近年、スピノサウルスという恐竜に注目が集まっています。
背中に半円の帆を持った恐竜です。
『ジュラシックパーク3』にも登場しましたね。
現在ブレイク中の恐竜です。
なぜ注目されるのか?
それは「最大の肉食恐竜だった」とされているからです。
最大肉食恐竜といえばティラノサウルスと信じ込んでいる人はもう古い!
時代はスピノサウルスなのです!(……そこまでではないか)
でも本当にティラノサウルスより強かったのか?
両者を比較しながら、スピノサウルスの素顔や強さを考察します。
新王者スピノサウルス登場!
今から9500万年前。
現在の北アフリカにあたる地域に、スピノサウルスは生息していました。
北アフリカといえば砂漠地帯。
でも、スピノサウルスの時代は湿地が広がるパラダイスだったんです。
もちろん恐竜もいっぱい。
その頂点に君臨していたのがスピノサウルスです。
忘れられた巨大肉食恐竜
スピノサウルスといっても、ピンとくる人は多くないでしょう。
ティラノサウルスより強いといわれるのに、マイナーなのは否めない。
それには理由があります。
エジプトの砂漠で化石が発見されたのは1912年。
発見者はドイツの考古学者、エルンスト・シュトローマー。
ところが化石はほんの一部分。
「かなり大きな恐竜らしいが、さっぱりわからん」
それもそのはず。
それは他の恐竜には見られない骨の持ち主だった。
なんと背骨から脊柱(supino)、トゲみたいな骨が伸びていたのです。
とりあえず「スピノサウルス」と名前はつけたけど、全体像は不明のまま、骨はミュンヘンの博物館に保管されていました。
その貴重な化石が、1944年のミュンヘン空襲で消失。
今は写真だけしか残っていません。
ほとんど忘れられていたのです。
ティラノサウルスより大きかった!?
その後、同じような背骨の恐竜化石が相次いで見つかります。
「これはスピノサウルスの近種ではないか」
それらは少し小さいものの、多くの骨があり、全体像もわかる。
つまり、それらの完全な化石に、スピノサウルスの部分的な化石を合わせて拡大すれば、おおよその姿と大きさも推測できるってことです。
その結果――
- 全長17m
- 体重6~20t(諸説あり)
- ワニのような細長い頭部と牙
- 頑丈な四肢
- 巨大な爪
- 背中に高さ1.8mもある帆のような突起
14mといわれるティラノサウルスよりも大きい肉食恐竜だと判明したのです。
動画で見ると、巨大さや迫力が伝わるでしょう。
ティラノサウルスといえば恐竜界の絶対王者。
そこに新しく現れたのが伏兵スピノサウルス。
比較しながら、さらに詳しく解説しましょう。
スピノサウルスVSティラノサウルスどっちが強い?
肉食恐竜の両横綱といった2種ですが、戦ったことはありません。
スピノサウルスは9500万年前の北アフリカ。
ティラノサウルスが登場するのは早くても8000万年前で、生息は北米。
どちらが強かったかは想像するしかありません。
咬む力は弱かった?
両者の違いは顔です。
ゴジラのようなティラノサウルスに比べ、スピノサウルスの顔は細長い。
頭だけで2mくらいの長さがあり、ワニや海鳥のように見える。
牙もティラノサウルスより小さい。
咬む力はティラノサウルスが圧倒的に上らしいです。
これには理由があるのですが、後で説明します。
とにかく咬み合いではスピノサウルスは不利でしょう。
怖ろしい巨大な爪
最近は羽毛つきで、ヒヨコみたいに描かれるティラノサウルス。
「がっかりだ」と思った人も多いのでは?
もうひとつ弱そうなのが貧弱な腕。
王者らしからぬ細腕ですよ。
一方のスピノサウルスの前腕はたくましい。
2mほどの太い腕の先には、40cmもある爪が装着されています。
そんな爪で引っかかれたら、ティラノサウルスも無事では済みません。
ティラノサウルスの咬む力の強い頭は1つに対し、振り回せる強力な腕が2本のスピノサウルスは、優位な戦いができるかもしれません。
背中の帆は何のためなのか?
ところがスピノサウルスには運命的な弱点があります。
キャラ立ちの理由でもある背中のトゲ。
背骨から外に柱骨が伸び、背びれのようになった帆状の部位。
体温を逃がすためのラジエーターとか、オスがメスにアピールするためといわれています。
スピノサウルスは化石がほとんど発見されていないので、
メスにも帆があったかどうかはわかっていません
でも、これって背骨が外に飛び出しているってことですよね。
危なっかしい作りですよ。
横転したり、背中をぶつけたりしたらポキン。
帆が折れれば、背骨も折れて神経が切れる。
それでスピノサウルスは終わりです。
とてもティラノサウルスのようなパワフルな大型種と戦うのは危険すぎ。
僕はティラノサウルスのほうが強かったと思います。
こんな弱点を思い切りさらけだしているんですから。
最大の肉食恐竜はたしかにスピノサウルスですが、最強はやっぱりティラノサウルスですよ。
それにスピノサウルスの意外な一面もわかってきました。
半水生の魚食獣だったというのです。
水中のスピノサウルス
『ジュラシックパーク3』では陸をガンガン走る凶獣といったスピノサウルスでした。
追っかけられたら恐怖です。
しかし、最近はよく泳いでいたと考えられています。
前項でも触れた「細長く、咬む力がそれほど強くない口」。
獣を狩るよりも、魚を獲るのに適しています。
スピノサウルスは主に水中で魚を食べていた可能性が高い。
とすれば、背中の帆も水中での姿勢安定のためとか、影を作って魚を集めるとか、別な使い道だったかもしれない。
魚は影に集まる傾向があります
太い腕も、水を掻くには必要でしょう。
そう言われると、見れば見るほどスピノサウルスはワニっぽいし、水が似合いそうに思いませんか?
水陸両用だが中途半端
気になるのは、
どれくらい水中で過ごしていたのか?
泳ぎは上手かったのか?
これはわかっていません。
ただ、骨格から陸よりも水中のほうが動きやすかったらしいと思われます。
でも、頭がかなりデカいので、泳ぐのは大変だった気がするんですが。
肉食恐竜とはいえ、魚食いだとちょっと迫力ダウンでしょうか。
それも完全に水中に適応したわけでもない。
弱点の帆は出しっぱなし。
スピノサウルスはかなり中途半端な恐竜です。
とてもティラノサウルスに代わって恐竜王になれるとは思えません。
それでも姿がユニーク、最大の肉食恐竜、ということもあり、魅力的なのは間違いないでしょう。
まとめ
スピノサウルスはずっと謎の恐竜でした。
それがわかってみると、ティラノサウルスより大きな肉食恐竜。
爬虫類らしいフォルムと、特徴的な背中の帆。
人気映画に抜擢されたのも当然のニュースターです。
「スピノサウルス」……名前を憶えておかなきゃいけません。
しかし、映画のようにティラノサウルスのような相手と、組み合いのバトルをやっていたかは微妙。
大型草食恐竜を積極的に襲っていたかもわかりません。
まだまだ謎多き恐竜なんですね。
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