ジバクアリという物騒なアリがいます。
名前の通り「自爆するアリ」です。
比喩でもなんでもなく、本当にボンッと自爆というか破裂をするんです。
自爆系はゲームで初見だとビックリしちゃいますよね~。
現実にやられたらなおさらでしょう。
別名をカミカゼアリ、または爆弾アリ。
もちろん自爆したアリは死んでしまう。
その理由は下等な昆虫とは思えない「自己犠牲の精神」です。
武士道精神にも通じる強靭なスピリットは、日本人にも共感されやすいかもしれません。
昆虫界のサムライ、ジバクアリについて解説します。
ジバクアリとは?その毒と自爆の理由
「自爆するアリがいる」
これは100年くらい前から生物学界で知られてはいました。
学者もそれは確認していたのですが、よくわからないまま棚上げされていて、どこか都市伝説的な事実として放置されていました。
1970年代になって、マレーシアやブルネイでジバクアリが新たに発見され、その特殊な生態で注目されるようになったのです。
漫画「テラフォーマーズ」で知った人も多いですかね
そのアリは茶褐色で、大きさは5mmほど。
見た目は特に変わったところのない、普通のアリです。
ただし、毒を作る下顎腺が他のアリより大きく、体全体にまで広がっている。
全身が毒袋といった感じでしょうか。
アリは総じて毒を持っていますが、ジバクアリは毒の生産力・収納力が多いのです。
その毒はのりのような粘着性があり、ポリアセレート、脂肪族炭化水素、アルコールの混合物。
僕は化学がからっきしなのでよくわからないけれど、けっこうな化学兵器なんでしょう。
食べ物の関係で、雨期は白い毒で、乾期はカレーみたいな黄色い毒なんだそう。
といっても、やはり最初に行うのは通常の咬む攻撃。
それで敵を撃退できないとなったとき、最後の手段として自爆するのです。
これがなかなか壮絶です。
命懸けの自爆は巣を守るため!
ジバクアリの中でもみんながみんな自爆するわけではありません。
アリは女王を頂点とした君主制のコロニーを形成します。
アリ社会の掟は一つ。
「Save the Queen!」
どんなアリも(ハチもそうですが)女王陛下のためなら命を懸けて戦うのです。
他のアリも玉砕覚悟で戦い、犠牲になることも厭いません。
ジバクアリもそうした習性で、その方法として自爆を編み出したんでしょうね。
自爆をするのは働きアリのうち、門番と衛兵らしい。
つまり、巣の入り口を守るアリと、自分たちの餌場を守るアリです。
そこへ大型の敵アリがやって来ると、当然戦闘になります。
しかし大型アリには勝てない。
このままでは巣が荒らされ、女王も幼虫も餌食にされ、王国が崩壊してしまう。
そこで働きアリは果敢に大型アリに組みつき、自爆をするのです。
ちなみにこちらがジバクアリ。
アリが破裂すると、のり状の毒が飛び散ります。
それが付着した敵は動けなくなり、同時に毒に含まれた警告フェロモンで仲間に敵襲を知らせるのです。
「この敵は俺が命に代えても止める!お前たちは女王を守れ!」って感じ。
カミカゼアリと呼ばれるのも納得できます。
外国人にはこの自己犠牲が、神風特攻と重なるのでしょう。
でも、ジバクアリはどうやって破裂しているのでしょうか?
強敵に怯まず!自爆の仕組みは自己収縮?
自爆の仕組みは単純です。
腹筋を収縮させる。
すると、水風船をギュッと握りつぶしたように「ボンッ」となる。
全身が毒袋だからこそできる荒業です。
それを躊躇わずにやっちゃうんだからスゴイ!
自爆したアリは死に、敵は毒を食らって道連れになる。
強敵を前に、仲間のために相討ち覚悟の行為。
漫画なら涙誘われる熱い展開じゃないですか!
ジバクアリは人間に捕まっても自爆します。
さすがに人間には無毒ですが、臭いがけっこうキツいのだそうで、やられた感はあるかもしれません。
それにしてもアリ社会はシビアだと思いませんか?
巣を守るためなら兵卒の犠牲もやむを得ずという徹底さがある。
武士道、騎士道精神は共感しますが、独裁政治の怖さも感じますよ。
そんなふうに自爆するアリは何種類かあるのだそうです。
自爆攻撃はジバクアリだけじゃない‼
ずっとジバクアリ、ジバクアリと呼んできてなんですが、ジバクアリは正式名ではありません。
マレーシア、ブルネイで見つかったアリをその生態から「ジバクアリ」「カミカゼアリ」「爆弾アリ」と便宜上呼んでいるだけで、まだ正式名がつけられていないのです。
そして、自爆するアリは他にも数種類知られています。
例えばムヘイシロアリ。
これはアリではなく、ゴキブリ目シロアリですが、やはり女王をトップにしたコロニーを作り、敵に襲われると自爆します。
ムヘイシロアリの場合は、さらに悲しい運命です。
頭と胸の間に毒の袋があるのですが、成長とともに毒の量が多くなってゆきます。
自爆するのはたくさんの毒を持った老シロアリ。
「老い先短いワシらが犠牲になろうじゃないか」「若者たちよ。後は頼んだぞ」と言いはしないでしょうが、老シロアリから率先して命を絶つ。
もう大河ドラマにしたいくらいです
女王を守るという絶対的本能が、死して毒をまき散らすという進化に繋がったのでしょう。
進化というのはほとんど結果的なところがあるものですが、自爆生物には信念のような凄味を感じます。
研究者も「巣を守るための純粋な自己犠牲」と結論しています。
正式名もないジバクアリは、さらに名もなき自爆した英雄たちによって種を持続させてきた。
この悲しくも美しい昆虫は、もっと評価されてもいいですよね。
まとめ
ジバクアリの自己犠牲はただただ本能のなせる業です。
アリのような社会性昆虫は秩序ある団結で巣を守り、繁栄してきました。
その姿はどこか我が国日本に似通っています。
もちろんそうした性質にはいい面と悪い面があるのでしょう。
ジバクアリには感情も感傷もないでしょうが、その生態から学べる部分はあると思います。
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