「魔物使い」って憧れませんか?
最近は「テイマー」っていうそうですね。
強い魔物たちと心を通わせて、命令すれば動いてくれるんです。
戦闘や移動に役立ち、時々モフモフもできちゃう。
でも、そんな職業はゲーム・漫画の中だけだし……。
そんなふうに思っている方におススメのジョブが現実にもある!
「鷹匠(たかじょう)」なんていかがでしょう?
猛禽のタカに命令し、自在に動かすお仕事。
しかし、この鷹匠。
どうやったらなれるのか、さっぱりわからない仕事でもある。
歌人とかメンタリストとかみたいに、
どんな人生歩んだらたどり着く仕事なんだ?と思う。
求人広告に載ってもいないし、鷹匠の専門学校とか聞いたこともない。
野生のタカを捕まえて、飼い慣らせば、誰でもなれるのかな?
いや、そもそも一般人はなれるのか?
なれたとしても、一体どんな仕事をして、稼ぎはあるのか?
不明点いっぱいの職業じゃないでしょうか。
現実のテイマー「鷹匠」。
調べてみると、誰でもなれる職業だったんです!
鷹匠の始まりと現在
鷹匠の起源はかなり古いのだそうです。
紀元前3000~2000年頃。
中央アジアでタカを使った狩りが始まったらしい。
エジプトのピラミッドが作られていた頃ですよ。
いわゆる「鷹狩り」の始まり。
ここで「鷹」というのは猛禽類全般を指します。
ワシやハヤブサを使うこともあります。
考えてみれば、猛禽類は狩りの名人。
しかも生き物だから、判断力もある。
まさに「意思のある道具」「インテリジェンスウェポン」!
狩猟の手伝いをさせようと、昔の人もひらめいたのでしょう。
その後、鷹狩りは世界中に広まります。
日本での鷹匠
日本でも最古の記録は4世紀。
それ以前に作られた埴輪にも、タカを手に乗せたものがあり、2千年近い歴史がある。
そのうち、タカの調教をする専門職も現れます。
それが現代の鷹匠に繋がるわけですね。
鷹狩りは権力者に愛されました。
上流階級の嗜みでもあり、軍事訓練の意味もあったようです。
徳川家康が鍛錬のため鷹狩りを好んだのは有名な話。
あちこちに鷹狩りをするための「鷹場」が作られました。
今のゴルフ場みたいな感じかな。
高級なクラブを買うように、良い鷹匠を部下にすることはステータスでもありました。
娯楽の場であっても、マウント取りたいのが人情。
狩りの成果で他者に「ぐぬぬ」と言わせたい。
当然、良いタカと鷹匠は優遇され、身分も高かったわけです。
しかし、現代では事情もかなり変わっています。
現在の鷹匠はなにをする?
タカを調教し、狩りをさせる鷹匠。
カッコいいんですが、狩猟しなくても暮らせる現代は需要のない職業です。
伝統として残っていても、やることはあまりない。
現代の鷹匠の仕事は大きく2つ。
「興行」と「害獣駆除」です。
特殊な職業である鷹匠は、イベントなどで技を披露したり、一般客に体験してもらったり、悪く言うと「見世物」になっています。
我々が鷹匠と出会うのは、主にこの興業の場でしょう。
そして、害獣駆除。
・バードストライクが危険な飛行場などで、鳥を追い払うといった仕事。
・時には農業被害を起こすネズミ、ウサギの駆除。
害鳥・害獣たちに「ここはタカの縄張りだ。近づくな」と脅しをかけるのです。
何度かタカを飛ばせば、動物も学習して、遠ざかってくれる。
要するに、害獣にいてほしくない地域で睨みを利かすお仕事。
調教されたエリートなタカなのに、チンピラみたいな仕事で、ちょっと気の毒な気もする……。
仕事は少なく収入は低い
興行にしても駆除にしても、仕事が多いとは思えません。
娯楽や駆除法は他にもあります。
むしろ、タカを使うのは効率の悪いやり方でしょう。
話題作りでもなければ、絶対に必要というのでもない。
単発の仕事が続き、また、そうした仕事の単価は「一日一万円」程度なのです。
そのうえ、呼ばれれば行かなきゃならない「ドサ回り営業」。
鷹匠は数も少ないため、他の地方へ遠出することだってしばしば。
仕事は多くないけれど、どこにでも行かないとならなくて、報酬がいいわけでもない。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki2.png)
売れない演歌歌手みたいだ……
年収は良くても150万円以下でしょう。
年50万円でも稼げればマシといったようです。
そんな理由で、鷹匠を一本でやっている人はほとんどいません。
本業とは別に、趣味の範囲でやる副業という感じ。
どうです?厳しいのは間違いない。
当然、仕事がなくてもタカの世話や訓練に時間は盗られる。
お金と労力にこだわらず、「好きだから」だけでやる仕事ですね。
「それでもやりたい!」となったら……。
鷹匠ってどうやってなるんでしょう?
