「アフリカで一番強い動物は?」
そう質問されたらなんと答えるでしょう?
「百獣の王ライオン」
「パワーが段チのゾウ」
「必殺デスロールの使い手ワニ」
いろいろな答えがあるはずです。
ちょっと動物に詳しい人なら「ラーテル」とひねくれた答えを言うかもしれません。
ラーテルはアナグマの仲間ですが、なにげに強いといわれています。
知らない人には???の動物ですが、その闘争本能にはギネスブックも太鼓判を押している。
ラーテルは学者も認めるファイターなのです。
どうしてラーテルは強いのか。
その生態や天敵などを解説します。
かわいいけれど強気のラーテル
ラーテルは日本語で「ミツアナグマ」といいます。
昆虫や小動物も食べる雑食ですが、好物はハチミツ。
イタチとタヌキの中間のような姿で、大きさは60~80cm。
尻尾が30cmくらい。
ビーグルの成犬よりちょっと大きいかな~って感じでしょうか。
頭から背中にかけて白い毛、他は黒毛という見事な上下ツートン。
サイズ的にも、見た目は可愛い。
生息地は地中海沿岸を除くアフリカ全土と、中東、インド。
そんなに珍しい動物ではありません。
こちらは飼育場から何度も逃走を試みるラーテルの動画。
頭も良いようですね。
以前、教育テレビに出てた「ムテ吉君」はラーテルがモデル。
子供向けのキャラクターになり、ハチミツ好きということで、海外アニメの黄色いクマみたいなのんびり屋さんと思っちゃうところです。
「本当にアフリカ最強なの?」
そんな迫力ないんですが。
なぜ強いとされるのか?
ラーテルはとにかく気の強い動物なのです。
ギネス公認の無鉄砲
ラーテルは近づく者すべてに容赦ありません。
ライオンだろうが、ハイエナだろうが、水牛だろうが、毒ヘビだろうが、ケンカを吹っ掛けます。
もちろん人間にも怯みません。
「俺に触る奴は怪我するぜ」タイプのチンピラアニマルなのです。
ギネスブックに「世界一怖いもの知らずの動物」と登録されているくらい。
ギネスの審査員?ってこんなことも論じてるんだろうか……。
ムテ吉もおそらく「無敵」からきているのでしょう。
まあ、猛獣いっぱいの修羅の国みたいなアフリカで、
さほど体格に恵まれてもいないラーテルが生きてゆくには、
毎日がケンカ腰じゃないとキツイとは思う。
でも、ラーテルは高校デビューした気弱な学生が粋がっているのとは違います。
猛獣に太刀打ちできる攻守を備えているのです。
ラーテルの装備は凄かった!
僕はRPGなどで、最強装備を全部揃えないと次の町に行かないタイプ。
よくいえば慎重、悪くいえば弱気なプレイヤー。
最強装備があればまず安全です。
ついでにレベル上げもバッチリ
ラーテルもなかなかいい装備をしています。
鋭い爪と牙
ラーテルはアナグマですから手足に掘削用の鋭い爪がある。
また、なんでも食べる牙もすごい。
爪も牙も攻撃用ではないんですが、威嚇にはじゅうぶんです。
大型の肉食獣がいない地域では、ラーテルが食物連鎖の頂点。
まるっきり弱いわけでもないんですね。
スカンク並みの臭い
ラーテルはスカンクと似ています。
スカンクといえば強烈なオナラ。
オナラではなく悪臭の液体なのですが、同様の武器をラーテルは持っています。
肛門近くの臭腺から放つバッドスメルミスト攻撃。
これがかなりクサい。
服に付くと、一週間も臭いがとれません。
人間感覚でもすごいんですから、嗅覚のいい動物にとっては悶絶でしょう。
猛獣も咬めない特殊な毛皮
ライオンもラーテルは咬めないといいます。
それはラーテルの背中の皮膚がゴムのようだから。
分厚いうえに伸び縮みし、ブヨブヨなのです。
“柔らかいものは壊せない!”
