妖怪は生物なのか?
そう質問されたら、どう答えるでしょうか?
妖怪はスピリチュアルな存在で、観念的生物だから答えは「No」。
でも、日本人の頭の中には妖怪はかなり具体化されていることもあり、まったくの空想とも言えない気が僕はするのです。
そうは言っても、妖怪はゆるキャラのようなもの。
「いる」ものではなく「ある」ものと考えていいでしょう。
立派な存在物ですよ。
もちろん生物学では扱えません。
民俗学、社会学、心理学など多角的にアプローチしてやっと見えてくるかな~と思っています。
日本における妖怪の成り立ち
まず、日本において妖怪がどのように形成されていったのか?
これは理解しがたい天変地異や、飢餓といった国民的災害が、人知を超えた何者かの仕業ではないかと考えたのが始まりです。
西洋なら神や悪魔になるのですが、日本にはそんな概念はありませんから、神的な龍のような幻獣が引き起こした災害となる。
為政者にとっても、災いを責任転嫁することで「俺のせいじゃないよ」と言えるので都合がよかったんでしょう。
そのうち、日常の不運な出来事まで「何かの仕業」となってゆきます。
つまずいて転んだとか、お金を落としたとか、ちっちゃな不幸。
それは神や悪魔が起こしたというのはセコい現象なので、もっと低級な犯人として妖怪という概念が生まれたのです。
西洋では妖精がそれに当たると思われます。
妖怪はアニミズムとゆるキャラの複合体?
日本は多神教の精霊信仰(アニミズム)。
花の精から水の精から、便所の神様までどこにでも精霊を感じる国です。
元々、神様自体そんな大げさな設定じゃありません。
セコいイタズラをする神様――妖怪が生み出されます。
そうして考え出された多種多様な妖怪たち。
さらに、ゆるキャラなどにも見られるように、日本人はいい意味でも悪い意味でも悪ノリするところがある。
それぞれの妖怪の姿、生態、能力が勝手な空想力で設定され、都市伝説的に話が研磨されながら広まって、生活に定着。
このように日本は妖怪大国になったんでしょう。
ヨーロッパではイギリスが妖精伝説を多く残していますが、島国であることで大陸の一神教の影響が比較的少なく、古代ケルトのアニミズム感性が守られたとも考えられます。
妖怪は未来への警鐘でもある!
さらに言えば、妖怪は災害や不運を引き起こすという物語になることで、災害伝承にも一役買っています。
日本は災害の多い国。
ついでに記録魔でもある。
過去の事実を妖怪譚にすることで、未来への戒めの寓話にもなっています。
多くの妖怪はそれほど害を及ぼすものとなっていません。
妖怪の物語は、人間が悪さ、過ちをすることで、妖怪の怒りに触れるパターンです。
つまり、日本に残る妖怪の話は、イソップやグリムの寓話と同じ。
子供に読み聞かせ、世代をまたいで語り継がれる教訓といえるでしょう。
実在の人物がモデルになっている妖怪もいると思います。
家に上がり込んで勝手に飯とか食う「ぬらりひょん」なんか、ろくに仕事もしない親戚のおじさんがモデルじゃないかと思っています。
そういったストーリーが各地に派生し、妖怪はその土地に土着してゆきました。
妖怪がどこか人間臭く、数多いのはこのためです。
しかし、日本で異常なほど普及しているのは、やっぱりあの国民的アニメが理由でしょうね。
妖怪を広めた偉人たちの功績
僕らはたくさんの妖怪の姿形を知っています。
そのイメージもほぼ共有されています。
そう、「ゲゲゲの鬼太郎」の絵がそのままインプットされているのです。
人気アニメであり、現代までリメイクされ続けているので、各世代もれがない。
キャラデザインもネコ娘以外は昔と今であまり変わっていない。
「子泣きじじいはこんな姿」「一反もめんは薄っぺらで空を飛ぶ」と、見た目や性質を知らないうちに刷り込まれて、確固たるものになっている。
新進気鋭の漫画家が知られた妖怪をオリジナルで描いても、「これじゃない」ってなりますよね。
スピリチュアル体質で妖怪を真剣に研究
鬼太郎の妖怪も完全オリジナルではなく、江戸時代の鳥山石燕、月岡芳年、葛飾北斎、歌川国芳などそうそうたる画家の描いたものをモチーフにしています。
平田篤胤や柳田国男など妖怪研究者も多い。
数百年続く都市伝説みたいなもんです。
これは強いですよ!
妖怪をわざわざ体系化して、広めちゃった偉人がいたことも大きい。
妖怪に真面目にアプローチしちゃうのも、やはり多神教思想が息づいているから。
日本人は生まれつきスピリチュアル体質なんです。
だから妖怪が見えなくても、感じることができる。
しかし、妖怪を生物として考えるのであれば、感じるだけでは足りませんよね~。
妖怪を実在の生物と考えるのは可能!
妖怪には2種類あると思います。
明らかに空想のものと、生物らしい実態を感じるもの。
河童、件(くだん)、牛鬼、海坊主などはUMAらしい妖怪です。
牛鬼なら未知の海棲哺乳類、海坊主は最近話題のUMAニンゲン(ヒトガタ)と考えたりできる。
河童もUMAと捉えられることが多い!
未知動物なら実在もアリです。
他にも、自然現象が妖怪になっているケースもありますね。
例えば、かまいたち。
寒い日に風が吹いて、体がよろけ、知らないうちに体が切れているのに、血が出ないって現象。
転ばし役、切り役、薬塗る役のイタチ三人衆の妖怪の仕業といわれています。
妖怪の出自を辿ってゆくと、何かしらの真実が見えるかもしれません。
妖怪を楽しめるのは日本人の特権だ!
最初の質問「妖怪は生物か?」に戻りましょう。
「妖怪を生物として考えることも可能」
「妖怪の裏には事実もある」
僕はこんなふうに考えます。
もうひとつ、妖怪をこんなに楽しめるのは日本人の特権だと付け加えさせてください。
茶道のわびさび、風流を愛し、遊び心のある感受性の高い国民性でないと妖怪なんて流行りませんよ。
研究はもちろん、二次元作品でも妖怪は面白いんです!
だったら楽しんじゃったほうがいいですよね。
まとめ
妖怪は災害・不運から生み出され、精霊信仰にマッチして多様化しました。
語り継ぐ寓話として、フィクションの題材として、日本は妖怪に満ちています。
日本人は知らないうちに、自然への敬意や、災害の恐怖や、悪行の代償といった精神を学んでいるのでしょう。
妖怪は鏡に映った自分自身、アバターのようなものかも。
そして、生物らしい妖怪もいそうです。
このサイトでもいろいろな妖怪を紹介できればと思っています。
ネタ切れのときも助かるし(^^ゞ
コメント