魚っぽい哺乳類といえば、クジラ、イルカ、そしてシャチ。
どれもクジラ目に属する海棲哺乳類です。
クジラ、イルカは癒し系ですよね。
なのに、シャチだけは「海のギャング」と怖れられる。
英語では「Killer Whale/殺人クジラ」。
学名は「冥界の魔物」。
ケルベロス的なカッコよさじゃありませんか!
でも、サメほど冷徹や凶悪な印象もない。
シャチは水族館で芸もするし、人にも懐く。
サメがバリバリの武闘派なら、シャチはインテリヤクザって感じ。
漫画の四天王で、最初に出てきて主人公にやられる当て馬がサメで、シャチは一番最後の強敵キャラに思えます。
実際シャチは「海で最強の生物」と呼び声も高い。
天敵もいないといわれています。
その理由はとにかくハイスペックだから。
シャチの能力を知れば、強さもわかるでしょう。
シャチとホホジロザメの比較
シャチはほぼ全世界の海に生息しています。
白黒のボディカラーは有名ですよね。
このシャチが「最強の海棲動物」とされるのですが、ほとんどの人はジョーズのモデルとなったホホジロザメこそ「海の王者」と考えているかもしれません。
ホホジロザメの別名は「白い死神」。
「冥界の魔物」に劣らぬ中二病ネーム。
両者を比べれば、シャチの凄さがわかりやすいと思います。
シャチは大きく、装甲も厚い!
シャチはオスが6~7mで、寿命は30~50年。
メスが5~6mで、50~80年生きるといわれます。
ホホジロザメは約5m(寿命は20年くらい)。
それだけでもサメなど敵ではありません。
大きさだけでなく、骨格からまるで違います。
シャチは哺乳類だから、骨組みは人間と同じ。
肋骨や手足の骨もあり、作りは頑丈。
ホホジロザメは軟骨魚類で、頭蓋骨と背骨にヒレがついている程度。
硬骨魚類のイワシやサンマより骨が少ない。
機動力はあるけれど、装甲の薄いゼロ戦みたいな作りです。
とてもシャチとの肉弾戦では勝ち目ありません。
その機動力すらシャチが上回っています。
スピードも持久力もシャチが上
シャチの泳ぐ速度は最高で80km/h。
マグロやカジキのような海のスピードスターには劣りますが、哺乳類ではトップクラスの速さです。
ホホジロザメの最高速度は40km/hくらい。
倍も違います!
さらにシャチは一日で100kmも移動する持久力もある。
短距離、長距離どちらもいけるのです。
そして執着性も持っています。
1977年に公開された映画『オルカ』は、連れ合いを人間に殺されたシャチが、復讐で人間を襲うというフィクションなのですが、シャチには「恨み」の概念が理解できるんです。
仲間を殺した人間の船を、ずっと追いかけてきた事例も多い。
逆に「仲間や子供の死を悼む」こともあります。
恨みも追悼も、高い知能がなければできません。
狩りにもインテリなところが見られます。
高い知能を持つ狩りの名手
シャチとホホジロザメの食性は似ています。
魚はもちろん、アザラシや海鳥も食べる。
群れで獲物を追い込み、逃げられないように追い詰めるのです。
口から吐き出した魚を囮にして、近づいた海鳥を捕まえる狡猾さもある。
とてもホホジロザメには真似できない芸当ですよ。
そのうえ、3mのホッキョクグマまで襲うのはシャチだけ。
海に引きずり込んで、クマを窒息させるのです。
かなりえげつない。
そのくせ水族館では客に愛想を振りまくり。
白黒ボディーで「私は海のパンダさん」みたいな顔をしている。
一番怖いタイプです
ホホジロザメも本能的にシャチの恐怖がわかるのでしょう。
シャチが来たら「うわっやべぇ」と逃げます。
四天王スターターは「俺は強いぜ」と聞かれもしないのに自分語りを始めてやたら偉そうなものですが、最後の四天王には文句ひとつ言えないのが鉄板。
あのホホジロザメですら、シャチの敵ではないのです。
では、シャチの天敵となる動物はなんなのでしょうか?
