ナマズと言えば「地震」。
わりと馴染みがある淡水魚なのに、どう考えてもあり得ない「地震を起こす能力持ち」のイメージが強い。
もちろん、ほとんどの人は信じてませんよね。
ただの言い伝え。
ナマズの気分次第で、グラグラやられちゃ迷惑ですよ。
しかし、言い伝えには誕生秘話があり、どこか根拠があるもの。
何かの理由で、ナマズと地震の深~い関係ができたはずです。
ナマズと地震の関係を調べている研究室もある。
頭っから「非科学的」と言えない空気ですよ。
ナマズと地震は、どうやって繋がったのか?
本当に、地震を予知できるのか?
疑問を解決していきましょう!
ナマズが地震を起こす理由
日本は地震の多い国。
現代に至るまで、何度も被害を受けてきました。
地震が多発するのは、日本の近くでいくつものプレートが交差しているから。
プレートが押し合いへし合いやっているうちに、歪みが生じて、その反動で大きく動く。
そして、地面が揺れるわけです。
このメカニズムは、今はよく知られていますね。
でも、昔はわかりませんでした。
そこで「何か(誰か)のせいにする」考えが生まれることになります。
地中に潜む「地震龍」と「要石」
古代、
「地震は“龍蛇(りゅうだ)”の仕業」
とされていました。
龍蛇は、龍とか蛇のようにうねうねしたもの。
この場合は、厄災を起こす龍か蛇のような霊獣と考えていいでしょう。
ナマズじゃないんですね。
この龍蛇が地底にいて、日本列島をぐるりと囲んでいる。
頭が茨城県の鹿島神宮の地下、
尾は千葉県の香取神宮の地下にあるんだとか。
てことは、僕の故郷の北海道は胸の辺りで、東京はぐるっと日本海から九州を回って太平洋側を東進した尻尾の先のほうに当たる。
二つの神宮には、それぞれ頭と尾を押さえつけている「要石(かなめいし)」があります。
どちらの石も、地面からちょっと出ているだけ。
しかし、実は巨石で、全体でどれほど大きいかわからない。
どこまで掘っても底に着かないらしい。
そんなデカい石で両端を押さえ、龍蛇も暴れることができず、地震が起こらないという話。
日本を囲む霊獣を押さえる、大きさ不明の石。
このデタラメなスケール感がたまりません。
この龍蛇が、大ナマズに成り替わるのですが、その経緯はよくわかっていません。
ナマズは身近な“龍”だった!?
日本書紀にも、ナマズと地震の関わりはでてきます。
江戸時代には地震が多くあり、「身を守る」御利益のナマズの描かれたお札がよく売れたそうです。
すると、「ナマズが地震を起こす」は、
8世紀には存在し、
江戸時代には広く知られるほどになっていた。
でも、どうしてナマズ?
大ミミズとかのほうが、龍蛇っぽいし、地属性もありそうなのに。
まず、ナマズのスタイルかもしれません。
ナマズは魚ですが、全体的に雨だれ型で、ウロコがない。
ヌルヌルしているので、蛇のようでもある。
ヘビがヌルヌルに見えるのは、
露などでテカっているから
あとは、大きさ。
60cm~1m超えもいる。
日本で普段見る淡水魚では大きい部類でしょう。
ドジョウでは迫力に欠ける。
水底に潜む大魚は、龍のイメージといえなくもない。
どこか仙人めいたヒゲもあるし、天災を起こす術者みたいな雰囲気も感じます。
それ以上に、実際「地震の前に暴れる生態だから」も考えられます。
ナマズの行動と、地震が繋がっている。
だから、龍蛇がナマズに置き換わった。
古人の生物観測は侮れません。
動物の様子から、自然に起こる未来を読み解く知恵は、現代人以上だったはずです。
たしかに、地震の前にナマズが暴れるといいます。
それは本当なのでしょうか?
ナマズは地震を予知できるか?
地震などの前に、動物がいつもと違う行動をすることは、よく知られています。
「宏観(こうかん)異常現象」というもの。
動物の異常行動以外にも、地鳴りや珍しい気象といった自然現象も入ります。
ただし、科学的に証明されてはいない。
「そのような傾向が見られる気がする」みたいな頼りない話。
「ナマズが地震を感じて暴れる」も、怪しくなってきました。
実はスゴイ!ナマズの感覚
一応、可能性はあります。
ナマズは汚れた水の底に棲む生き物。
視界が悪い場所では、感覚器官を研ぎ澄ますしかありません。
ナマズは感覚が鋭いのです。
体表に側線器官があり、わずかな電波も感受しているかもしれません。
なんとナマズは全身で味を感じられることがわかっています。
味蕾の数は20万個(人間は1万個)で、生物界トップ!
全身が舌みたいな魚。
電波にも高感度なのは、じゅうぶん考えられます。
地震の前には、地磁気が乱れる。
高感度で、水底にいるナマズなら、まっさきに異変に気づく。
そして、暴れて、それが人に目撃されたら……。
「ナマズが騒ぐと地震が起きる」となっても、不思議はないでしょう。
魚類は全般、電波の受信力が高いのです。
海でもリュウグウノツカイやメガマウスなどの深海魚が、地震前には浅瀬に現れる。
そんなニュースがあると、必ずSNSでは「大地震くるの?」と騒ぎます。
魚類の地震予知の信奉者は多い。
それも、魚類の感度の高さを知れば、決して非科学的な話じゃありません。
ナマズは川にいる、大きな魚ですから、異常行動は目につきやすい。
そうした観測から、地震とナマズが結びついたのでしょう。
ナマズ研究は道半ば
現在、ナマズの行動から地震を予想する研究が行われています。
結果、ナマズにわずかな変化があり、地震と関連しているらしいこともわかっています。
科学も「ただの言い伝え」と無視できないんですね。
しかし、予知できるレベルではありません。
ナマズで地震がわかるほどではないのです。
生物は気まぐれですから、感知していたとしても、暴れるかどうかは気分。
ナマズに限らず、動物が災害を事前に察知していることは、立証できていません。
ナマズと地震の話は
『可能性はあるが、はっきりしない』
が結論になります。
ナマズが変だからといって、注意報を出すのも、無駄なパニックになるだけですし。
地震大国の日本としては、残念なことです。
でも、現代の精密機器でやっと観測できるようなナマズの変化を、昔の人が黙視で気づいていたとしたら、とんでもない観察眼だと驚きますね。
まとめ
大地を揺るがす龍蛇が、いつしかナマズになった。
その理由はおそらく、ナマズの魚らしくない体型と、大きさ。
そして、観察から導いた関係性に因るもののようです。
きっと今よりも、ナマズが川や田んぼで見られたこともありそうです。
むろん、ナマズは地震を起こすほど大きくもないし、そんな特殊能力もありません。
いつもと違う磁気の変化を感じ取り、反応しているだけでしょう。
それも「超能力」。
たくさんの動物がそれぞれ超能力を持っており、予知に活かせないか研究されているのです。
いつかナマズがみんなの命を救うかも。
時間かけてスプーンちょっと曲げる超能力は……かくし芸くらいしか使い道ないな……。
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