たいていの生物には、オスとメスがいます。
人間をはじめ、魚にも虫にも、植物にさえ雌雄がある。
これは動かしがたい事実です。
男女の垣根が取っ払われつつある現代。
動かしがたい「雌雄別」も、見直されてきています。
僕はオスですが、「俺は男だ」「男らしく生きるぜ」などと言うのがどこか憚られる。
少年ジャンプ的に言えば「男塾」から「ひばり君」の時代に変わってきているようです。(ちょっと古い)
でも、男女差が必要ないなら、なぜオスとメスが出来たのでしょう?
オスとメスの分化は進化の結果なはず。
それなら、男女の違いには重要な意味があったに違いない。
性の二極化が悪とされる時代だからこそ、性が分かれた理由も知っておくべきではないか。
性への理解が深まれば、いろいろ考えられると思うのです。
民明書房には多分書かれていない「オスとメス」の事情を紐解いていきましょう。
二性の誕生!男と女の始まり
生物の目的は「子孫を残すこと」です。
「子供いらない」「子作りに興味がない」って人も多い昨今。
けれど、「産めよ、増えよ」は生物に組み込まれた最優先のプログラム。
「まず生殖」こそ使命。
原初の生物たちは分身して増えていました。
無性生殖とそのデメリット
微生物などに見られる「細胞分裂」。
一体が二体に分かれる増殖です。
元々、生命にはオスもメスもなく、自らのコピーを作っていた。
これが「無性生殖」です。
多くの単細胞生物はこの方法で増えます。
イソギンチャクなどもそう。
キノコのように胞子を飛ばしたり、竹のように一本の根から何本も芽を出し、増えてゆくものも無性生殖となります。
1から1、またはそれ以上を増やせる。
これは効率がいい。
でも、欠点がありました。
例えば、日本人が大好きなソメイヨシノ。
ソメイヨシノは園芸種で、自力では増えず、他の木に接ぎ木して育つ人為的な無性生殖。
すべてのソメイヨシノは原木のコピーなのです。
すべてが同質で個性がないから、咲くタイミングも揃う。
一斉に咲き、一斉に散るのが桜の魅力ですよね。
「俺はまだ咲かんぞ」というへそ曲がりがいません。
しかし、ソメイヨシノはすべて病気に弱く、木としては短命という弱点も持っています。
これでは深刻な病気が流行ったら全滅する。
種の存続には、形質の多様性が必要なのです。
多様性を生むための戦略
同じものばかり増えても先行き不安。
違う遺伝子をミックスして、多くのタイプを作るほうがいい。
無性生殖生物もそう考えたかもしれません。
無性生殖ではコピー時にたまにエラーを起こします。
印刷が薄いとか、インクの染みが付くとか、コピー元とちょっと違うものができちゃう事故。
おかげで無性生殖でも少しは変化種が生まれます。
しかし、これは偶然の産物。
運任せで頼りない。
そこで互いの遺伝子を交換し合う「接合」が編み出されました。
2つの個体が体をくっつけて、遺伝子を交換するのです。
そうすることでシャッフルされ、変異を起こりやすくする。
接合はミミズなど一匹でも繁殖可能な「雌雄同体」の生物も行う行為です。
「ちょっと違う遺伝子をちょうだいな」というスワップ。
カップリングしての生殖です。
少しオスとメスの兆しが見えてきました。
分業になった有性生殖
やがて、無性生殖生物の中に「配偶子」を持つ者が現れます。
配偶子というのは、人間で言うと「卵子」と「精子」。
生殖に利用される細胞のこと。
花粉なども配偶子のひとつ。
くっついて、次世代の素になるものです。
なぜ配偶子を持ったのかは、はっきりしません。
カップリングするなら、一個体に別な遺伝情報を持った細胞を両方揃えて、ミックスするほうが便利だったのかもしれません。
カップル相手を探すのも面倒だったのかも。
自然界にはマッチングアプリもないし。
この2つの配偶子が、プラスとマイナスのように引っ付くことで、生殖できるようになったのです。
ところが、2つの配偶子に差が出てきました。
一方は「大きくて動かない配偶子」。
もう一方は、「小さく動く配偶子」です。
大きい方が動かないので、片方が動くしかない。
動くなら小さいほうがいい。
……と、違いがはっきり出てきたのです。
言うまでもなく、動かない方が「卵子」で、動く方が「精子」。
それぞれ
「雌性(しせい)配偶子」
「雄性(ゆうせい)配偶子」といいます。
ついにオスとメス、雌雄が登場ですね。
まるっきりタイプの違う配偶子。
「別々に作るのもなんだかな~」
「もうこれ分けちゃったほうが良くね?」
そんな感じで現れたのが「雌性配偶子を持つ個体」と「雄性配偶子を持つ個体」。
すなわち、メスとオス。
それらが接合して生殖する
「有性生殖生物」へと進化したわけです。
さて、ここで「性」が生まれたのですが、初期の有性生殖生物は、雌雄の見た目の差はあまりなかったと考えられます。
オスとメス、男と女の違いはどうしてできたのでしょう?
