デメニギスの透明な頭は何?ドームの中はスゴかった!

水生動物

2009年に公開された、ある深海魚の写真に世界が驚きました。

それは『デメニギス』

頭が透明のドームに覆われ、中が丸見えなのです。

深海魚は奇抜なデザインが多いけれど、デメニギスは格別。

大事な頭をスケルトンにしてどーすんだ!

異質の進化ですよ。

「あの頭どうなってるの?」

誰でも思う疑問でしょう。

調べてみると、透明な頭には切実な事情もあるらしい。

水族館で見られるのか、食べられるのかも気になります。

深海のクリスタルボーイ『デメニギス』。

その正体はクリアになるんでしょうか?

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「頭スケスケ」デメニギスはどんな魚?

「頭部が透明の魚がいた!」

驚愕の映像は最近になって公開されました。

新発見なのかと思ったら、
デメニギス自体は1930年代には知られていたようです。

生息地は水深400~800mの、太平洋の亜寒帯海域。

日本でも岩手県以北にいて、たまには漁網にもかかるのです。

ところが、ドーム状の頭は2004年までわからなかった。

というのも、
深海魚のデメニギスは船に引き上げられるとドームが潰れてしまう
ので、頭がどうなっているのか考えもしなかった。

深海で泳ぐ姿が撮影され、初めて「なんだこれ?」となったわけ。

で、一般公開されたのがこちらです。

Barreleye Fish

「出目」を収納したドーム

なんとたまげたデザインでしょう。

未来的にも思えるし、不気味でもある。

大きく見えますが、デメニギスは15cmくらいです。

さらに驚くのは「目」。

尖った口の上にある、黒い部分じゃないですよ。

そこは鼻の穴。

ドーム内の緑の丸いとこが目です。

この目が筒状になっている。

双眼鏡をイメージするといいでしょう。

「管状眼」といいます

デメニギスは「ニギス」という魚の仲間。

ニギスは天ぷらに欠かせない「キス」に似た深海魚。

漢字でも「似鱚」ですが、キスとは違う魚です。

だからデメニギスは「出目」の「似鱚」。

未来感台無しですな。

デメニギスは食べられる?

ちなみにニギスは食用にされます。

流通はあまりありませんが、脂が乗って美味いんだとか。

デメニギスもたぶん食べられるし、味も悪くないと思います。

でも、食べたという話は聞かない。

あの姿で鮮魚店に並んでいても、食欲失せるしね。

大きさもないので、デメニギスが広く食べられることはなさそう。

でも話題の魚だから、今後提供する店も現れるかもしれません。

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透明ドームは防御用、でも弱い

どうしてあんな頭なのか?

デメニギスが透明なのは頭だけで、
胴体は黒くて硬い鱗に覆われています。

全身がシースルーな生き物はいますが、
なぜ頭だけをキカイダ―みたいに(例えが古い)丸見えにしたんでしょう?

ポイントは「ドームの中に目があること」。

どうやら、デメニギスは目を守る必要があったようです。

透明な頭の理由

デメニギスは小魚やクラゲを食べる。

クラゲといえば刺胞動物。

毒針のついた触手を何本も持つ難敵です。

食べるときは、当然大事な目も攻撃されるでしょう。

そこで防御用のヘルメットが欲しい。

で、あの頭になったらしい。

頭が透明になったのではなく、目を守るドームが顔についたのです。

中に目があるのですから、見るために透明にしなくちゃなりません。

それであんなコクピットみたいな頭になった。

ドームの内部は液体が入っており、深海では膨らんでいます。

引き上げると潰れ、生きた姿が観察されたつい最近まで、その存在が知られなかったんです。

そんなデリケートな頭。

とても水族館で飼えそうにない。

しかし、公開映像はアメリカの研究所で撮影されたものです。

デメニギスは水族館にいない?

カリフォルニア州のモントレーベイ水族館

元は缶詰工場だったんですが、
水族館に改造され、現在は世界有数の人気施設になっています。

映像のデメニギスはそこの研究所が捕獲、飼育していたものです。

「じゃあ、モントレーベイ水族館で見られる?」

これは無理っぽいです。

研究されたのは、たまたま無傷で捕獲されたもの。

ドームが膨らんだ状態のデメニギスを捕らえるのは、今もって困難なのです。

モントレーベイ水族館でも展示されてないのだそう。

デメニギスが見られる水族館はまだありません。

上手な捕獲・飼育の方法が見つかれば、
日本近海にもいる魚だし、
あの不思議な姿で大衆の前に現れるでしょう。

残念ですね。

でも、捕まえて初めてわかったこともあるんです。

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驚異的な目の構造

出目は深海魚によく見られる特徴です。

暗く、不毛な深海では、視覚が良くないと困る。

そこで望遠レンズのように、目が飛び出した奴が多い。

デメニギスもそんな管状眼の魚です。

緑の目VSカウンターイルミネーション

映像でもわかるように、デメニギスの目は緑で、上向きです。

涙がこぼれないように……もちろん違います。

デメニギスは深海域を、ホバリングするように浮いています。

ヒレが大きいのはそのためです

獲物はその上を泳いでいます。

上向きなのはそのためです。

しかし、獲物も対抗策がある。

『カウンターイルミネーション』

魚の多くは、背側が青系で腹側は白系ですよね。

これは
「上から見ると海の色に紛れ」
「下から見ると太陽光に紛れる」

という保護色。

また、下側を発光させて目立たなくなる生き物もいます。

よほど深海まで行けば光は逆に目立つのですが、
デメニギスのいる深度ではまだ光が届く。

上部にいる白い奴、光る奴は見えにくいのです。

これが「カウンターイルミネーション」。

光に紛れて、襲われないようにする。

デメニギスの緑の目は、
カウンターイルミネーションを見破るのだそうです。

特殊なフィルターが、獲物を見やすくするらしい。

暗視カメラみたいなものでしょうか。

この目が稼働することも、捕獲してわかりました。

目は回転可能だった!

Barreleye facts: the dome-headed deep sea fish | Animal Fact Files

デメニギスは常に上しか見てないと考えられていました。

獲物を見つけるだけに特化した目。

あとは食うだけだと。

でも、天井を見ながら飯が食えますか?

デメニギスの縦になった目は、ちゃんと横にも向くのです。

まず、縦の目で上にいる獲物を確認。

デメニギスは目標に向かって行きます。

このとき、目が前方に倒れ、獲物をロックオンする。

そして「いただきます」です。

目の可動域はかなり広く、ほぼ360度見渡せるのだそうです。

天文台みたいな頭ですね。

あの未来的なドームは、中もメカニカルにできていたんです。

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まとめ

深海の地味な魚だと思われていたデメニギス。

あんな透明ドームを持っていたことで、一躍スターになりました。

しかも、ドームの中に目がある構造。

宇宙服を着た宇宙飛行士のようじゃありませんか!

管状眼のデメニギスは、視覚を重視した深海魚。

カウンターイルミネーションを見抜き、広い視野をカバーできる。

目を守るために、視界の効く透明のドームをつける。

ぶっ飛んだ進化のようで、理に適っています。

頭ン中丸見えなんて笑えません。

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