鳥と昆虫以外で、飛ぶ能力を身に着けたのがコウモリ。
トビウオやムササビも飛ぶっちゃ飛ぶ生き物ですが、それらはどちらかといえば『滑空』であって、自力で『飛べる』コウモリよりは格下って気がしませんか。
哺乳類でありながら、「俺は重力に囚われないぜ」と、ただ一人飛べるようになったコウモリは、唯一無二の生物といえるでしょう。
加えて、あの逆さにぶら下がる習性。
飛べるくせに、こっちは完全に重力に屈している。
やることなすことが不思議でしょうがありません。
そんなコウモリは大都市でも普通に見られる馴染みの生き物。
今回は近くにいるのに意外と知らないコウモリのお話ですよ。
独特な翼の構造。でも進化プロセスは不明
コウモリは鳥ではありません。
動物好きには1+1=2レベルの基本なのですが、大人にもコウモリを鳥だと思っている人が少なくありません。
知らなくても困りませんしね。
歴史的にも古くは鳥類に分類されていましたし、哺乳類と判明した後にも「ネズミだ」「いや、サルに近い」「ウマにも似てるぞ」と意見が割れる割れる。
ウマヅラコウモリってのもいます
それだけ変な生き物ということですね。
コウモリが鳥ではない証拠は、羽がないことです。
コウモリは翼はあっても、羽(羽毛)はないのです。
コウモリの翼は前肢の親指が鉤状になっており、他の指は逆にほそく伸びて、その間に皮膜が張っています。
皮膜は後肢、あるいは尾にまで繋がっていて、全体的には三角形に近い。
こんな構造の翼はコウモリ以外では絵に描かれた悪魔ぐらい。
飛び方も鳥とはじゃっかん違う。
僕が初めてコウモリを見たとき、最初は蝶だと思ったくらいです。
でも、コウモリが翼を得たプロセスはよくわかっていません。
おそらく樹上で暮らすモモンガみたいな哺乳類がいて、最初は滑空していたが、より飛行能力に長じた個体が現れて、コウモリになったのでしょう。
飛べるようになってから、コウモリは超音波も使い始めます。
クジラやイルカもやるエコロケーション(反響定位)です。
レーダーで獲物を探したり、障害物を探知して避けたり、なかなか多芸。
オオコウモリはエコロケーションしません
唯一『飛べる』哺乳類になれたコウモリですが、代償もありました。
あの特有の逆さにとまるのも、つらい事情があるからのようです。
逆さにいるのは楽だから!?
コウモリは飛ぶことに全振りしているようなところがあります。
飛べるけれど、他のことはヨレヨレです。
しかも、元々は四足歩行のケモノですから、鳥とは体の構造からして違う。
コウモリにとって「枝にとまる」という行為は、本来できないのです。
人間だって枝に乗るのなら、手足を使って体を支えないとなりませんよね。
鳥が樹上にとまれるのは二足歩行ができるためで、足を乗せると爪がロックされて姿勢が決まるのです。
コウモリの足の爪もロックされるのですが、そこは四足歩行の悲しさ。
立っていられず、重力に負けて逆さになってしまいます。
誰にでも経験があると思いますが、鉄棒の上に立つよりも、足を引っかけて逆さにぶら下がったほうが楽じゃありませんか?
コウモリも同じ。
あれでコウモリはとても楽で、リラックスした状態なのです。
飛ぶケモノであるがゆえに、あんな滑稽なとまり方しかできないんですよ。
でも、逆さが続くと人間なら頭痛がします。
頭に血が下がってきて「ひでぶっ」ってなりそうな状態です。
コウモリは「ひでぶ」らないのでしょうか?
実はコウモリも血液が下がります。
ただ、コウモリは小さく、血液量も人間ほど多くありません。
「ひでぶ」るほどの影響がないのです。
1mもあるオオコウモリでも大丈夫
コウモリは逆さのままで排泄もします。
「顔にモロかかっちゃうでしょ!」
コウモリもさすがにそれは嫌なようで、排泄時は腰?を突き出して、体にかからないようにします。
ずいぶんとモノグサですが、逆立ち生活ではしょうがありません。
しかし、洞窟ならともかく、コウモリは家の軒下にも住み着く生き物。
そこでボトボト排泄されたのではたまったもんじゃない!
最後に、駆除についても触れておきましょう。
コウモリ駆除は素人には難しい?
コウモリは虫を食べてくれる益獣である一方で、悪い病原菌も持っています。
特に怖いのが狂犬病。
日本ではほぼ根絶されたとされる狂犬病ですが、感染するとまず助からない怖ろしい病気です。
現在まで日本ではコウモリが感染源の病気の報告はありません
それでも、糞が臭ったり、鳴き声がうるさかったり、農業被害があったりするので、コウモリに住みつかれたら駆除するほうがいいようです。
家に住みつくのは主にアブラコウモリ(イエコウモリ)という種で、大きさは5cm。
一匹だと可愛いけれど、コウモリはどんどん増えます。
百匹にもなったらホラーでしかありません。
早い段階での駆除を行ってください。
ところで、コウモリは鳥獣保護法で、捕獲や殺傷が禁じられているって知ってましたか?
そうなんです。勝手に駆除しちゃダメなんですよ。
自分でやるとしても、役所に届け出ないとならない。
駆除にしても、殺傷ができないため、追い出して住処の出入り口を塞いでしまうということしかできません。
でも、コウモリは2cmほどの隙間からでも侵入できるので、素人は大変でしょう。
面倒な場合は、駆除業者に頼むのが簡単ですね。
コウモリ撃退グッズみたいなものもあるのですが、ほとんど効果はなく、さっさとプロに頼んじゃうほうが賢明ですよ。
まとめ
空を飛びたい――誰もが一度は望む願いです。
コウモリはその夢を叶えたのか、たまたま飛べるようになったのかは疑問ですが、哺乳類の中ではネズミに次いで種が多いことから、飛べることが繁栄の理由にはあると思います。
また、人を魅了する生き物であるのも確かでしょう。
吸血鬼やバットマンなど孤高のゴシックヒーローのモチーフかと思えば、イソップ童話では裏切者。
裏表のある嫌な八方美人をコウモリと揶揄することもある。
このキャラの定まらなさまでが滑稽な存在です。
ホント面白い生き物だと思います。
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