鷹匠になるには?
鷹匠になりたければ
・鷹匠の学校に入学する
・鷹匠に弟子入りする
の手段があります。
鷹匠の学校があるなんて驚きです。
学校と言っても、鷹匠の伝統や技を伝えることを目的としたNPO法人の主催する講座を3年ほど受け、年に一度の試験に受かるといったもの。
弟子入りも同様に、タカの扱いや技能を先輩鷹匠に認められれば、それでいいのです。
当然、その後は自分の鷹を購入し、飼育と調教は自己負担でする。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki1.png)
鷹匠には「諏訪流」「吉田流」の2つの流派があります
資格などは要らず、誰でもなれる。
とは言え、鷹匠には「鷹匠の資質」が問われます。
人間性が重要なのです。
あなたは鷹匠に向く?向かない?
「動物が好きだから」という理由で鷹匠に憧れる人は少なくありません。
トリマー、ペットショップの店員、飼育員を夢見るのと一緒です。
でも、それらと同じベクトルで、鷹匠を目指すのはおススメできません。
猛禽類は決して飼い慣らしやすい愛玩動物ではないのです。
獰猛だし、人を傷つけることもあります。
幼児くらいなら普通に獲物として見ています。
そんな猛鳥を育てるだけでも大苦労。
しかも、制御できなければ危険生物になる。
銃や日本刀を持っているのと変わらず、
タカを正しく管理し、責任を持てる人でないとなりません。
さらに狩猟の訓練もあります。
つまり、弱肉強食のリアルな狩りです。
「狩られる小動物がかわいそう」なんて思う人では、とてもタカは扱えません。
動物の皮ぐらいは平気で剥げるくらいの豪胆が求められるでしょう。
![鷹匠の画像](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2023/01/falcon-2873022_960_720.jpg)
鷹匠がタカを操っているようなイメージも間違いです。
タカは勝手に狩りをし、鷹匠の都合なんて考えてもいません。
「タカと仲良し」なんてハートフルな展開は期待しないほうがいい。
鷹匠の本分は「タカの家来」に徹することだと言われます。
タカに仕えながら、裏でコントロールする。
タカの機嫌を損ねたらアウトですし、伝統職なので好き勝手にできるものでもありません。
相当、気を遣う覚悟は必要でしょう。
お気楽なテイマー気分では、とてもできない仕事なんですね。
まとめ
カッコよく見える鷹匠。
でも、現実はそうでもないようです。
仕事は大変、稼ぎは少ない。
体力も神経もすり減らし、タカに尽くすことになる。
安易な気持ちではなれませんね。
しかし、タカの信頼を得て、相棒となれることは喜びも大きいでしょう。
ペット以上の盟友という感じで絆が深いかも。
ファンタジーのテイマーというより、任侠物の親分子分に近い気がする。
「タカの兄貴のためならどんな犠牲も厭いやせんぜぃ!」
鷹匠になるなら、そのぐらいの覚悟で挑むほうがいいんじゃないかと思うわけです。
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