「ハルキゲニアとカギムシ」学者も悩ます「足付ミミズ」の系譜

節足動物

近頃は、古生物にも関心が高いと感じます。

古生物と言えば恐竜。

これは昔から人気ですね。

その恐竜よりもっと古い生物。

カンブリア紀(約5億年前)の、失敗作みたいな生物。

三葉虫やアノマロカリスなど。

「形が面白い!」

と、スポットが当たることが増えている気がするのです。

今回はそのうちの「ハルキゲニア」の紹介。

形の面白さでは随一でしょう。

前後も上下もわからなかったほど。

わけわかめ過ぎて有名な生物です。

そのハルキゲニアはとっくに絶滅。

似た生物もいません。

だから、お会いはできない。

ただ、なんとか近いかな~という生き物はいます。

それが「カギムシ」

どちらも節足動物手前の、道半ばの生き物。

この迷ってる感じがいい!

そんなハルキゲニアとカギムシ。

どんな生物だったのでしょう?

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勘違いも甚だしい!ハルキゲニア

20世紀初頭。

妙な化石が見つかりました。

今ではすっかり有名になった古生物「ハルキゲニア」です。

この生物は、とにかく「変」。

発見後にも学者を悩ませ続けることになるのです。

実態不明の謎生物?

カナダのバージェス頁岩(けつがん)。

頁岩というのは堆積岩の一種。

薄く割れるのが特徴で、本のページっぽいから頁岩。

そんな理由で、軟体動物でも押し花のように残りやすいのです。

見つかった化石は「バージェス動物群」と呼ばれます。
アノマロカリスやピカイアが知られています。
約5.1~5.05億年前の生き物です

そうして見つかった、とある生物。

「こいつはミミズっぽいけど足がある」

「じゃあ、逆にあるのは棘か?」

「胴体の一方がマッチ棒みたいに膨らんでいるね」

「それが頭だろうね」

「そもそも膨らみは頭なのか?」

その生物はとにかく異形でした。

上下も前後もわからない。

奇妙なので、ラテン語の「夢想」から、「ハルキゲニア」と命名された。

とりあえず復元図も作ってみる。

それでも「こんな生き物いるか?」のレベル。

「よくわからん」まま、時代だけが過ぎていくのでした。

ハルキゲニアの真実 徐々に解明!

そのハルキゲニアも、最近は少しわかってきました。

生息時期はカンブリア紀の中頃。

中国でも化石が見つかり、広く分布していたらしい。

大きさは1㎝~5㎝以下

胴体はミミズのようで、細い足が10対。

背面に7対の棘がありました。

これは防御目的でしょう。

この時代は「動く」「食う」「身を守る」など、生きるための「戦略」を凝らした生物が増えた時期でもあります。

生き物がより「戦う顔」になったというか。

ハルキゲニアは頭部がやや膨らみ、よく見れば「くびれ」もある。

ちなみに、当初、頭だと思われた膨らみ。

潰されて肛門から飛び出した内容物だったとか。

頭じゃなく尻だった、というオチ。

海底を歩き、カイメンか、あるいは腐肉を漁っていたようです。

Hallucigenia walking

カンブリア特定?葉足動物

最初はゴカイのような節足動物と思った。

これも違いました。

ハルキゲニアは「葉足動物」という、
「ぷにぷにした足を持つミミズ」

いや、ミミズとも違うんだけど、そう表現するしかない。

カンブリア紀だけに見られた特殊な古生物だったのです。

つまり、今では一種も残っていない。

完全な絶滅種。

この奇態なハルキゲニアは、もう見られない。

水槽で、ペットにして飼えたら、ちょっと面白そうなのに。

それなら、現在ハルキゲニアに似た生物はいないのでしょうか?

「なんとか近いかな~」という奴はいないこともありません。

それが「カギムシ」です。

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節足動物にあと一歩?カギムシ

葉足動物は「汎節足動物」とされています。

「汎」は「広い」の意。

「広義では節足動物でもいいけれど、節足動物までに成り切れていない」

そんな曖昧な生物です。

「夢幻」と思われたのも頷ける。

汎節足動物は、現存しています。

生きた化石カギムシとは?

現在の汎節足動物は、「緩歩動物」と「有爪動物」。

~動物というとグループみたいですが、どちらも一種だけしかいません。

緩歩動物は「クマムシ」だけ。

有爪動物は「カギムシ」だけ。

このカギムシが「足のあるミミズ」みたいなヤツ。

現存生物では、ハルキゲニアに近そうです。

クマムシは一部で最強生物と呼ばれる
あのクマムシです

カギムシがいるのは中南米、アフリカ、インド南部、オセアニア……。

日本の近場では、マレー半島南部や、インドネシアでも見られます。

見られると言っても、見つけるのは大変。

落ち葉の下などを這っており、なかなか出会えず、研究も進まないという、これも夢幻的な生物。

カギムシだけで一門を占める。

ペリパツスとペリパトプシスの二科がいます。

「似たよな奴はまったくいない」というボッチ生物。

大きいものでも20㎝くらい。

ミミズとムカデの中間といった姿。

長い胴体に、ぷにぷにの足が10~40対。

足先に鉤状の爪があり、これが名前の由来。

ハルキゲニアにも鉤爪持ちがいたそうです。

頭部に2本の触覚、下部に丸い口がある。

節足動物は左右に開く口ですから、仲間に成り切れない。

二科だけなのに、色は多彩。

口の横に粘液腺があり、その粘液を噴射。

獲物を捕らえたり、身を守ったり。

これも他生物ではあまり見ない武器。

目立たず、飛び道具を使う、忍者的な生物です。

Velvet worm

可愛い?けれどスゴい奴だった!

カギムシは軟体動物と節足動物を繋ぐ、進化の分岐にいるとも言われます。

ハルキゲニアの時代。

軟体から節足への方向性ができた。

そこからクモやカニ、ムカデ……。

そして(ある意味)生物の最高傑作「昆虫」へと進む。

ハルキゲニアたち古生物の功績でしょう。

ビンテージであり、バンガードでもあるわけです。

その雰囲気を残すのがカギムシ。

進化の系統では重要なポジションです。

カギムシが5億年前の軟体→節足という進化の革新のヒントを与えてくれるかもしれません。

ちょっと前に「トトロのネコバスみたい」と、ネットで話題になってました。

あれも足いっぱいあるし。

ムカデなどの他足類よりは可愛げはある……のかな?

ずいぶんロマンチックな視点に感じるけど。

日本では、カギムシを飼う人もいますし、
時々、昆虫館のような施設で展示されるそうです。

機会があれば、僕も実物見てみたいと思っています。

ネコバスに見えるかは、保証できませんが。

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まとめ

5億年前のハルキゲニア。

今もいるカギムシ。

生物としては違いも大きい。

でも、どこか繋がっています。

どちらも魅力たっぷりの生物。

かなり簡易に紹介しましたが、書き足りなかった。

興味を持たれたら、詳しい別サイトで調べてみてください。

カギムシは手触りがいいのだそうです。

いっぺん触ってみたいけど、出会えるかな~。

同時に、太古のハルキゲニアにも思いをはせる。

軟体→節足への変化を感じられると思うのです。

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