「自分がよければ、他者がどうなろうと関係ない」
そんなサイコパスは社会の迷惑です。
でも、自然界にサイコパスは意外と多い。
有名なのは寄生虫でしょう。
自身が生き残り、繁殖するために、
宿主をマインドコントロールして、「死」に向かわせる。
寄生者が宿主を犠牲にするタイプです。
彼らの戦略は「卑怯」で「残忍」。
そして「冷酷」なほど「計算高い」。
他者の命をもてあそび、利用だけするという生態。
利用されたほうは不運でしかありません。
怖ろしいサイコパス寄生虫は身近に存在するのです。
ハリガネムシ
よく見られるサイコパス寄生虫は、
「ハリガネムシ」ではないでしょうか。
カマキリの寄生虫として知られています。
カマキリがいる場所なら、どこでも出会える。
突然ニョロっと出てきたハリガネムシが、トラウマになっている人も多いんじゃないかな。
カマキリを操る寄生虫
ハリガネムシはカマキリ、バッタ、ゴキブリなどに寄生します。
文字通り、針金のように細長い、クチクラに覆われた体。
太さは1mmくらいで、長さは数十cm~1m近くになることもある。
水中で産卵し、幼虫がヤゴとかボウフラに寄生。
それらがトンボや蚊になって飛び回り、陸の捕食者に食われて「乗り換え」です。
カマキリへの寄生が多いのは、捕食される割合が高いからです。
まんまとカマキリの体内に入ったハリガネムシの幼虫。
成虫となり、繁殖するために水中へ戻らなくちゃなりません。
でも、カマキリは水が嫌い。
そこで、ハリガネムシはカマキリを操り、入水自殺をさせる。
こうして水場に還るわけです。
カマキリの尻を水に入れると、勘違いして出てきます。
カマキリが事故死しても、出てくる。
プールや置き水にいることもあり、珍しくありません。
ウネウネと動く姿がけっこうキショい
人間にも寄生するの?
ハリガネムシは人間にも寄生するといわれますが、それは嘘。
「爪の間から体に入る」というのは漫画の影響でしょう。
ハリガネムシを使った拷問とか、考えつく人もサイコっぽいと思う。
でも、ハリガネムシには皮膚を食い破って侵入するチカラもないし、一度外に出た成虫が寄生生活に戻ることもないんです。
こうしてカマキリを犠牲にするハリガネムシ。
カマキリは気の毒ですが、「カマキリのまま死ねる」のはマシかもしれません。
サイコパス寄生虫には、宿主の体を変えてしまうものもいます。
「頼むから……殺してくれ……」というパターン。
生かされながら、利用される生き物。
憐れとしか言いようがありません。
ロイコクロリディウム
カタツムリに寄生するロイコクロリディウム。
覚えにくい名前で、空で言える人もあまりいないでしょうが、生態は有名です。
「宿主を変形させ、鳥に食べられるよう仕向ける」
殺し方がとにかくエグい。
周到な感じが、シリアルキラーっぽいんですよね。
ロイコクロリディウムは、鳥の寄生虫です。
鳥の腸内に巣食う成虫が産卵し、糞と一緒に排出された卵をカタツムリが食べると寄生されます。
最終宿主の鳥に寄生するため、ロイコクロリディウムはカタツムリに一度寄生して、鳥に寄生できる形態になる必要があるんですね。
幼生期に巻貝に寄生する種は多いんです
幼虫カプセル“スポロシスト”
その形態は「スポロシスト」と呼ばれています。
イモムシかウジのような形。
幼虫本体ではなく、スポロシストはただの嚢子です。
つまり「袋」。
休眠状態の無数の幼虫が入った、筋肉質のカプセルみたいなもの。
スポロシスト自体は生き物じゃありません。
それでも動く。
なぜ動くかはわからないけど動く。
「生きた袋」のようにウネウネと。
これだけでも不気味。
そしてスポロシストは触覚にたどり着くのです。
複数寄生もある!
