長い首に小さな頭、背中にコブのある湖の怪物。
と聞けば、誰でも「ネッシー?」と思うところ。
でも、これは今回紹介する未知生物『ナウエリート』の特徴なんです。
別名は「南米のネッシー」。
大御所の本家ネッシーと比べると知名度が低く、バッタ物みたいな感もする。
しかし、ナウエリートはネッシーよりも前に調査が行われ、目撃者も多い。
アルゼンチンの海軍が確認したという話も。
実在の可能性はネッシー以上といわれています。
本当にいるのか?
考察してみましょう。
ナウエリートの相次ぐ目撃
大自然の残るアルゼンチンのパタゴニア。
チリとの国境をまたぐナウエル・ウアピ湖。
ネス湖の10倍、琵琶湖よりやや小さい、美しい氷河湖です。
この湖で古くから伝承されているのが、怪物ナウエリート。
アルゼンチンではよく知られ、古い1ペソ札にも印刷されていたそう。
ほとんど偉人だね
その記録は1897年に原住民が見たのが始まり。
20世紀から近年にかけて、目撃され続けているのです。
■1910年頃。
会社経営者ジョージ・ギャレットが、100m離れた水面から2mほど出た長い首を目撃。
全体の大きさは5~7m。
学者が「プレシオサウルス説」を発表。
■1922年。
ナウエル・ウアピ湖で怪物の探査を決行。
成果はなし。
■1960年。
アルゼンチン海軍がナウエル・ウアピ湖で未知の生物を追跡した。
■1976年。
1マイル(1.6km)離れた湖畔から、数人が白鳥の首のようなものが水面に出ているのを見た。
全体は5mほどあるように見えたという。
■1986年。
ヘビのような頭で、ヒレのある怪物が目撃される。
この頃から「ナウエリート」という名前がつけられて呼ばれだす。
■1987~1989年には、観光客や森林局のグループなどによる集団的目撃が続発。
大きさは15~20m、泳ぐ速度は時速30kmほど。2つの背中のコブを確認。
目撃は90年代にも毎年あり、93年には初めて映像が撮られる。
2000年代になると、写真撮影され、何度か新聞を騒がせました。
動画でその姿をイメージしておきましょう。
ナウエリートは完全にネッシータイプの湖沼UMAです。
目撃証言をまとめると、大きさは5~40m。
幅が大きいのが気になる。
特徴は長い首、コブ、ヒレ。
これだけだと、
「ネッシーにインスパイアされて生まれた」
という気もしますが、ネッシーが話題になるのは1930年代。
その前に目撃、調査されているナウエリートが先になる。
でも、ちょっと待ってください。
先だから本物とはなりません。
目撃はたしかに多いんですが、怪獣っぽい「何か」を見たって程度ばかり。
「実在する!」と言い切れるほどじゃないんですよね~。
実在を裏づける証拠はない!
「地元住民が言い伝えてきた」
未知生物にはありがちな話。
ネッシーも最古の記録は1500年ほども前になります。
ナウエリートも伝承されている。
ところが、イギリスと南米の文明の差は大きい。
ネッシーの記録は文字で残されているのに、ナウエリートは言い伝え。
その言い伝えにしても、具体的なものではなく、ナウエリートなのか違う生き物なのかはっきりしません。
実は「ナウエリートを書いた古い記録」はないのです。
1910年頃の目撃が、最初の公的記録。
「思ったより古くもない?」
ちょっと怪しくなってきました。
「軍が確認した」は嘘?
ナウエリートの証言で、注目したいのは
「アルゼンチン海軍が追跡した」というところ。
軍なら記録もしっかりしているし、個人の話より信憑性は高いのでは。
誰でもそう思うでしょう。
しかし、これは正確ではないらしいのです。
1960年に海軍の潜水艦が、正体不明の物体を追ったことは記録されています。
ただ、記録では「敵の潜水艦の探査」となっているそう。
なにしろ60年代は資本主義国VS社会主義国の冷戦真っ最中。
水の下は「謎の潜水艦」がスクランブル状態でした。
では、なぜ潜水艦がナウエリートになってしまったのか?