変遷する男と女
最近は、男女を見た目で判断するのもタブーな時代。
正直「どうしろってんだ?」と思わなくもない。
まあ、普通は見た目で男女がわかります。
カブトムシのオスは角があって、メスはない。
派手なクジャクはオスだけ。
むしろ、生物は雌雄で外見を変える進化をしてきました。
オスメスの外見はなぜ違う?
男女で区別がつかないのは不便です。
だって誰とカップリングすればいいかわかりづらいもん。
繁殖のために分かれたなら、異性もひと目でわかるほうがいい。
加えて、両者の役割が、外見の変化を促します。
出産するメスに比べ、オスは種つけ後にすることがない。
となれば、余力を別な仕事に振り分けることになります。
メスと子を守ること。
メスを得るために戦うこと。
チカラが必要です。
パワーを得て、体を大きくし、好戦的になる。
大豪院邪鬼のように。
威嚇のために、装飾を身に着けることもあったでしょう。
装飾はメスへのアピールにも役立ちます。
必ずしもこうなるというのではありませんが、このようにオスメス・男女の外見差が顕著になり、見た目にもわかりやすくなっていったのでしょう。
この役割の違いが、オス優位社会の原因のようです。
外見で雌雄わかりにくいものもいます
男性上位となった背景
メスの仕事は「出産」「育児」。
それらに追われ、外に出るのはもっぱらオスの役目になります。
昔は狩猟などだったでしょう。
結果、「女は内、男は外」の構図が出来上がる。
外では社会が形成され、それに参加する男によって、組織(村など)の運営が決められます。
他の動物と違い、ヒトは社会性の強い動物。
社会で権限を持つ男が上位となってゆくのです。
さらに時が経てば「男が上」の固定観念も作られる。
男尊女卑はそうやって作られたのでしょう。
しかし、時代が変わり、女性の権利も増える。
女性の解放運動(ウーマンリブ)も起こる。
男女平等が法としても定められ、大衆の意識も変化したという流れです。
性の複雑化は進化の結果か?
現代は性の複雑化が起こっています。
雌性配偶子を作るメス。
雄性配偶子を作るオス。
生物学的には、この二性しかありません。
性は「どちらの配偶子を作る肉体か」で決められます。
とてもわかりやすいのですが、最近はこの2つで済まない。
この件にはいろいろと意見があるでしょう。
混乱が生じているのも事実です。
この先、性がどうなってゆくのかわかりません。
進化の末に誕生したオスとメス。
その頂点に立つヒトに至って、精神的オスメスというべき新たな性が加わった。
肉体の性と、心の性が違うという事象も起こる。
精神を認識できるほど進化した生物の運命なのか。
生物学的なシンプルを、わざわざ複雑にしているだけなのか。
オッさんの僕には、ついてゆくのが大変な世の中です……。
まとめ
性について、簡単に説明してきました。
もっと紆余曲折あったでしょうが、種の存続には2つの性が都合よかったようです。
初期の生物は無性生殖。
しかし、同じものを量産するだけ。
これではイカンと編み出した有性生殖。
2つの違う配偶子を生産するオスとメスが登場したわけです。
ところが、進化しすぎた人間界に、肉体の性以外に、心の性が誕生。
男女だけでもけっこうややこしいのに、性がさらに細分化されているのが現代です。
まあ、自分の性というのは、アイデンティティーの基本。
男でも女でも、それ以外でも、堂々と言えるのはいいことだと思う。
でも、個人的には従来の「男らしい」「女らしい」に心が動きます。
『魁!男塾』読み直そうかな……。
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