アメリカで良く知られた未確認生物ジャージーデビル。
ゲームや映画の題材にもなっているので、割とみんな知っているんじゃないでしょうか?
大都市ニューヨークのすぐ南に位置するニュージャージー州に出没するという悪魔のような生物です。
僕は昭和くらいのUMAだと思っていました。
実はその発祥は280年ほども前。
以来ずっと、都市伝説で語り継がれてきた長寿のUMAです。
では空想の産物なのか?
調べてみると、目撃の記録はとても多い。
近年にもその姿を人々の前にさらしているのです。
ジャージーデビル伝説の始まりから、実在の可能性を考えます。
ジャージーデビルの特徴と目撃
アメリカ東部ニュージャージー州・ペンシルベニア州で語られてきたジャージーデビル。
その歴史は古く、アメリカが独立する前の植民地時代にさかのぼります。
ジャージーデビルの特徴は以下の通り。
- 身長は180cm
- 二足歩行
- ヒヅメの足
- 爪のついた小さな腕
- 馬・山羊に似た頭
- 角がある
- コウモリのような羽で飛行する
- 二股になった尾
- 甲高い鳴き声
中世の絵に描かれた悪魔にそっくり。
ガーゴイルやワイバーンのような怪物です。
200年以上の間目撃されている!
記録で残っている最古の目撃は1778年。
スティーブン・ディケーター海軍代将が、調査で訪れた鉄工所の近くでジャージーデビルと遭遇。
「発砲したが逃げられた」というもの。
ディケーターは独立戦争で活躍した英雄。
与太話をでっちあげるような人物ではありません。
1820年頃、ジョセフ・ボナパルトがニュージャージーで目撃。
あのナポレオンの兄で、元スペイン国王です。
1840~41年には家畜が続けて殺害される事件があり、目撃はありませんがジャージーデビルが犯人となっています。
ポツポツと出てくるんですね。
それが20世紀になると、突然活動的になります。
1909年1月16~23日。
ニュージャージー、ペンシルベニアの30を超える地域から、100件以上もジャージーデビル目撃が報告される大騒動が起こりました。
目撃だけではありません。
トロリーバスや社交クラブを襲ったりもしています。
武装警察も出動。
銃を持った自警団がうろつき、学校は閉鎖され、厳戒態勢まで敷かれるパニックです。
1937年には「赤い目の怪物」の目撃。
1957年にはジャージーデビルと思われる死体が発見。
1980年には家畜の殺害現場に残されたヒヅメの足跡。
1993年、管理官が森で「二本足の化物」と遭遇。
2000年代にはパッとしない映像も撮られたり、人とジャージーデビルのエンカウントが増えているんですね。
むろん、すべてがジャージーデビルとは思えません。
というより、ジャージーデビルの伝説があるので、不思議なものをそう捉えているのでしょう。
伝説の成り立ちは、土地の歴史と関わりがあるようです。
ジャージーデビルは呪われた赤子?
ジャージーデビルには、誕生の物語があります。
ニュージャージー州パインバーンズのリーズ家。
「マザー・リーズ」と呼ばれるジェーンには12人の子がありました。
やがて13人目の子を身ごもったジェーン。
その出産はひどく難産になりました。
あまりの苦しさに「こんなに苦しませる赤ん坊なら、悪魔が生まれればいい」と絶叫。
すると赤ん坊が悪魔に変わり、助産婦を殺して飛び去った……というもの。
別に、ジェーンは魔女で、悪魔が父親の子がジャージーデビルになったとも言われます。
他にも、
「イギリス人と恋に落ちた女性が、スパイの疑いをかけられ、非業の末に産み落とした子供」
「死にかけたジプシーが助けを拒んだ妊婦を呪った」
などバージョンがあるものの、リーズ家の話が特に有名。
地獄の悪魔ではなく、元は人間というのがミソです。
このリーズ家が実際にあったことはわかっています。
12人の子がいたことも事実。
ジャージーデビルが「リーズの悪魔」とも呼ばれるのはこのため。
この場所は現在も「リーズポイント」と呼ばれています
ただ、母親の名はジェーンではなくデボラだったようです。
記録にない、デボラの産んだ13人目が悪魔になったのでしょうか?
