「動く死体」ゾンビ。
サブカルチャーでもよく登場し、
今や露出度No.1モンスターじゃないでしょうか。
僕らの知るゾンビ像も、それらフィクションが作ったものです。
しかし、ゾンビは空想の怪物ではありません。
その実在は多くの文献に記されています。
それも映画やゲームで見るようなものとは違う。
永遠の眠りから目覚めされられ、過酷な奴隷にされる存在。
ゾンビは悲しい運命の死者なのです。
本当にそんなゾンビがいるのでしょうか?
リアルゾンビの物語は、悲惨に溢れています。
ブードゥーが生んだ真実のゾンビ
皆さんのゾンビのイメージは?
・墓から蘇り、人間を襲う。
・意思を持たない。
・動きは遅い。腕を前に突きだして歩く。
・腐敗しているような肌の色。
・ゾンビに咬まれると、生きた人間もゾンビになる。
・痛みを感じない。死なない。
……こんな感じじゃないですかね。
でも、これは映画の話。
実際のゾンビはハイチの伝承に登場します。
ゾンビは奴隷の運命だった!
カリブ海に浮かぶハイチで盛んなのが「ブードゥー教」。
アフリカで発生し、ハイチで独特な進化を遂げた民間信仰です。
魔術的で、シャーマニズム色が濃く、映画などでも使われますね。
そのブードゥーの秘術で生まれるのが蘇生者ゾンビ。
墓の前で、司祭が名前を呼び続けると、その死者が蘇るのです。
これがゾンビ。
しかし、ゾンビはすでに魂を失っている。
命じられるままに動くロボットのようなもの。
農場などに売られ、主に絶対逆らわない奴隷として、ずっと働かされるのです。
ただし、塩を食べさせてはいけない。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki4.png)
塩分入りの食べ物は全部OUT!
塩でゾンビの術が解け、発狂して墓に戻るといわれています。
また、亡くなった人が数年後家族のもとに戻り、
ゾンビだったことを語ることもあるそうです。
ゾンビにされる人間とは?
ハイチでは、ゾンビにされることは最大の恐怖。
人権も尊厳もなく、死後も家畜のようにこき使われるなんて浮かばれません。
まさに、死者に鞭打つ行為、冒涜です!
ゾンビにされるのは
「犯罪者」や「裏切り者」
といった悪党だそうですが、それも司祭の気分次第。
仲のよくない近所の住人だったり、冷たくされた配偶者や恋人が、逆恨みから司祭に告げ口すれば、普通の人でもゾンビにされる可能性があるのです。
遺族はそれを怖れ、埋葬後しばらく墓を見張ることもあるらしい。
それだけゾンビは、広く信じられているのでしょう。
でも、死人が蘇るとはにわかには信じられません。
なにかカラクリがあるように思えます。
ゾンビ作成薬「ゾンビパウダー」
ゾンビを作るために、「ゾンビパウダー」なる怪しげな薬が用いられるといいます。
ゾンビパウダーは、人を仮死状態にする薬。
『ロミオとジュリエット』で、ジュリエットが飲んだ薬みたいなものなのかな。
司祭は深夜、狙う人間の家に忍び込み、ゾンビパウダーを傷口にふりかける。
すると、その相手は「死んだ」と判断され、埋葬されます。
薬が解ける頃合いを見て、司祭は死者を復活させる。
早い話が「ヤラセ」です。
まあ、宗教的権威者はこのくらいの奇跡を演出しないと、やってられないんでしょう。
シャーマンである司祭は、医師でもある場合が多く、自作自演しやすい。
ゾンビは薬のせいで前頭葉をやられ、意思のない人形になっているという寸法です。
ただし、この話も信憑性はありません。
ゾンビパウダーは実際にあり、フグ毒が使われているという調査結果も出たというんですが、仮死状態にすることはできそうもない。
おそらく、儀式で使用する麻薬のようなものでしょう。
ゾンビを人工的に作ることも無理そうです。
では、ゾンビの話はどこから出てきたのでしょう?
