悪霊ウェンディゴ 憑依されると人肉を欲する奇病になる!?

その他

人肉が食べたくなる病気があるといいます。

つまり「人食い」。

それが『ウェンディゴ症(症候群)』

ウェンディゴという怪物に憑りつかれると、
人の肉がたまらなく食いたくなる奇病です。

もちろん、精神疾患のひとつなのですが、
古くから魔物憑きと怖れられてきました。

正常な人を共食いに走らせるウェンディゴ。

カナダの森林をうろつく悪霊といわれます。

魔物ウェンディゴとはなんなのか?

どんな症状になるのか?

人食いになるメカニズムを探ってみましょう。

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悪霊ウェンディゴと人食いウェンディゴ症

最初に「ウェンディゴ」を知らないとなりません。

ウェンディゴは北米に伝わる伝承です。

「悪意のある精神」と考えられています。

クトゥルフ神話にも登場します

ウェンディゴの生態

ウェンディゴはネイティブアメリカンに広く信じられています。

「ウィンディゴ」「ウィッティゴ」「ウィティコ」
など、地方によって発音の差異はあるものの、
森林を徘徊し、人を食うとか、人に悪さする怪物と認識されています。

「実物を見た」という話も数件あるのですが、
概念的存在というほうが正しいでしょう。

そのせいか、姿の描写はまちまちです。

人間のようだったり、5mもある巨人だったり。

毛むくじゃらで、角があったり。

目は赤く輝き、黄ばんだ肌や牙、ひどい体臭だとか。

体は腐り、頭蓋骨と肋骨が見えているというタイプ。

体は薄っぺらで、正面からでないと見えない、ともいわれるし、そもそも目に見えないという説もある。

二次元では、トナカイのゾンビみたいに描かれることが多いみたいですね。

Kriptid Legendák 02 – Wendigo

ウェンディゴは「氷の心」を持っています。

非常に貪欲で、いつも飢えている。

日本だと「餓鬼」とか「ヒダル神」に当たるでしょう。

肋骨が見えている特徴は、栄養不足のイメージなのかな。

まあ、貧乏臭い悪霊といえそうです。

ウェンディゴ症の症状

ウェンディゴ症は、この悪霊が憑いて起こります。

最初の症状は、食欲の減退と、鬱状態。

やがて、自分が「ウェンディゴになる」と妄想を抱く。

そして、無性に人の肉が食いたくなる。

人を殺し、その肉を食べようとしてしまうのです。

症例は100件以上もあります。

ある猟師は、妻と5人の子供を皆殺しにして平らげ、絞首刑にされました。

少年が父親と兄を食べようと襲い、父はやむなく少年を殺すしかなかった例など。

ほとんどの罹患者は、社会の敵だと処刑や追放の憂き目に遭うか、ウェンディゴになることを怖れ自ら命を絶つ。

治療法は「熱した脂肪を飲ませること」

それで氷の心が溶けるという理由。

心より先に、舌とか口の裏側とかが焼けそうですが……。

シャーマニズム的治療ですが、いくらか効果があるようで、数人が回復しています。

なんともタチの悪いウェンディゴ。

しかし、人食いさせる悪霊なんているわけがない。(たぶん)

ウェンディゴのような概念が生まれるには、その地域の文化が影響します。

ウェンディゴ症も、地域の事情が引き起こしていると思われるのです。

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ウェンディゴ症はなぜ起こる?

食人は「カニバリズム」といわれます。

カリブ海のカリブ族(スペイン語で“カニバル”)が「人食い」と思われていたのが語源。

僕は「人食いが狂気の祭宴」だから、カーニバルだと思ってました。

南の島の未開人が、生贄を縛り上げてお祭り騒ぎをするイメージだったから。

昭和のイメージだな……

しかし、ウェンディゴは寒い地方の伝承。

ウェンディゴ症も、その厳しい自然と関係があるようです。

人食いになるメカニズム

カナダの長い冬。

狩りの収穫も少なく、人々は家に閉じこもるしかない。

「寒さ」と「飢え」との戦いです。

ウェンディゴは氷の心を持つ、飢えた悪霊。

冬のつらい生活の象徴といえそうです。

そこからメカニズムを考えてみると

1.冬に肉も野菜も摂れず、ビタミン不足になる
2.倦怠感、動悸など体に異常が起こる
3.飢えから、身近にいる人間を殺して食う妄想をする
4.伝承のウェンディゴに憑りつかれたと思い込む
5.人肉を食べるor悩んで自殺

……となります。

ビタミンの吸収を助ける脂肪を摂らせる治療法は、理に適ってもいるんですね。

これは「文化依存症候群」というもの。

ウェンディゴ伝承のある文化圏だけで発生します。

同じ症状でも、西洋では「悪魔憑き」になり、日本では「狐憑き」になるのと同じ。

つまり、貪欲な悪霊ウェンディゴが信じられている地域だから、上記の4へ進んでしまうのです。

文化、環境が人を狂わせる

食料の流通や保存が発達した現代。

ウェンディゴ症も見られなくなっています。

しかし、コロナの影響で家に籠り、
ストレスが溜まる生活は、昔のカナダの冬と似ています。

連日報じられる、伝染病の恐怖。

閉塞感と諦観で、気分もどんより。

体調を崩したり、苛立ちから犯罪に至るケースもある。

ウェンディゴのような悪意に、憑りつかれやすい時代といえるかもしれません。

引きずられないようにしたいものです。

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まとめ

ウェンディゴは実在の怪物というより、文化的概念です。

厳しい自然の土地で、苦しみを具現化したものでしょう。

日本の妖怪みたいな存在と捉えていいと思います。

そうした伝承が精神に作用し、ウェンディゴ症は起こるのです。

昔読んだ『じゃりン子チエ』に、
「ひもじい、寒い、もう死にたい。不幸はこの順番でやってくる」
というセリフがあったのですが、ウェンディゴもそういうことなのでしょう。

暖と食事があるだけで、幸せっていうことかな。

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