野生では防御力に優れていることもひとつの才能です。
守りが固い動物といえば……
「アルマジロ」と「センザンコウ」が思い浮かびます。
硬い甲羅の背中で、丸くなって身を守る。
どちらもダンゴムシみたいな哺乳類という印象じゃないでしょうか。
この両者、実はまったく違います。
また、防御に極振りしているわけでもありません。
似ているようで似ていないアルマジロとセンザンコウ。
この記事を読めば、まったく違うことがわかるでしょう。
アルマジロとセンザンコウは別な哺乳類
アルマジロは丸くなって身を守ることで有名です。
この生態がなければ、「気持ちの悪いでっかいネズミ」というだけ。
ダンゴムシと同様に、丸くなることで好かれる動物でしょう。
やはり丸くなる動物にセンザンコウがいます。
こっちは少しマイナーかもしれません。
最近、いくらか知られてきたという感じでしょうか。
例の新型コロナウイルスは、このセンザンコウからヒトに感染するようになったといわれてもいます。
このことからも「センザンコウがアジアの動物」ということがわかります。
生息地と体の形が違う!
アルマジロの生息地はアメリカ南部から南米。
最大のオオアルマジロは150cm近くもある。
50cmは尻尾です
近年「かわい~」と人気のヒメアルマジロは最小種で、たった10cmほどしかありません。
手乗りアルマジロですね。
種類で多少違いますが、ドーム状の背中から顔や手足が出ています。
カメのイメージでいいと思います。
センザンコウは最大のオオセンザンコウがやはり150cmくらいある。
このうちの半分は尻尾なので、センザンコウのほうが立派な尻尾ですね。
生息は主に南アジア。
アフリカにもいます。
『和漢三才図会』には「九州にもいた」と書かれているのですが、事実は不明です。
台湾にはいるので、可能性もなくはないかな。
センザンコウはカメというより、フォルムはアリクイかカワウソに近いです。
円錐形の顔に、尻尾まで覆われた鱗。
ヘルメットのようなアルマジロの背中とはまったく違う。
見た目からしても似ていないのです。
むしろ爬虫類っぽいですよね。
このようにアルマジロとセンザンコウは生息地も体型も違います。
ただ、丸くなる習性で、どちらも主食はアリ。
歯が退化しているという共通点もある。
センザンコウには長い舌があり、
アルマジロには少し歯が残っています
しかし、アルマジロは被甲目で、アリクイの近種。
センザンコウは鱗甲目で、パッと見アリクイっぽいのに、実はネコやイヌ、あるいはウマにも近いとされています。
つまり、まったくの他人。
それなら「丸まる生態が偶然似ただけ」と思いたいですが、これも少し違うようです。
「丸くなる」「防御に極振り」は誤解?
アルマジロは被甲目と書きました。
「甲羅を被った」ということです。
実際にアルマジロを見ると、背中が硬い甲羅みたいになった大ネズミ。
漢字でも「鎧鼠」と書きます。
この甲羅は体毛が変化したもの。
「銃弾も弾く」といわれる強化装甲ですから、「すげぇ剛毛」だったんでしょう。
アルマジロは丸くならない!?
この背中が蛇腹のようで、ダンゴムシのように丸くなる。
アルマジロのイメージといえばこれ一択ですが、
ほとんどのアルマジロは丸くなりません。
丸くなるのはミツオビアルマジロ属の2種だけ。
他は腹を下にして必死に耐えるだけ。
防御に極振りなんてとんでもない!
「ひっくり返されないように頑張ってます」の抵抗なのです。
まず防衛用に背中を固め、その中にボール状になる奴がいるって話。
ダンゴムシと思ったらワラジムシだったような裏切り。
アルマジロのほんの2種が丸くなるだけで、
種全体が「丸まるキャラ面」しているとは。
まあ、人間が勝手にそう思い込んでいるだけなんだけど。
アルマジロがみんな丸くなるというのは誤解でした。
では、センザンコウは?
センザンコウの防御+攻撃は強烈
鱗甲目のセンザンコウは皮膚が鱗状です。
一枚の盾ではなく、小さい盾を繋ぎ合わせた構造。
これは稼働が可能で、どんな形状にもなれるってこと。
頭を腹につけ、その上に長い尻尾を丸めて、丸くなることができます。
ボールというより、「ロール」が近いかも。
どのセンザンコウもそうして身を守ります。
鱗はヒトの爪と同じケラチン質
さらにセンザンコウは攻撃面も捨てませんでした。
丸くなれば寝ていた鋭い鱗が立って、松ぼっくりのようになる。
見るからに痛そう。
どんな猛獣もおいそれと手が出せません。
そして、センザンコウには長く太い尻尾もあります。
それをムチのように振り舞わす。
もちろん尾にも鱗がびっしりですから、ちょっとした凶器ですよ。
強固な装甲をしつつ、攻撃も忘れなかったセンザンコウの周到さを、耐えるだけのアルマジロにも見習ってほしかったものです。
しかし、自慢の鱗がセンザンコウの寿命を縮めようとしています。
密輸されるセンザンコウとペットになるアルマジロ
センザンコウは昔から食用にされてきました。
センザンコウの生息域は「四つ足で食べないのは机だけ」という国が多い。
人間の食欲に、鱗は太刀打ちできなかったようです。
たしかにエビみたいに美味そうに見えなくもない。
また、鱗のある哺乳類は珍しい。
レアなものは珍重されるのが世の習い。
縁起物とされるばかりか、鱗が漢方薬や魔除けになると乱獲もあったのです。
媚薬にもなるらしい。
医学的根拠はまったくありません
「世界一密売される哺乳類」といわれるくらい。
センザンコウは基本的に年に一頭しか産みませんから、繁殖力が高くもない。
現在はセンザンコウ全種が絶滅危惧種です。
その点、アルマジロは別な運命を歩んでいます。
地元では地面に穴を掘る害獣と駆除されることもあるのですが、
丸くなる生態がウケて世界的にもアイドル的動物。
数が少ないのは同じですが、センザンコウほど心配されていません。
ペットで飼うこともできます。
餌はドッグフードでもいいそうで、意外と手軽です。
暖かい温度と、穴掘りの習性を満足させる準備さえあればじゅうぶん。
新聞紙でも切って山にしておけば、そこを掘るみたいですね。
特に飼育許可の申請も要りません。
アルマジロとセンザンコウは似ているようで、だいぶ違いがあるようです。
まとめ
アルマジロとセンザンコウはどちらも丸くなる。
その印象が強く、似ていると思いがち。
でも外見からしてだいぶ違います。
アルマジロなんぞは、ほとんどが丸くもならないという詐称です。
どの動物も弱点は腹ですから、背中を強化して守るのは間違っていません。
人間だって身を守るときは丸くなります。
そうしてセンザンコウと、アルマジロの数種が丸くなることを習得したのでしょう。
種類は違っても、同じやり方で防御を高めた。
こういうのを見ると、「進化の方向って共通なんだな~」と感じるのです。
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