そう簡単ではないようです。
ニュージャージー闇の歴史との関連
17~18世紀、パインバーンズは、クエーカーの集落となっていました。
クエーカーとはプロテスタントの一派。
「フレンド派」とも呼ばれ、平和主義を掲げる独特の信仰をする人たちです。
今風に言えば「先鋭化したリベラル」でしょうか?
植民地時代の当時、イギリスとの対立、奴隷制度などに突き進んでいたアメリカでは、あまり歓迎されない集団ですね。
そのクエーカーに、ダニエル・リーズ、タイタン・リーズという出版業の親子がいました。
物語のリーズ家とは関係ありません。
リーズ親子はオカルトに傾倒し、占星術を駆使してマニアックな年鑑を発行します。
「来月悪いことが起こるぞ」とか「政治家はクズだ」とか、不安を煽るゴシップ雑誌みたいなもんです。
これがとにかく不評。
新興宗教っぽい政治活動屋と思えばいい。
仲間のクエーカーや、当時ニュージャージーの実業家だったベンジャミン・フランクリンと敵対するようになります。
凧揚げで雷が電気だと証明し、アメリカの独立宣言にも立ち会った、100ドル札のオッさんのフランクリンです。
リーズ親子は問題児だった。
この年鑑の表紙に描かれていたのが、翼のあるドラゴン。
ジャージーデビルの姿と似ています。
クエーカーが集まり、異質な雰囲気の地域。
リーズ親子と地域の確執。
年鑑に描かれたドラゴン。
そこに住んでいた同姓で子だくさんのリーズ夫人。
例えば不吉な数字の13番目の子供が流産などをしかかもしれません。
ジャージーデビルは、これらを寄せ集た都市伝説なのです。
あちこちから移民が集まり、諍いもあったでしょうし、地域によって宗教の衝突もあったでしょう。
記録にはない、血塗られた歴史もあったと思う。
そんなカオスから生まれたのがジャージーデビル伝説。
13番目の赤ん坊は、新天地で見捨てられ、蔑まれた移民の象徴。
あるいは新しく加わった怪しいよそ者ともいえそうです。
だからジャージーデビルは、人間の成れの果てなんです。
では、実際に目撃されるジャージーデビルはなんなのでしょう?
ジャージーデビルの正体は?
ジャージーデビルの容姿に近い既知動物といえば……
まず、アフリカのウマヅラコウモリが挙げられます。
文字通り「馬面のコウモリ」。
ジャージーデビルも馬のような顔と、コウモリのような羽がある。
しかし、ウマヅラコウモリはアメリカにはいませんし、大きさも30cmほど。
デビルって迫力はありません。
古代の翼竜はどうでしょうか?
アメリカには巨鳥サンダーバードの伝承もあります。
そこまで飛躍しなくても、普通のワシやツルの見間違いかもしれません。
元々ジャージーデビル伝説が強く残る土地柄。
飛んでいる「何か」がジャージーデビルと認識されるのはあり得ることです。
目撃は勘違い、思い込みという線が濃厚ではないでしょうか。
僕が気になるのは、ニュージャージー、ペンシルベニアの南。
ウェストバージニア州を騒がせたモスマンとの関係です。
ほぼ同地域に出現する、悪魔的な飛行型UMA。
「実は同じ生き物なんじゃないの?」と思える。
この辺の考察もいつか記事にしてみたいですね。
まとめ
永く語られる伝説というのは、その土地で生まれ育った者に強い影響を及ぼすことがあります。
13番目の赤ん坊云々はとても寓話的。
日本でいう「間引きされた子供」みたいな印象。
呪われた子――ジャージーデビルの設定も、アメリカの負の歴史に理由がありそうです。
語り継がれ、人の心に住みついてしまう。
そして、何かをジャージーデビルと見てしまう。
ジャージーデビルは280年前の悲話とともに、現代も飛び続けているのでしょう。
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