉食のクジラのほとんどはシャチ、イルカ類です。
巨体のまま肉食を続けているのは、少数派。
リヴィアタンのような肉食の大クジラは、進化の流行ではなかった証拠といえます。
結果、淘汰されてゆく。
メガロドンはライバルが減って喜んだかも。
ところが、それはメガロドンの餌も減ったということ。
小型化した肉食クジラたちは、メガロドン以上の適応力とスピード、ハンティング能力を備え、メガロドンも時代遅れに。
そして滅んだ。
氷河期などの環境変化もあり、逃げ場のない大型ではやっていけなくなったのです。
リヴィアタンもメガロドンも時代に取り残された「昔気質(むかしかたぎ)」だったんでしょう。
リヴィアタンは早々に撤退し、メガロドンは最後まで抵抗した格好です。
大型肉食獣であることを貫いたことも、メガロドンの魅力だと思うのです。
先に滅んだリヴィアタンは「最後までよく頑張ったなメガロドン、お前こそ真の海棲肉食獣だ」とか、言ってそうな気がする。
漫画の読み過ぎだな……
リヴィアタン・メルビレイは化石もほとんどなく、実像はわからないことが多いのです。
研究が進めば、どんなふうにメガロドンと共存し、両雄が並ぶ世界を過ごしていたのか、見えてくるんじゃないでしょうか。
まとめ
武闘派のクジラ・リヴィアタン。
『白鯨』のモービィ・ディックを彷彿させる古代獣です。
現存ではマッコウクジラが近いですが、迫力はもっとあったと思う。
そんなクジラが、凶悪で名を馳せるメガロドンと同時期にいたとは極上のロマンですよ。
僕はリヴィアタンが強かったと想像しますが、メガロドンも一方的にやられていたわけではないでしょう。
リヴィアタン絶滅後も生き残ってますしね。
でも、今はどちらも消えた。
「ツワモノどもが夢の跡」……です。
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