どうやら軍の発表時の冗談。
「ネス湖の怪物が迷い込んできたようだね。HAHAHA」
その22年後にフォークランド諸島を巡ってアルゼンチンとイギリスが戦争することを思えば、意味深な冗談ではあるんですが……。
その話が「ナウエリートを追った」に変わった。
ナウエリートはネッシーの二番煎じ?
目撃証言もいささか頼りない。
たしかにナウエリートはネッシーより先かもしれません。
でも、目撃のほとんどは1970年以降。
じゅうぶん「ネッシーに感化されて」が通用します。
なので、僕はこう考えます。
ナウエル・ウアピ湖には「湖の主」みたいな伝承があった。
この手の伝承は珍しくありません。
1910年頃に「怪物を見た」との目撃。
その後、ネス湖のネッシーが有名になった。
ナウエル・ウアピ湖の怪獣が、ネッシーと同化してゆく。
長い首という共通点もありますしね。
そんな流れで南米版ネッシー・ナウエリートのイメージが固まったと思う。
とはいえ、数々の目撃を頭から否定するわけにもいきません。
ナウエル・ウアピ湖にナウエリートと見間違う「何か」がいる可能性はある。
それは何か?
考えてみましょう。
ナウエリートの正体が見えた!
南米のパタゴニアはダイナミックな土地。
古代の趣が感じられ、未知生物の話も豊富にある。
ナウエリートも水竜、魚竜、水生の絶滅種と思いたい。
しかし、その可能性はかなり低いでしょう。
巨大であることから、新種の生物とも考えにくい。
とすれば、既知生物の見間違いが濃厚です。
既知動物・怪獣波・突然変異……
ナウエリートの特徴「長い首」。
これに合致しそうなのはヘビです。
南米には電柱サイズの大蛇アナコンダもいますしね。
ただ、ヘビは普通は左右に蛇行して泳ぐもの。
背中がコブに見えるような縦の動きはしません。
ナウエリートの動きに近いのは、哺乳類の群れです。
カワウソやシカが、数頭並んで泳いでいるのが、一体の怪物に見えた。
コブは一頭一頭の小さな動物ってこと。
他に水鳥や魚の群れの立てる波ってこともある。
湖のモンスターの正体では、よくある解釈です。
もう一つは、特定の湖で見られる特殊な波。
山に囲まれた湖で見られる、巨大生物の航跡のような波浪ですね。
クッシーのいる北海道屈斜路湖、イッシーの鹿児島県池田湖などで起こります。
ナウエル・ウアピ湖も環境は似ているのです。
さらに、ナウエル・ウアピ湖は湖底から天然ガスが出ている。
湖面の波や気泡が、怪物に見えたとも考えられます。
……つまらない仮説ですね。
「ナウエリートは放射能で巨大化した生物」という説はどうでしょう?
ナウエル・ウアピ湖付近で、核実験が行われていた事実から出た想像です。
ナウエリートは南米版ネッシーではなく、南米版ゴジラかもしれない。
まあ、古い話には通用しません。
1950年代以降ならわかるんですが……。
ちなみに「放射能で生物が巨大化」は
SFの定番ですが、起こりえない現象です。
ただし、突然変異は誘発しやすくなる
傾向は見られます。
ナウエリートはフェイクの多いUMAでもあります。
画像などもほとんど偽物とされていて、曖昧な目撃情報があるだけ。
「実在する」とは言い切れませんね。
まとめ
ナウエリートは掴みどころのないUMAです。
はっきりしているようで、調べてみると具体性がない。
証拠もあるようで、実はちっともない。
姿にしても、ネッシーの影響が強く出ていると思う。
見間違いからできた架空の怪物が有力でしょう。
ちょっと残念。
ナウエル・ウアピ湖は大変美しい湖ですから、爽蒼の湖面が見せる幻にすぎないとしても、それはそれでいいのかもしれません。
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