シャチの天敵と凶暴性は?
一般に「シャチの天敵は人間だけ」といわれます。
もちろん、素手で勝てるわけじゃありません。
「武器を持った人間」ということになります。
といっても、シャチは人間をそれほど脅威とは思っていないでしょう。
人間が間接的な天敵だった
捕鯨国と槍玉にあがる日本でも、シャチ漁はありませんよね。
世界にシャチを食べる文化がある民族は、ひとつもないのです。
理由は簡単。
「不味いから」
硬くて、有毒物質も混じっているのだそう。
わざわざ殺す必要もない。
それでもシャチは漁業の邪魔になることがあります。
人間の獲物を横取りすれば楽ですからね。
この辺もインテリヤクザの悪どさでしょうか。
泥棒シャチはやはり駆除するしかありません。
他にも、人間による海の汚染で死ぬシャチ。
水族館で飼われているシャチも、野生のシャチより寿命がかなり短くなる。
直接手を下さなくても、人間の存在はシャチのストレスのようです。
超巨大ザメ・メガロドン絶滅はシャチの仕業?
シャチにしても、大きな敵は襲えません。
敵とはいえないまでも、大きなクジラ、大きなサメなどは苦手な相手でしょう。
ただし、大きいからといって安心もできません。
例えば、今から150万年前ほどまで生息していた巨大ザメ・メガロドン。
ホホジロザメの3倍、シャチの2倍くらいもある大ザメですが、この絶滅の原因がシャチではないかと考えられています。
確かにシャチの出現とメガロドンの絶滅は時期が一緒なんですよ。
メガロドンがシャチに捕食されたこともあったかもしれません。
一番は獲物を競合して、身体能力に劣るメガロドンが負けたと思います。
現代の大物生物だって、餌の奪い合いでダメージを食うこともあるでしょう。
だから「シャチは海で最強の動物」は間違っていません。
でも、シャチは天敵の人間を襲わないんでしょうか?
殺人シャチ「ティリクム」の殺意?愛情?
恨みを忘れないシャチが、人を殺しても不思議はない。
アメリカのシーワールドで飼われていたシャチ『ティリクム(♂)』は、3人の人間を殺しました。
1991年、1999年、2010年に、一人ずつ。
で、2017年に病死。
その間、ティリクムはショーで芸を披露していました。
「殺人シャチなのに普通に飼育してたんか?」と思いますよ。
でも、ティリクムに殺意はなかったとされています。
3件とも、人間とじゃれて、水に引きずり込んだと判断された。
知能が高くても、加減はわからないようです。
3人の溺死に関わったというだけで、罪には問われなかったのです。
ティリクムの腹の中まではわかりません。
「ふざけたふりして殺してやろう」
「殺処分されそうになったら動物愛護団体が騒いでくれるだろう」
精神異常の演技する容疑者みたいな小狡い考えはさすがに無理ですかね。
施設の安全管理が問題のような……
シャチが殺意から人間を襲った記録はありません。
むしろ好奇心が強く、人間に親しむ傾向があります。
意味不明ですが、イルカ類自慢のエコロケーションの音波で人に話しかけることもあるらしい。
海の最強動物も、人間とは親和性が高そうですね。
まとめ
シャチの強さの理由を述べてきました。
驚異的な身体能力と高い知能。
悪どいこともやりますが、人には害意がない魅力的な動物です。
この記事では獰猛な部分をテーマにしましたが、シャチにはいろいろな側面があり、すべてを伝えることは難しい動物でもある。
実際にシャチを見て、その素顔に触れるのが一番でしょう。
北海道・知床では4~7月、シャチウォッチングの観光船が出ています。
シャチのいる水族館は「鴨川シーワールド」と「名古屋港水族館」のみ(2019年現在)。
意外と見るのは大変そうだけど、機会があれば会いに行ってみましょう!
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