牙が通じない、北斗の拳のハート様のような柔装甲ですよ。
さらに白毛は固く、とても手が出せません。
強固な守りがあるから、猛獣にも立ち向かえるのです。
毒耐性もある!
しかし、最強の鎧も特殊攻撃にはもろいものです。
動物の特殊攻撃でメジャーなのは「毒」。
体の内側から蝕まれては、装備も意味がない。
でも、ラーテルはへっちゃらです。
コブラとか普通に捕まえて食べる。
マングースにも近いラーテルは、毒ヘビの神経毒に耐性があるのです。
咬まれると一時的に動けなくなりますが、死ぬことはありません。
飼育困難の暴れん坊
気性の荒さも忘れてはなりません。
ケンカっ早い相手には近づきたくないですよね。
「こいつ、めんどくせぇ~」ってなります。
そう思われたら、ある意味最強といえる。
これはラーテルを含むイタチ科の処世術といえるかもしれません。
イタチの仲間はみんな「めんどくせぇ~」のです。
例えばアメリカ、ユーラシア北部に生息するクズリ。
ラーテルの近縁ですが、このクズリも強気が売り。
1mくらいの大きさなのに、3m近いクマにもつっかかります。
ちなみにクズリは英語で「Wolverine(ウルヴァリン)」。
マーベルの『X-メン』の主人公ウルヴァリンは、クズリの爪を持つという設定です。
そうした気性から、ラーテルの飼育は難しく、日本では名古屋の東山動物園だけで見られます。
クズリに至っては2019年時点でゼロです。
クズリは過去に上野動物園にいたんですが
これは東山動物園のラーテル。
夜行性ですが、昼間もけっこう活発です。
ラーテルが「アフリカ最強」とされるのも納得できたでしょうか?
しかし、「最強」は買い被りだと思います。
ラーテルにも弱点があり、天敵もいるからです。
ラーテルの天敵と仲間
背中の固い毛と、柔らかな皮膚。
ラーテルの鎧にも実は弱点があります。
腹部の装甲が弱いのです。
どの動物も腹は無防備。
さすがのラーテルも腹部までは手が回らなかったようです。
ライオン、ヒョウ、ハイエナなどの捕食者は、ラーテルの弱点を知っています。
爪や牙、オナラの攻撃をかいくぐり、ひっくり返してしまえば形勢逆転。
そうなるとパワーで劣るラーテルは「まな板の上の魚」です。
ラーテルも捕食される動物なんですね。
本気になったライオンやハイエナには勝てません。
ラーテルは猛獣を撃退するだけで、別に勝利しているわけでもない。
ギネスも「怖いもの知らず」としているだけで、「最強」とは言ってない。
「ラーテルがアフリカ最強」は「ラーテルがめんどくせぇ~」から生まれた、ネタ的な話なのです。
ゲームだって最強装備でも負けることあるし。
ラーテルにはパートナーもいる
トッポいラーテルにも仲間はいます。
ラーテルは夫婦仲がよく、ペアで行動することが多い。
チンピラも家では良き夫ってこと。
群れでは行動せず、基本は単独かつがいのペア行動です。
ラーテルの大切な相棒はミツオシエという小鳥です。
ハチの巣がある場所をラーテルに教えるのでミツオシエ。
ラーテルの周りを飛び回り、うるさく鳴いて報告します。
目線の低いラーテルはハチの巣探しが不得手なんです。
ハチミツ好きのラーテルはミツオシエに従ってハチの巣を襲撃。
固い装甲は多分、蜂刺されの対策で備えたんだと思います。
ラーテルは好物のハチミツ、蜂の子をたらふく食い、ミツオシエは蜜蝋のおこぼれにありつくという共生関係です。
不思議な関係ですが、生きる上では仲間も必要ってことですね。
まとめ
アフリカで一番強いといわれるラーテル。
その理由は持ち前の気の強さと、防御力の高さでした。
でも、実際に戦えば大きな肉食獣に分がありそう。
勝気で乗り切れるほど、アフリカは甘くないようです。
かと言って、弱いこともありません。
最強ではないが、天敵も苦しむ厄介な相手です。
「意外な実力者」
「アフリカの伏兵」
って感じでしょうか。
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