絶滅した野牛オーロックスが復活?バイソン、バッファローとは違う?

壁画の画像 陸生動物

2021年は丑年。

牛肉、牛乳、牛革……と、なにかとお世話になってる牛さん。

有名な『ラスコーの洞窟壁画』にも描かれていますね。

古くから人間と縁がある。

洞窟に描かれているのは「オーロックス」。

ヨーロッパでは野生化していた大型牛。

牧場で見る牛とは違います。

400年ほど前までいたのですが、絶滅してしまいました。

在りし日のオーロックスとは、どんな牛だったのか。

現在の大型牛「バイソン」「バッファロー」との違いは?

オーロックスの疑問を解決していきましょう。

スポンサーリンク

オーロックスはどんな牛?

オーロックスは肩までの高さが160~180cm。

頭から尾までが3mあり、体重は推定で最大1500kg。

畜牛が体長2m、体重700kgですから、5割増しくらいもあった大型牛です。

メスは畜牛と同サイズでした

角は横に広がりながら内側に入って前方に伸び、先端が上に向く感じ。

長さは80cmにもなり、見るからに殺る気マンマンですよ。

牧場で草をムシャムシャしている畜牛と違い、威風堂々とした風貌がたまりません。

「COW」ではなく「BULL」なんですね。

The Aurochs

オーロックス誕生~絶滅

オーロックスは約200万年前、インドで誕生しました。

ヨーロッパに到達したのが27万年前。

その後、草原などに棲みつきます。

日本で化石も見つかっていて、四方に広く移動したことがわかる。

ただ、アジアでは紀元前にほぼ見られなくなり、ヨーロッパで残ったのです。

非常に攻撃的で、先史の人間とバトることも多かった。

洞窟壁画に描かれるくらいは絡みもあったようです。

この身近な戦士を、人間は畏怖しました。

国章や家紋にもよく使われています。

「強さ」の象徴だったわけです。

しかし、その強さ故に狙われることに。

オーロックスの記録は、ローマ帝国時代にも見られます。

強者が力を誇示したがった時代。

オーロックスはグラディエーター(剣闘士)の好敵手とされたのです。

むろん、普通に肉目当てで狩られることもあったでしょう。

巨体と角が武器のオーロックス。

俊敏ではあったらしいが、体当たりくらいしか攻撃はない。

見た目のわりに、戦いにくい相手ではありません。

おかげで数が激減。

1627年、ポーランドにいた最後の一頭が死んで絶滅したのです。

しかし、大型牛は今もいます。

バイソンやバッファローなど。

それらはオーロックスと違うのでしょうか?

スポンサーリンク

「バイソン」「闘牛」「バッファロー」の違い

ヨーロッパには、ステップバイソンという大型牛もいました。

バイソンはアメリカバイソンヨーロッパバイソンの2属が生き残っています。

この現存バイソンが、ステップバイソン(1万年ほど前に絶滅)とオーロックスの交雑で生まれたと考えられています。

最大級武闘牛バイソン

アメリカバイソンは体長3~3.8mで、体重は1000kg近く。

北方系の哺乳類ではホッキョクグマより大きい最大種。

ヨーロッパバイソンは畜牛とあまり変わりません。

盛り上がった肩。

頭部から肩にかけての毛が長く、リーゼントを思わせる。

見るからに武闘派って感じ。

やはり「強さ」の象徴として、ネイティブに狩られたので、数を減らしました。

現在は保護されています。

バイソンの画像

3万年くらい前まで生息していた一種「ジャイアントバイソン」は、体長4.8mもあり、外側に広がった角の間も2mという規格外のデカさ。

史上最大のウシといわれます。

闘牛のウシたち

強い牛といえば、今は闘牛を思い浮かべるでしょう。

スペインの闘牛は有名です。

あの闘牛は「リディア種」という戦闘牛。

ちなみに、闘牛士が振る赤い布は、観客が興奮するためのもの。

牛は色が見分けられません

日本にも闘牛はあります。

「牛相撲」「角突き」という、牛同士が角で押し合うスタイル。

こちらは黒毛和牛や、ホルスタインと黒毛を掛け合わせた種が使われています。

バッファローは水牛!

バッファローと呼ばれるのは「水牛」のこと。

一般にアジアスイギュウを指します。

バイソンを「バッファロー」と呼ぶこともあり、
混同しやすいのですが、バイソンは草原・森林、水牛は水場の近くに生息しています。

体長2.5~3.5mで、体重は最大900kg。

昔、岡本太郎がデザインした近鉄バファローズのマーク(S字の角が上に伸びていた)がカッコよくて好きだったのですが、水牛の角は「ω」(3を横にした形)。

横下方に伸びてから、カーブして上に行く。

むしろ、近鉄マークはオーロックスに近い。

バッファローの画像

強いイメージですが、だいたいは家畜にされていますね。

実はこの家畜の牛が、オーロックスの子孫になるのです。

スポンサーリンク

オーロックスの復活は近い?

猛々しいオーロックスですが、大きいだけで形態は畜牛とほぼ同じ。

オーロックスもアジアでは1万年前くらいから家畜化されました。

さらに、野生化したオーロックスも広く広まった。

偶蹄目は交雑がとても多く、現存する多くのウシにオーロックスの遺伝子が見つかっているのです。

とすれば、オーロックスを復活させられるかも!

そんな取り組みも行われています。

動き出す復活計画

最初は、1920年代に改良されたドイツの「ヘック牛」

オーロックスっぽい畜牛を見つけて、交配させた。

でも、畜牛と同サイズだし、角の形もオーロックスと違う。

「失敗!」

このヘック牛を改良したのが「タウルスキャトル」

ヘック牛の二の轍は踏めない!

ドイツの威信を懸けて1996年に誕生しました。

「いささか小ぶりだが、だいぶオーロックスに近づいた」と成果も上々。

Taurus cattle – Video Learning – WizScience.com

他にもヨーロッパではオーロックス復活計画
「タウロスプロジェクト」
「ウルズプロジェクト」

が進行中。

でも、どうしてそんなに精力を傾けオーロックスを復活させたいのでしょう?

それはオーロックスが「キーストーン」だからです。

オーロックスはヨーロッパに不可欠だった!

「キーストーン」は文字通り「鍵」のこと。

ある種の生物は、その地域の環境保全に絶対必要で、いなくなると全体が狂うという考え。

オーロックスがこの「キーストーン種」というわけ。

適度に草を食べ(減らし)、その糞が肥料となって森が作られる。

その作業をしていたのがオーロックスなのです。

また、オーロックスが欧州全土でシンボルになっている。

国章、家紋だけでなく、地名や格言にも見られる。

神事で生贄にされたこともありました。

オーロックスは文化的にも欠かせないのです。

畜牛にも肉を得るため、大きく改良されたものは多い。

牛の品種改良技術はかなり蓄積されている。

「それならオーロックスも」と期待は膨らみます。

ヨーロッパの草原を駆ける野牛オーロックス。

近い将来見たいものです。

スポンサーリンク

まとめ

草食で、のんびりとして見える牛。

家畜に甘んじている印象ですが、元々は強い大型動物。

特にオーロックスは畏れられていたのです。

だから、欧州文化に根づいている。

その血統は、バイソンや牧場の牛にも引き継がれています。

絶滅はしても、その系譜は残っているなんて浪漫ですよ。

純血オーロックスは無理でも、近い牛が作れそうな気がします。

コメント