スポロシストで、触覚はパンパンに腫れます。
カタツムリの触覚は目ですから、目が腫れていることになる。
その触覚は、中のスポロシストが透けて見え、イモムシのように動く。
一匹のカタツムリに複数のスポロシストが寄生していることもあり、肉眼でも体内で蠢いているのがわかります。
10以上いることもある。
体の中を這いまわる、イモムシのような嚢子……。
完全に「コロシテ……」のシーンです。
死の洗脳!日本でも確認!
このとき、カタツムリはすでに洗脳されています。
明るい昼間、高い場所へ移動するカタツムリ。
わざわざ天敵に見つかる、普段は絶対にしない行動です。
で、イモムシに見える触覚を動かして、鳥に食べられるよう仕向けるのです。
カタツムリはそれほど鳥に捕食されることはありません。
触覚をイモムシに似せることで、ロイコクロリディウムは鳥に寄生し、成虫になります。
ロイコクロリディウムは、北海道と沖縄で確認されています。
なぜ南北の端なのかわかりませんが、気温は生息地と関係なさそう。
日本のどこにいてもおかしくありません。
宿主の脳を乗っ取り、鳥に食わせるなんて、サイコにも程があります。
まあ、体内でいくつものスポロシストが蠢いているのですから、意識がないだろうことはまだ幸運でしょうか。
次に紹介する「リベイロイア」も、ロイコクロリディウムと同じく、最終宿主が鳥。
宿主の体を変形させます。
ただし、意識は奪わないスタイルです。
リベイロイア
リベイロイアも、最初は巻貝に寄生します。
巻貝はリベイロイアの生産工場のようにされ、死ぬまで幼虫を繁殖させることに。
これも不幸ですね。
工場を旅立った幼虫が次に狙うのは、オタマジャクシです。
変形カエルの理由
リベイロイアが寄生するのは、オタマジャクシの尾のつけ根。
やがて足(後肢)が生えてくるあたり。
そこの皮膚を食い破り、侵入するのです。
オタマジャクシはカエルへ成長します。
ところが、リベイロイアが足の部分で悪さをしています。
後肢が4本とか6本とか、まったくないとか、奇形のカエルとなってしまう。
そんなカエルはろくに動けません。
素早く逃げることもできない。
鳥、あるいは野生動物の餌食となる。
最終宿主への寄生が完了です。
ロイコクロリディウムのように、食われるための奇形ですね。
リベイロイアは特に洗脳もしません。
カエルのほうも「これが僕の運命なのか?」でしょう。
姿を隠し、こっそりと宿主を犠牲にする。
宿主を完全に乗っ取るロイコクロリディウムに比べ、不幸を見せるやり方のほうが陰湿に思えなくもない。
ある地域で、時々足の多いカエルが大量発生することがあります。
「放射能か?」「農薬か?」「悪性の汚染水か?」
それは環境悪化が原因と思われていました。
リベイロイアとの関連がわかったのは30年ほど前です。
優しいだけじゃ生きられない
他者の命を奪って繁栄する寄生生物は珍しくありません。
他の生物に卵を産みつけ、餌にしてしまうというのも一種です。
しかし、この記事で触れたサイコパス寄生虫は、手が込んでいます。
ただ殺すだけじゃない。
洗脳、擬態、奇形などいろいろ工夫がある。
おそらく、寄生生物として進化していくうちに見つけた「上手いやり方」なのでしょう。
その手数とか遠謀が、残酷で非情に見える。
僕ら人間は「共生・共存」を理想とします。
サイコパス寄生虫は真逆ですから、人間と対極の生物といえる。
その「生」へのシビアさに、ドキッとさせられるんですよね。
寄生虫たちから見れば、共生・共存で生きられる生物など、「温室育ちの甘ちゃん」なのかもしれません。
まとめ
見た目も生態も嫌われる寄生虫。
中でも宿主殺しのサイコパスは嫌悪感も大きい。
恩を仇で返すようで、親しみも感じません。
でも、その生き様がスゴイと思う。
尊敬できないけれど、認めざるを得ないものがある。
「生きることに遠慮するな!」
そんな強さを感じずにはいられないのです。
コメント