口が大きいからメガマウス。
安直な名前をつけられたものです。
サメの中では有名な種だから、知っているだろうと思います。
メガマウスザメと呼ぶのが正式みたいですね。
「幻のサメ」なんてレア感MAXな枕詞がつけられていますが、日本近海ではたまに見られ、昔から「大口鮫」とそのまんまな呼ばれ方をされていました。
結局、デカい口にしか目が行かないのかよ!って感じです。
まあ、このデカい口のおかげで知名度も高いんですが、その生態などは謎がまだまだ多い。
そして、メガマウスが近海で目撃、捕獲されると大地震が来るなんて都市伝説もある。
その辺の真相についても考えていきましょう。
メガマウスの謎の生態。食べても不味い?
メガマウスは4~5mもあるサメ。
メスのほうがやや大きめで、過去には7m、体重1.2tにもなる個体も見つかっています。
大きな頭に大口。
口の幅は1m以上!
筋肉はブヨブヨで、泳ぎは下手。
その速度はたったの時速2km!
ゆら~と巨体を漂わせているだけだろうというやる気なさ。
鍛えていない筋肉は味も悪い。
食べた人によると「まったく美味しくない」のだそう。
恰好のいいサメとは言えません。
不格好な魚は意外と美味ってことが多いけれど、メガマウスはダメみたいです。
口内の反射板の光でプランクトンを誘う?
大口といっても、「お前を食べるためさ」ってわけじゃありません。
メガマウスはジンベエザメ(体長12~15m)、ウバザメ(体長10m)と同じプランクトン食性。
性格はとてもおとなしい。
口を大きく開けて海水を吸い込み、プランクトンだけ濾しとって食べています。
この食性の生物は「フィルターフィーダー」といわれます
この手のサメはみんな口がデカいのが特徴で、要するに大量に吸い込むために入口を大きくしているわけです。
5mもあるメガマウスですが、フィルターフィーダーのサメの中では最小なのです。
注目したいのは歯のように見える反射板のようなもの。
これを光らせて、プランクトンを集めているのではないかと考えられているのですが、反射板として発光力がそれほど大きいわけでもなく、真実はよくわかっていません。
捕獲されることがとにかく稀なので、研究のほうも進まないのです。
捕獲のほとんどは日本?古代ザメとの関係
2018年までに捕獲されたのは100匹程度。
そのうちの約半分は日本、台湾、フィリピンの周辺のものです。
インド洋、大西洋でも捕獲例があるので生息は世界中の温暖な海らしいですが、特に日本の南海はメガマウスの楽園なのでしょうね。
実際、日本では昔から漁師の間で「大口鮫」の存在は語られていたようです。
ただ、メガマウスが正式に認識されたのは1976年。
ハワイで船のアンカーに引っかかっていたのが発見されたのが最初です。
実を言えば、2000万年ほど前に生息していたメガマウスのようなサメの歯は以前から知られていました。
それが深海から浅瀬を行ったり来たりして、プランクトンを食べていたらしいと推察されたのですが、軟骨魚類のサメは骨格が残らないため、どんなサメだったのか謎だったのです。
しかし、メガマウスが発見され、その歯がよく似ていたことで、その古代ザメとメガマウスが近いことがわかりました。
その古代ザメの姿、食性や卵胎生であることなど共通していたかもしれません。
そう、メガマウスは生きた化石なのです。
日本はラブカやミツクリザメなど珍しい古代ザメがよく見られますから、メガマウスも比較的見られるのでしょう。
おそらく深海域が都市部に近く、排出される汚水によってプランクトンがよく育ち、それらを食べる魚が集まり、その魚を食べる魚が……という好循環を生んでいるからだと思います。
それにしても巨体のメガマウスが近年まで公式に発見されていなかったとは驚きですよね。
それには理由があります。
昼は深海、夜は浅海。食性と合わない生態
普通フィルターフィーダーは浅海にいることが多い。
プランクトンがいっぱいいるからです。
ところが、メガマウスは1.000~200mくらいの深度にいます。
浅瀬に来るのはだいたい夜。
それまでそんな生態のサメは知られていなかったんですね。
メガマウスの総個体数は不明ですが、おそらく多くもないと思われます。
深海で、あまりいないのですから、見つからなかったのも納得です。
でも想像してみてください。
暗い海に光を当て、こんな大頭大口のサメが水面下にいたら、もう化物にしか見えなかったでしょう。
海坊主とか思っちゃいますよ。
そんな異常な姿だからなのか、目撃や捕獲がニュースにもなるんですが、そこで必ずネットなどでは「地震が起こる!」と書き込みが殺到する。
メガマウスが現れると地震が来るという話があるのです。
メガマウスは大ナマズにも見えなくはないけど……。
メガマウスと地震って関係あるのでしょうか?
高いシンクロ率か!?メガマウスと地震は無関係?
1994年11月29日に福岡県博多湾でメガマウスが目撃された翌年、1月17日に大きな犠牲を出した阪神淡路大震災が起こっています。
他にもメガマウス発見と地震のシンクロはこんな感じ。
- 1998年4月23日三重県鳥阿田和 ――11日後、5月4日、石垣島南方沖地震
- 2003年9月3日神奈川県真鶴町――約3週間後、9月26日、十勝沖地震
- 2004年4月4日東京都東京湾――同日、4月4日、茨城県沖地震
- 2007年7月9日茨城県東沖――一週間後7月16日、 新潟県中越沖地震
- 2011年1月14日三重県尾鷲市沖――約2ヶ月後、3月11日、東日本大震災
- 2016年4月18日三重県尾鷲漁港――4日前、4月14日、熊本地震
まだまだ事例はあるのですが、いくつか抜粋してみました。
どう思われるでしょうか?
僕は「日本、地震多いな」なんですが。
メガマウスと地震は無関係だ!
リュウグウノツカイなどもそうですが、「地震を予知する」「災害を呼ぶ」といった生物は、みんな滅多に見られない共通点があります。
珍しいものが見られた→日常的ではない何かが起こる(気がする)に過ぎません。
生態には不明点も多いメガマウスですが、地震を感知するような能力はないでしょうね。
地震の多発する日本では、メガマウス目撃・捕獲と、地震を結びつけるのは容易いことです。
いや、メガマウスじゃなくても、きっとなんにでも結びつけられます。
シンクロ例を見ても、時期は近くても場所はずいぶん離れています。
メガマウスが地震を予知しているのなら、もっと被災地に近い場所で何匹も見られていい。
僕は「生物の不思議な能力」については否定しませんが、メガマウスと地震は典型的な後付け理論だと思っています。
まとめ
メガマウスが発見されてからわずか半世紀。
調査サンプルも少ないため、生態にはわからないこともたくさんあります。
もちろん生体が見られる水族館もありません。
今もってメガマウスが「幻のサメ」であることは間違いない。
そんな神秘性だから天変地異と関連ありそうに思われるのかもしれません。
メガマウスくらいでいちいち地震を心配していたら、身が持ちませんからね。
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