ゾンビの誕生と変遷
![ゾンビの画像](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2020/04/fantasy-4706026_960_720.jpg)
「死者が蘇る」というのは珍しい考えではありません。
西洋の「吸血鬼」、中国の「キョンシー(殭屍)」などもリビングデッドです。
土葬する地域では当たり前にある。
肉体は残っているので、死んで魂のない抜け殻がさまよい歩く空想が生まれたのでしょう。
また、昔は「死んだと思ったら生きていた」という医療ミスもあったと思う。
そんな蘇生者の噂が「黄泉がえり」の話になったかと。
ハイチのゾンビには歴史背景もあります。
ゾンビは実在している?
ブードゥーはもともとアフリカの信仰。
魔術的な宗教と思われがちですが、神が憑依するとか、生贄を捧げるとか、原始的なところがあるだけで、悪魔崇拝みたいなのではありません。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki1.png)
ハイチを占領したアメリカが、
土着信仰のブードゥーが邪魔で、
映画で悪いイメージを作ったともいわれています
その後、アフリカの黒人は奴隷にされ、ハイチにも連れてこられます。
そこでは過酷な労働が待っていました。
つらい生活で「死にたい」と思うこともある。
そんなときに「死んじゃだめだ」という反意を裏づけするのに、「死んだらゾンビにされて、やはり奴隷にされる」という恐怖が必要だった。
ゾンビはブードゥーに元からある概念。
都合がよかったんでしょう。
奴隷の間で生まれたものか、死なれては困る雇い主が広めたものかはわかりません。
死んでも救われないと教えるのがゾンビなのです。
ゾンビの正体は精神疾患の人間という説があります。
痴呆のようになって町をうろついている生者です。
それが原因で家族から捨てられたのかもしれません。
見かけた誰かが、「これは10年前に死んだ私の父親だ」などと勘違いしたとする。
多少容貌が変わっていても、10年間ゾンビにされていたと解釈すれば問題ありません。
亡き人に戻ってきてほしい気持ちはどこも一緒。
思い込み、認知バイアスの類ですよ。
これがゾンビ実在に信憑性を持たせる。
ゾンビはこのように形成されたと考えられます。
さらに、ゾンビのイメージは変わり続けていました。
近代のゾンビ
見てきたように、ゾンビは憐れな死者。
人を襲う、咬みついてゾンビを増やす、などは後から加えられた設定にすぎません。
映画やゲームは、ゾンビが大好きですよね。
俳優がちょっとメイクするだけで安上がりのモンスターという理由もあるでしょうが……。
ゾンビは「感染症」のメタファーといわれます。
コロナ騒動を見ても、「なかなか殺せず、増殖する敵」は怖ろしい。
それの見える姿がゾンビなのです。
映画のゾンビのイメージも、狂犬病患者がモデルといわれます。
意識が混濁し、攻撃的になる。
人に咬みつくというのも、狂犬病で見られる行動。
![](https://ani-mys.com/wp-content/uploads/2019/01/huki1.png)
現在も世界で年間5万人ほどが
狂犬病で亡くなっています
また、ゾンビはアウトローの象徴ともなっています。
「気力のない投げやりな若者」
「他人の迷惑を考えない人」
「反社会的なロビイスト」
いわゆる「はみだし者」をゾンビに例えることもありますね。
どちらかといえば悪いライフスタイルで使われる。
自分の欲求さえ満たせれば構わないという、別な意味のモンスター。
それらが群れ、マジョリティーとなって襲ってくる。
やがて自分も染められる。
ホラーでしかありませんよ。
納得できないポリコレに渋々従わされるイメージというか。
もちろん、ゾンビはハロウィーンでも人気キャラ。
可愛いゾンビちゃんもよく見る。
奴隷人形なんて悲惨さはなくなっています。
しかし、ゾンビの成り立ちは不幸なもの。
意味が変わってしまっても、ゾンビは死も許されない半亡者。
休むことのない奴隷であることも、たまに思い出してください。
まとめ
ゾンビはブードゥーの魔術で蘇った死者。
決して幸福なものではありません。
ゲームでゾンビを次々撃ち殺すことが快感って人も多いでしょう。
でも、本当のゾンビに罪はない。
魂を失ってもなお生かされ、働かされる永遠の社畜といった存在。
この世でこんな悲惨があるでしょうか。
「ちゃんと死なせてほしかった!」
ゾンビの唸り声は、そんな訴えなのかもしれません。
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